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震災から十日くらいたって、僕は福島に帰省した。
東北新幹線は全線運休していて、東北自動車道も通行止めになっていた。僕は災害派遣のバスに乗って福島市に帰った。スーツケースにうどんだのパスタだのカップ麺だの詰め込んで。乾物屋の行商かよっていう勢いで(笑)
実家で二週間長編小説を描いた。レインホースシリーズ初の長編小説だった。
僕は震災直後の福島で、自分が物語を描く意味を問いかけた。
もうクライシス系の物語は全滅だろうと思った。
現実は僕の想像力を遙かに凌駕していた。僕の描く暴力は、現実の震災の前にあまりにもちっぽけで無意味なものだった。
それでも僕が長編小説を描いたのは、この時を逃したらもう二度と長編小説を描けないと思ったからだった。看護学校の入学は決まっていた。
よほど強い物語でない限り、もう誰も救われないんじゃないかと思った。
僕がやっていたのはただの現実逃避だった。
僕は長編小説を描きながら、したたかにうちのめされていた。
僕は自分すらも救えなかった。

震災後ようやく営業再開した福島の映画館で『塔の上のラプンツェル』を観た。
涙が止まらなかった。
本当に、奇跡のように美しい映画だった。

ラプンツェルは金色の長い髪をした女の子だった。
その美しい魔法の髪をもっている為に彼女は誘拐され、高い塔の上に17歳まで監禁された。ラプンツェルは盗賊と出会い、塔の外の世界を見に行く決意をする。

正直僕はグリム童話の現代的な解釈だろうと想像し、辟易していた。フェミニズム的な解釈、現代の女の子は強く野心的であらねばならない、というような。でも『塔の上のラプンツェル』はそういうステロタイプな映画ではなかった。

臆病なラプンツェル。
僕はラプンツェルに恋をしてしまった。

臆病で、センシティブな女の子がフライパン片手に大冒険。
まともな批評なんてできないよ。僕はラプンツェルに恋をしてしまった。

『塔の上のラプンツェル』はシネマディクトの僕の「生涯トップ10」にランクインしてしまった。
この世界がどんなに陰惨だとしても。
『And they lived happily ever after』で終わる物語は強い。
そういう強い物語をエンターテインメントとして高いレベルで成立させられるのは、今のところディズニーだけだと思う。

『塔の上のラプンツェル』は僕を救ってくれた。




カテゴリ: [2011年06月] - &trackback() - 2011年06月05日 12:03:47

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最終更新:2011年06月05日 12:37