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彼女の部屋に残っている荷物を引き取りに行った。
雨の夜だった。
何もこんな夜に降らなくてもいいのに、と思った。つくづく僕はくそったれの雨男だ。
彼女がお腹が空いたと言うので、イタリア料理店に行った。そこで僕たちはピッツァをかじり、ビールを飲んだ。僕は風邪をひいていて熱があった。
別れ話をした時は泣いてばかりいたのに、彼女はずっと笑顔だった。
それが僕にはたまらなく嬉しかった。

何冊かの本は古本屋に売った。そして僕は身軽になった。思い出も古本みたく売り払えればいいのに、とちょっとヤケになって思った。

(僕は何も望まなかった。ただ彼女といれればよかった。でももっとたくさんほしがればよかったな。そうすれば彼女と別れた後にだって、何かしら手の中に残ったのに)

別れ際、彼女は小さな声で「またね」と呟いた。
それが僕にはたまらなく嬉しかった。
たまらなく悲しかった。

僕と彼女の恋愛は終わった。
ふたりの関係を思う時、僕は決まってローレンス・ブロックの小説を思い出す。主人公はアルコール依存症の私立探偵、マッド・スカダー。

「彼女が恋しかった。今でも彼女ともう一度やり直そうと思うことが時々あった。しかし、それはもう互いに何度か試みたことだった。そのたびに我々はふたりのあいだがもう終わったことを現実に教えられた。我々自身は、終わったとはどうしても思えないのだが、現実はそんな我々の思いを通り越していたのだ。
 どんな試みも徒労に終わることがようやく私にもわかった頃、私はジム・フェイバーに電話した。そして、『どうにもわからない。どうしても終わってしまったとは思えないのに、いざ会うとうまくいかないんだ』と泣きごとを言った。
すると彼はその時こんなことを言った。『いや、あんたたちの関係は終わったんじゃないんだよ。いろいろあってやっと今の関係にたどり着いたのさ』」

(ローレンス・ブロック『墓場への切符』P226)

「あんたたたちの関係は終わったんじゃないんだよ。いろいろあってやっと今の関係にたどり着いたのさ」

この言葉にどれだけ救われたかわからない。
失ってしまうわけじゃない。二度と口をきかない他人になるわけじゃない。
恋愛関係が終わったとしても、ある種の愛情や尊敬は消えることはない。
僕はそう信じてる。



あなたと過ごした七年間は僕にとってかけがえのないものでした。
あなたにとってもそうでありますように。



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最終更新:2011年08月05日 20:50