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その女の子はいつも独りだった。
学生ホールの一番奥のテーブル。そこが彼女の指定席だった。彼女はいつも独りで黙々と勉強していた。周りがどんなに騒々しくても(看護学校は毎日がお祭りみたいな騒ぎだ)彼女は気にしてはいないようだった。超然として見えた。
その公園は看護学生の中で数少ない喫煙者の唯一の喫煙所となっていた。
彼女はいつもそこでお弁当を食べていた。たったひとりで。
なんというか、その女の子は、ひとりぼっちでいるのが、とても絵になった。ひとりでいることが、彼女にとってふさわしいことのようにすら思えた。
彼女と話すようになった。話題はきまって看護の話だ。
(なんだって看護学生は看護の話ばかりするんだろう? この世界にはもっと素晴らしいことがいくらだってあるのに。ホラー映画とか。サッカーとか。パンクロックとか)。
何度か話しても僕らは打ち解けるということがなかった。
「いっつもあそこで勉強してんね」僕は言った。
「ヌシですから」彼女は言った。
彼女は意図的にひとと距離をとってるように見えたし、僕自身も問題を抱えていた。
ただ時々見せる子どもっぽいしぐさや表情に、思わず目を細めてしまうことがあった。
肩を並べて歩いた時、彼女がとても小さいことに気づいた。
「いつもは盛ってるんです!」と彼女は言った。
僕の方が15センチくらい背が高かったので、彼女は自然と上目遣いになった。
僕はその女の子に好意を抱いていた。
好意。
恋じゃない(恋じゃないと思う)。
軍隊みたいな看護学校で初めて本当の友達にめぐりあえた。そんなカンジ。
ひとりぼっちとひとりぼっち。
あの銀河鉄道の夜に、同じ窓から景色を眺めていた、ジョバンニとカムパネルラみたいに。
でもその女の子は本当はひとりぼっちじゃなくて友達がたくさんいた。友達の輪の中にいる彼女を見て、僕はほっと息を吐いた。そして凄く寂しい気持ちになったんだ。
僕は彼女に僕の孤独を重ねていただけ。
彼女が何を想っていたのかはわからない。
でも僕は彼女に会えてとても嬉しかった。
穏やかな表情。はにかんで笑う。子どもっぽいしぐさ。
水の底から太陽を見上げているかのよう。
あなたを想うと心が明るんでいく。
今恋なんてしたら潰れてしまうのはわかってる。
それでもこんな孤独な夜にはあなたを想う。
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2012年07月] - &trackback() - 2012年07月06日 23:10:37
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最終更新:2012年07月14日 21:58