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三角形の小さな公園。
放課後。
ひとりぼっちで煙草を吸う。
思い出すのはあのこのことばかり。
あのこは煙草を吸っていた。
あのこはいつもひとりだったし、僕もいつもひとりだった。
僕たちはよくこの公園で会った。おしゃべりしながら煙草を吸った。
実習の帰り道。
落ち込んだ夕暮れ。
薄暗がりの中でも僕にはあのこの姿が見えた。
あのこを見つけると爪先まで電流が走ったんだ。
恋をすると、ひとは、本当に電気が流れるんだ。
彼女はとても小さくて、丸顔で、とても、とても愛らしかった。
「グレープフルーツみたいだよね」って言ったら。
「丸いってことですか?」って肩グーパンされた。
全然痛くないパンチに僕の心臓は完璧に痺れてしまった。
舞い上がる心。
果たされない想い。
伝えられなかった。何度も伝えようとしたけれど。
まぶしかった。
水の底から水面を見上げているみたいだった。
視界をよぎる小さな魚影。
今はもう。滲む太陽があるだけ。
水面が揺らぐ。

あのこの笑い方が好きだった。
嬉しい気持ちをぎゅっと凝縮したような笑顔。
柑橘の果汁がじゅって散るみたいな。あのこの笑い方が好きだった。
もう一度会いたいな。
もう一度グーパンされたいよ。
国試が終わったら会おうねって約束をした。
けれど僕たちは多分、会わないだろうと思う。
それでも。それでも僕は。何度も忘れようとしたのに。僕は。

あのこの笑い方が好きだった。
嬉しい気持ちをぎゅっと凝縮したような笑顔。
それは何かとても善いもの。
世界中の善なるものを集約してみせるもの。

グレープフルーツの思い出。
胸をぎゅっと締めつけるもの。それは。
それは僕にとって、最後の恋だったのかもしれません。


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最終更新:2014年01月28日 21:26