【《議論ゲーム》のルール】
1. 〈先攻〉が(YES/NO で答えられる)議題を示す。
2. 〈後攻〉が議題に対して YES か NO の立場を選ぶ。
3. 〈先攻〉が残った立場を選ぶ。(〈先攻〉が YES なら NO。〈先攻〉が NO なら YES)
※このルールによって、説得力に偏りがある議題を示すと、不利な立場を選ばされる。
避けるためには、なるべく YES と NO が公平な議題を示した方が良い。(Cut-and-Choose Protoclol)
4. 両者、それぞれの立場から丸1日間相手を説得(相手と議論)する。
5. レス(発言)出来る回数は、5 回までとする。
※このルールによって、発言数による説得力が減る。
物量作戦は通じなくなる。
6. その後、〈評者〉が、正しいと感じた立場に票を投じる。
7. 得票数が大きかった立場を取っていた者を勝者とする。
【例(Prelude)】
〈司会〉「先にエントリーした〈先攻〉さんは、議題を示して下さい。
議題は、とっつきやすいものにしてください。固有名詞や専門用語をなるべく避けて下さい。
それから、『地球外生命体は存在するか?』『原発は再稼働すべきか?』のように、
YES か NO で答えられるものにして下さい。
ただし、あなたが YES の立場で議論するか、NO の立場で議論するかは、相手が決めます。
だから、なるべく YES でも NO でも説得しやすい議題が好ましいです。」
〈先攻〉「分かりました。議題は『1 = 1 である。YES か NO か?』です。」
〈後攻〉「ふむ。」
〈司会〉「確かにそれは YES か NO で答えられる議題です。
しかし、YES の方が NO よりもはるかに説得しやすい議題のようです。
そう考えた上でその議題を選びますか?」
〈先攻〉「いかにもそうです。そういう作戦です。」
〈司会〉「承認します。議題は『1 = 1 である。YES か NO か?』です。
〈後攻〉さんはこれに対して YES を取るか、NO を取るか、決めて下さい。」
〈後攻〉「もちろん、YES を取ります。」
〈司会〉「承認します。自動的に〈先攻〉さんは NO を取ることになります。
2月18日 (火) 00:00から開始です。終了は2月19日00:00。
発言回数は 5 回まで。5 回を超えると無条件で敗北になります。ご注意下さい。」
【例(Interlude)】
〈後攻〉「1 = 1。これは正しい。
何故なら例えば 1 = 0 と仮定すると、1 + 1 = 0 + 0 = 0 となる。
しかし 1 + 1 = 2 であり、 2 ≠ 0 だから、これは矛盾する。
よって 1 = 0 は誤りだ。背理法より、1 = 1。
とても簡単な証明だ。」(12:46、1)
〈後攻〉「たぶん〈先攻〉はこんなことを言うだろう。
x = x と仮定する。
すると x^2 = x^2 だ。
右辺を左辺に移行して x^2 - x^2 = 0
左辺を因数分解して (x + x)(x - x) = 0
両辺を (x - x) で割って x + x = 0
両辺を x で割って 1 + 1 = 0
よって 2 = 0
これは誤りだから、背理法より、x = x は誤り。
x = 1 の時も当然誤りだ。
こんなことを言う筈だ。
確かにこの 2 = 0 という帰結は誤りだ。
しかし、帰結が誤っているのは、仮定が誤っているからではなく、推論が誤っているからだ。
両辺を (x - x) で割る部分、(x - x) は 0 だから、ゼロ除算になっている。」(13:28、2)
〈先攻〉「あなたは間違いを犯した。あなたの発言 1 の証明は、背理法になっていない。
仮に万が一 1 = 0 が誤りだとしても、1 = 2 や、1 = 3 の可能性が残っている。
1 = 0 が 1 = 1 の排反事象でないから、背理法は成り立たない。」(15:01、1)
【例(Interlude)】
〈後攻〉「それは詭弁だ。
0 は 1 ではない数の単なる代表だ。
0 が 1 でない限り、2 でも 3 でも、証明は成り立つ。」(15:08、3)
〈先攻〉「果たしてそうだろうか。
では先のあなたの証明で 0 = not(1) と置き変えてみよう。
not(x) は x でない任意の複素数を表す。
1 = not(1) と仮定すると、1 + 1 = not(1) + not(1) = not(1)
not(1) には 2 も含まれるから、これは 1 + 1 = 2 とは必ずしも矛盾しない。
背理法は成り立たない。」(15:21、2)
〈先攻〉「そしてもう一つ、あなたの証明には根本的な間違いがある。
1 + 1 = 2 や 2 ≠ 0 は 1 = 0 と同じ仮定に立っていない。
同じ仮定から出発して、相反する結論を導かなければ、背理法は使えない。
むしろ 1 = 0 を仮定するなら、2 = 0 であるはずだ。
なぜなら 0 = 0 + 0 = 1 + 1 = 2 だから。」(16:18、3)
〈後攻〉「そこまで詭弁を弄するか。
あなたの指摘の誤りを指摘することはできるが、どうも無駄のようだ。
仮に、私の証明が間違っていようと、1 = 1 が誤っていることは証明できないぞ。
いくら間違いを指摘しようが、あなたは 1 = 1 ではないことを証明できるわけではない。
アプローチを変えよう。1 = 1 ではないような世界にどんな意味があるだろうか?
1 = 1 でなければ、数を数えることもままならないだろう。
さっきまでひとつだったりんごが、いつの間にか増えたり消えたりするだろう。
これでは世界が混乱してしまうではないか。」(17:37、4)
【例(Interlude)】
〈先攻〉「さっきまでひとつだったりんごが、いつの間にか増えたり消えたりする。
これはあながち間違っていないことだ。あなたは経験がないか?
誰かが勝手に食べたとか、誰かが親切でりんごを置いてくれたとか、
新たなりんごが実った、あるいは自分の数え間違い、発注間違い、
特定できないほど雑駁な理由で、りんごが増えたり消えたりすることがある。
だけども、この世に住まうひとは、りんごがひとつ増えたり消えたりしたくらいでは混乱しない。
しばしばそういうことがあるから、いちいち気にしている方がそれこそ混乱してしまうからだ。」(20:43、4)
〈先攻〉「色即是空、空即是色という言葉がある。
この世に見えているのは、まやかしの*色*に過ぎず、その実態は*空っぽ*であるという意味だ。
これを数式に直すと 1 = 0, 0 = 1 と表せるだろう。
この数式はひとつの真理を表してはいないか? あなたはこれでも 1 = 1 は絶対だと言えるだろうか。」(21:09、5)
〈後攻〉「りんごが増えたとか、消えたとか言いうるのは、りんごが『そのまま』だったと言える状態があるからだ。
だから、たとえりんごの消息を気にしない人であろうと、その根底には 1 = 1 という数式を携えている。
結局は 1 = 1 を否定できない。
あなたの主張をよく聞くと、1 = 1 も 1 = 0 も同時に成り立ちうる、と言っているようだ。
しかし、それはこのゲームのルールに反している。
1 = 1 が YES か NO かでしかないから、このゲームが成立しているのだ。
このゲームのルールにより、あなたの主張は誤っている。」(21:30、5)
【例(Epilogue)】
〈司会〉「時間です。両者とも発言数 5 を使いきりました。
〈評者〉は YES または NO の正しいと思う方に投票して下さい。
議題は『1 = 1 である。YES か NO か?』です。」
〈評者〉「内容を見なくてもどちらが正しいかなんて決まっている。
YES に投票だ。」
〈評者〉「〈先攻〉は終始ポジティブに証明しようとしていて、
後手に回る〈後攻〉より好感が持てたわ。」
YES に投票よ。」
〈評者〉「どちらが正しいかと言われると困るね。
どちらが説得力があったか、どちらを面白いと思ったか、
とは違って、自分の主義主張まで入ってくるから。
YES に投票だ。」
〈評者〉「〈後攻〉はイケメンだから応援するわ。
NO に投票よ。」
〈評者〉「あえて不利な立場を選んで、常識に疑いを挟んだ〈後攻〉は素晴らしいわ。
NO に投票よ。」
〈評者〉「酷い議論で、見ていられなかった。
私なら、どちらの立場でももっと本質的な議論が出来るだろう。
その中でも〈後攻〉はひどい詭弁ばかりだ。〈先攻〉のほうが幾分マシだ。
YES に投票だ。」
〈司会〉「投票を締めます。YES が 4 票、NO が 2 票。YES の仮説を選んだ〈先攻〉の勝利です。」
最終更新:2015年05月09日 14:42