- サブタイトル:軟体動物のふしぎな生態
- 著者:奥谷喬司
- 写真:楚山勇
- 発行所:晶文社
感想(2011/06/5)
軟体動物や棘皮動物のあのとぼけたような生き方にあこがれます。
ナマコなんて海底の砂の含まれている有機質を食べるだけで生きていけて、古い時期からたくさん居るから全ての海底の砂は一度はナマコの消化器官を通っているとか聞くとわくわくします。
昆虫もそうなのですが、行動パターンがコンピューターのプログラムに似ているのが興味を惹かれる原因なのだと思います。
タコやイカなんて、貝の仲間なのに立派な目を備えていたり心臓を複数もっていてアクティブに行動したりほとんどチートレベルなのにもかかわらず知能はほとんど進化していないという。
タイトルを見た段階ではタコの生態や生殖に関しての記述が多いのかと思いきや、軟体類一般の紹介があり著者の愛が良くわかります。
技術的なことや学問的なことを、一般の人に解りやすく伝える事は、その分野の一般化に大きな力が有るのはカール・セーガンやアシモフなどを見ると明らかです。
特に日本人はタコやイカを食料以上に愛していて、それに独自のキャラクターを付している。
分かり易く一般人に知らせる事によって、物事が起こったときに理性的な対応をする手助けになるだろう。
軟体類は日本人にとって親しみのある食料だけれど、食の欧米化によって忘れられていく部分。
若い人たちが触れなくなっている部分なので、是非軟体類に対する一般的な理解が広まって欲しい。
古い本なのですが、当時の最新の研究結果をほぼリアルタイムに提供しているので、古さをほとんど感じない。
食卓にのぼらない貝についても色々紹介があり、水族館や護岸壁、磯など軟体類を目にする機会があればこの本の記述を思い出すでしょう。
この本は、もう10回程度読み返していて、私の好きな本の一冊です。
最終更新:2011年06月05日 12:57