だいぶ古い情報になっておりますが、問い合わせの多い項目ですので、
以前、私が講演したもののメモをここに残しておきます。
亀田家庭医らしい これからの健康情報の発信
~健康情報のreliabilityとaccessibility~
特別講演 2006年4月23日
亀田メディカルセンター 家庭医診療科 阪本直人
-------------------
!情報の信頼性とは?
我々家庭医医師は,医学情報の信頼性を判断するためにどのような方法を用いて行ってきたでしょうか?
一般の人は,どのようにして健康情報の信頼性を判断すればいいのでしょうか?
-------------------
!はじめに
家庭医は,診療中やコミュニティーの患者教育の場面などで様々な健康情報を提供する科でもある.
特に亀田家庭医は,日頃より多様な対象者へ信頼性の高い健康情報の発信を心がけ活動している.
たとえば,外来での患者様への指導・説明,市民を対象とした講演,患者様説明パンフレット作成,
そして将来的にはwikiプロジェクトなども含まれる可能性もある.
今まで,講演スライドやパンフレット作製時にも我々家庭医は,易しい表現や教育漢字(文部科学省が定める小学6年生までにで習う漢字)を用いるなどの配慮をしてきた.
今回の講演でいくつかのガイドラインを紹介します.
健康情報の信頼性・客観性を高め,アクセシビリティーを向上させるための一つの提案です.
そこで,さまざまなガイドラインや指針を参考に,そこから,これまで家庭医が情報提供を目的として作成する際に参考となる部分を抽出し,解説します.
!今回ディスカッションする問題の対象者は主に以下の人を想定しています
いわゆる一般市民.下記の状況の人々も含まれる.
心身上の障害を持つ人々:
視覚,運動,聴覚,言語,学習および加齢に伴う障害など
ただし,下記の状況における情報提供の問題については,今回深く追求しないこととする
-情報を利用する環境,機器の問題:
遅い通信速度や,時に携帯電話からのアクセスなどの小さな画面や
ブラウザの種類やバージョンによる障害
-貧困,教育レベルの問題により,そもそも健康情報にたどり着けない人々
-多数の言語へ情報を変換した後の信頼性の保証の問題
-言葉自体がまだ理解できない乳幼児.
!今回の学習目標
情報発信におけるreliabilityを保証する方法について理解し,実践できる.
これがmainです.
情報へのアクセシビリティを向上させる手段は,少しの気配りで実現可能あることを知り,実践できる.
さらに,
上記の事柄を亀田ファミリークリニック館山で実践するにはどのようにすべきかを提案し,今後皆で考えるきっかけにする.
!reliabilityとaccessibility
~より医学的な信頼性が保証され,アクセシビリティが高い情報発信とは~
医学情報提供において,ある一定の信頼性を保証するための
ガイドラインの利用
情報源のアクセシビリティを高めるガイドラインの利用
まずは,
医学情報において,ある一定の信頼性を保証するためのガイドライン
様々な団体からガイドラインが出されているが,しかし基本的にコンセプトはいずれも同様である
!医学情報において,ある一定の信頼性を保証するためのガイドライン
Health On the Net(HON) Foundationガイドライン
JIMA(Japan Internet Medical Association)ガイドライン
AMA(American Medical Association)ガイドライン
!Health On the Net (HON) Foundation
医療情報をインターネット上で提供する最も信頼される非営利団体の1つ
1995年9月7日より設立,委員会には11カ国から参加者によって構成され,
その中には,医師,教授,研究者をはじめ
WHOの関係者,ITU国際電気通信連合会,CERN(欧州合同原子核研究機関)
EC委員会,国立医療図書館,G7グローバルヘルスケアアプリケーション計画のメンバーなどが含まれている.
1996年3月からインターネット上での活動を開始
スイス基金,ジュネーブ事業団体からの人材などからのサポートも受けている
活動内容:
ガイドライン「HON code」の策定
審査認証事業,HON code承認検索ツールの開発
!JIMA(Japan Internet Medical Association)ガイドライン
特定非営利活動法人日本インタ-ネット医療協議会
医療系Webサイトの質と信頼性を高める指針 について述べられている
医師、患者、市民、弁護士が参加する任意団体として1998年6月27日に活動を開始,東京都より認証を取得、2003年6月16日をもって正式に本法人が設立
設立者,役員(理事)に亀田総合病院理事長 亀田俊忠も参加されていらっしゃる.
● 医療情報の発信提供者には,
情報発信者ガイドライン:「インターネット医療(eヘルス)」に関する
ガイドラインの策定,調査研究
利用者の信頼性を得るための,Webサイトの審査認証事業 など
● 利用者向けには,
「医療情報利用の手引き」を作成
一般の人がインターネット上の情報を利用する際の注意点をまとめ啓発
! AMA(American Medical Association)ガイドライン
Guidelines for Medical and Health Information Sites on the Internet
Principles Governing AMA Web Sites
AMA(American Medical
Association)は、1999年9月にJAMAの全文記事がオンラインで検索できるサービスの提供をはじめたが,そこにも同様のガイドラインが示されている.
!では,HON codeのガイドラインをみてみましょう.
1.Authority(信憑性)
サイトの情報は、医学的な教育を受け,資格を持つものが提示している
こと.
または,少なくとも専門家のアドバイスを受けたうえで提示している
こと明確に示す.
2.Complementarity(補完性)
サイトの情報は、その人と主治医の関係をサポートする目的で提供
されており,これに置き換わるものではないこと.
3.Confidentiality(匿名性)
個別の患者やサイトの訪問者の個人情報の守秘義務が尊重されている.
そのサイトが置かれているサーバーの存在する国の個人の健康情報に
関する法的基準を遵守していること.
4.Attribution(出典)
サイトに含まれる情報は,明確な情報源がが示され,web情報であれば
可能な限りリンクが貼られていること.
最終の更新された日時が明記されていること.
HON codeのガイドラインつづき
5.Justifiability(妥当性)
特定の治療,商品,サービスの利点/性能に関する意見,それに対する質問は,
上記の第4項に示された方法により,適切な偏りのない証拠で述べる,または回答
すること.
6.Transparency of authorship(著者についての透明性)
サイトの監修者はできるだけ明確な方法で情報を提供し,追加情報やサポートを
要求する訪問者のために作成責任者の連絡先を提示すること.
サイトの作成者(Webmaster)はサイトのどこからでもわかるように,すべての
ページに電子メールアドレスを表示すること.
7.Transparency of sponsorship(スポンサーについての透明性)
サイトへのサポートがある場合は明示すること.(民間企業,非営利団体などに
よる金銭的サポート,サービスの提供,情報の提供など)
8.Honesty in advertising & editorial policy
(広告と編集方針についての公正性)
広告が資金源の場合は明記すること.サイトの監修者は広告についての方針を
そのホームページに明記すること.
広告やプロモーション情報は,そのサイトオリジナルの情報との区別が明確に
できる方法で表示されること.
!では,先程のホームページに戻って
! 「なんかあやしい感じがするけどねー」
その理由をHON codeのルールに基づいて説明してみましょう!
1.Authority(信憑性):不明.医学的な教育を受けたもの,または専門家による
アドバイスの有無について明記されていない.
4.Attribution(出典):不明.明確な情報源や科学的データの記載なく不明,記載された
日時の記載はないか,更新された日時についての記載はある.
5.Justifiability(妥当性):特定の治療,商品,サービスの利益や効果を主張する記載
が明確な出展や科学的根拠を用いて,適切かつバランスのとれた根拠によって支持
されていない.
6.Transparency of authorship(著者についての透明性):不完全.電話番号と電子
メールアドレスの記載はあるが,どのような団体なのか,または資格の有無などに
ついて記載はなく著者の透明性は保証されていない.
7.Transparency of sponsorship(スポンサーについての透明性):ホームページの
トップに広告欄が表示されるが,サイトのサポート状況について記載がなく不明.
8.Honesty in advertising & editorial policy(広告と編集方針についての公正性):
広告が資金源なのか明確に開示されていない.サイト監修者の広告についての方針が
表示されていない.広告や商品の宣伝の表示が,そのサイトオリジナルの情報との
区別が明確にできる方法で表示されていない.
!これをホームページを
見る人がやるの?
ウェブサイト作成者は前述のガイドラインに従うことを心がける必要があります.
実際に利用する一般の人もこのようにすれば,
情報の信頼性の吟味が可能ではあります.
しかし,見る人すべてがホームページを毎回
上記のように吟味していたのでは実用的ではありません.
そこで,それぞれの団体が認定マークを
作っています.
審査,認定制度
コンテンツの製作、監修方法,プライバシーポリシー(個人情報の取扱い方針)掲示の有無,
外部営利サイトへのリンク,営利的サービスの有無,スポンサーシップ(金銭的対価又は便益の供与)の有無と明示の有無などを審査.
!ここで注意
情報の質を保証することが目的ではない.
一定の規則に従っていることを承認するシステムである.
最終的には,主治医との相談や自己判断
が必要であり,規則は情報源やデータの使用目的の確認をサポートするものである.
!ここまでは,
医学情報提供において,ある一定の信頼性を保証するためのガイドライン
情報源のアクセシビリティを高めるガイドラインの利用
のうち,上記“信頼性を保証するための
ガイドライン”について述べました.
!ここからは,
情報源のアクセシビリティを高める
ガイドラインの利用について述べます
!情報源のアクセシビリティを高めるガイドラインの利用
これまでの話で,信頼できる情報の入手方法や評価方法が分かりました.
その情報が,加齢にともなう問題やその他の障害者は,情報をうまく利用できない状況にいることがあります.
そのバリアを超えるための1つの手段としてWebコンテンツアクセシビリティガイドラインなどが作成されています.
!アクセシビリティーとは
アクセスの提供.
バリアを取り除き,製品やサービスを誰に対しても提供可能で,誰からも使いやすくすること.
さまざまな環境においてより多くのアクセシビリティがあれば,障害の有無を問わずすべての人々がその恩恵にあずかれ,さらに操作や機能がより簡単で安全になれば,すべての人々がその環境を享受できる.
!情報のアクセシビリティとは
例えば、弱視や老眼の人にとってはフォントサイズや
配色は容易にカスタマイズできる方が分かりやすく,
利用しやすい.
視覚障害者は読み上げソフト(点字)を使うので、それに適したレイアウトや記述方法が求められる。
要は,情報は印刷物よりデジタルコンテンツの方が,
文字を大きくしたり,読み上げたり,点字表示デバイスに
出力して,様々に利用できる可能性を持っているのです!
!障害者数の参考
全国で視覚、聴覚、言語、肢体不自由、内部障害と認定を受けている数は,320万人
そのうち視覚・聴覚障害を合わせると64万人
千葉県:
障害者認定数:14万人(H17年3月現在)
視覚障害者認定数は1万人。視覚・聴覚を合わせると2万人。
千葉県人口の2.4%が何らかの障害を持っている.(千葉県人口:600万人)
H13年のデータ
!アクセシビリティを推進する法規
障害を持つアメリカ人(ADA)法:
1990年に署名されたADAは障害に基づく差別を禁じている.この法律は,「雇用」,「州及び地方政府の交通」,「公共施設,及びサービス」,「電気通信」,「その他」の5つの条項に分類されている.
電気通信法第255条:
1996年,成立
電気通信施設および顧客宅内の機器は可能な限り障害のある人にもアクセスおよび使用できるようにデザイン,開発及び製造されなければならないと定められている.
日本でも電子情報技術ならびにウェブサイトのアクセシブルデザインに関する法律および指針を最近採用過程にある.
!アクセシビリティーと
ユニバーサルデザイン
似た言葉にユニバーサルデザイン(以下UD)がある.
UDは,前述の製品,サービスのみならず,施設,社会システムにも及んだ概念ですが,みんなに使いやすいようにというコンセプトは同じ.
平易な表現をすると,IT分野では,アクセシビリティーと表現することが多い.
!Webコンテンツ
アクセシビリティガイドライン
『Web Content Accessibility Guidelines 1.0(Webコンテンツ・アクセシビリティ指針1.0)』は、
Webアクセシビリティ・イニシアチブ(WAI)が発行するアクセシビリティ指針シリーズの1つで,1999年5月より開始.
ウェブページを作成する際に配慮すべき事柄について詳細に述べられていますが,その中から我々家庭医が情報を発信する際に関連性の高い項目、かつweb,またはweb以外でも使用可能な項目を中心に,紹介します.
!Webコンテンツのアクセシビリティ指針
1. 聴覚的および視覚的コンテンツに等価代替物を提供する
2. 色だけに頼らない
3. マークアップとスタイルシートを適切に使用する
4. 自然言語の使用を明確にする
5. スムーズに変換されるようなテーブルを作成する
6. 新しい技術を使用したページのスムーズな変換を保証する
7. 時間に敏感なコンテンツ変更のユーザー制御を保証する
8. 埋込みユーザー・インターフェースへの直接的なアクセシビリティを保証する
9. デバイスに依存しない設計
10. 暫定的ソリューションを使用する
11. W3Cの技術と指針を使用する
12. コンテンツとオリエンテーションに関する情報を提供する
13. わかりやすいナビゲーション機構を提供する
14. わかりやすく、シンプルな文書を保証する
!我々家庭医が情報を発信する際に
関連性の高い項目
1. 聴覚的および視覚的コンテンツに等価代替物を提供する
2. 色だけに頼らない
12. コンテンツとオリエンテーションに関する情報を提供する
13. わかりやすいナビゲーション機構を提供する
14. わかりやすく、シンプルな文書を保証する
!我々家庭医が情報を発信する際に関連性の高い項目
1. 聴覚的および視覚的コンテンツに等価代替物を提供する
グラフと図の内容を要約して表示するか、説明文にリンク
するようにする。
2. 色だけに頼らない
色付きで伝えられる全ての情報は、色なしでも伝えられるように
する。
12. コンテンツとオリエンテーションに関する情報を提供する
要素をグループ化し、要素間の関係に関するコンテキスト情報を提供する
ことは、おそらくすべてのユーザーとって便利。ページの各部の関係
が複雑だと、認知的障害を持つ人々および視覚的障害を持つ人々に
とって解釈が難しくなる場合がある。
13. わかりやすいナビゲーション機構を提供する
ナビゲーション・バー、サイトマップ を用い見ているページの位置
関係が分かるようにする.
14. わかりやすく、シンプルな文書を保証する
!問題提起
情報源のReliability:
日本にはまだ認定制度が浸透していない.
一定の基準はあるが,認定マークがあるから,その情報は
鵜呑みにしてよいということではない.
情報源へのAccessibility:
様々な支援技術があるが,認知度の問題でまだ一般に広く
浸透するところまでには至っていない.
Web,またはその他のメディアから健康情報を得ることに
興味のないグループ.
貧困,教育レベルの問題により,そもそも健康情報に
たどり着けない人々へのaccessibilityの問題などは
完全には解決されていない.
!阪本の提案
今までの説明の様に,少し気をつけることで
ReliabilityとAccessibilityの両方を高めることは
可能と考えます.
今後,亀田ファミリークリニック館山での
情報提供の際にこれを少しずつ取り入れてゆき,
亀田家庭医らしい信頼され,愛される情報発信
施設にしたい.
!最後に
情報発信におけるreliabilityを保証する方法について理解し,実践できる.
情報へのアクセシビリティを向上させる手段は,
少しの配慮で実現可能であることを知り,実践できる..
さらに,
上記の事柄を亀田ファミリークリニック館山で実践するにはどのようにすべきかを提案し,今後皆で考えるきっかけにした.
!皆様,本日は誠に
ありがとうございました
!参考文献,サイト
特定非営利活動法人日本インタ-ネット医療協議会 (英文名 Japan Internet Medical Association: 略称 JIMA)
<http://www.jima.or.jp/jimalink.html>
Health On the Net (HON) Foundation <http://www.hon.ch/>
Kameda Family Medicine Practice
Memo <http://mywiki.jp/familydoc/Kameda+Family+Medicine+Practice+Memo/HON+code/>
タイトル,翻訳の一部は,Kameda Family Medicine Practice Memo 岡田先生記載を参考にした
AMAガイドライン Guidelines for Medical and Health Information Sites on the Internet
Principles Governing AMA Web Sites
Margaret A. Winker, MD; Annette Flanagin, RN, MA; Bonnie Chi-Lum, MD, MPH; John
White, MS; Karen Andrews; Robert L. Kennett; Catherine D. DeAngelis, MD, MPH;
Robert A. Musacchio, PhD JAMA. 2000;283:1600-1606.
アメリカ医師会AMA http://www.ama-assn.org
Web Content Accessibility Guidelines 1.0 W3C Recommendation 5-May-1999
<http://www.w3.org/TR/1999/WAI-WEBCONTENT-19990505/>
『日本ユニバーサルデザイン研究機構』
内閣府承認 NPO法人<http://www.npo-uniken.org/jigyo/index.html>
ユニバーサルデザイン・コンソーシアム http://www.universal-design.co.jp/
身体障害児・者実態調査結果(平成13年6月1日調査)平成14年8月厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
<http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/08/h0808-2.html>
平成13年10月1日現在推計人口総務省統計局
<http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2001np/index.htm>
アクセシブルテクノロジ ITと障害者が変えるビジネスシーン 日経BPソフトプレス
!参考(発表には用いられなかった資料)
!障害の医療モデル
障害の医療モデルとして、次の3つがある。
①Impairment(機能障害)、②Disability(能力障害)、③Handicap(社会的不利)
*Impairment(機能障害):
後天的傷病・先天的異常により身体機能が損なわれている状態。失明、失語などのほか、腎不全、不整脈など内臓機能障害も含まれる。
*Disability(能力障害):
Impairment(機能障害)の結果として失われている能力。具体例として、
コミュニケーション障害、認知障害など。
*Handicap(社会的不利):
社会との関係で被っている損害。具体例として、就業困難、要介護など
リンク:アクセシブルテクノロジ