支援技術:視覚情報を額の感覚へ変換-FRS(額網膜システム)、オーデコ

 

 

 

 

 

ユニバーサロンリポート

www.mainichi.co.jp/universalon/report/2006/0205.html

 

視覚情報を額でキャッチ--アイプラスプラスの額網膜システム

 

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東京大学本郷キャンパス産学連携プラザ内でFRSを体験

 

福祉機器開発を手がけるアイプラスプラス(菅野米蔵社長)は、カメラが捉えた映像を電気刺激に変換して額に伝える視覚障害者用感覚代行機「FRS(額網膜システム)」を開発、来年夏の製品化を目指している。

同システムは、サングラスの中央に埋め込まれたCMOSカメラが前方の障害物などをキャッチし、額に装着したバンドの内側にある512個のピン(電極)が振動して(注)映 像の輪郭を皮膚に伝えるというもの。今の試作機ではパソコンを使って映像を電気刺激に変換する形だが、製品段階ではタバコの箱程度の処理装置をポケットな どに入れて利用できるようになるという。東京大学本郷キャンパス産学連携プラザ内にある同社で、FRSを体験させていただいた。

FRSは、米国テレセンサリー社が開発し、キヤノンが輸入していた触覚ディスプレイ「オプタコン」(現在生産中止)をモデルにしている。オプタコンではカメラを動かしながら写した活字(墨字)を電気刺激として指に伝えるが、ピンが振動するディスプレイを額に当てる形にしたのがFRSだ。

電気刺激の強さは手元のつまみで変えられる。強すぎるとひりひりするような痛みを感じるが、感電する心配はないという。

ホワイトボードに貼り付けられた図形の認識に挑戦した。縦と横の直線はすぐにわかるが、10字や三角など複雑な図形は難しい。

訓練すれば簡単な図形や文字は認識できるようになります」と菅野社長は話す。

目の前を人が横切ると、多くのピンが振動するので何かが動いているのがわかる。だが、かざした手の指の数まではわからない。ちなみにFRSの有効距離は3メートル程度。

ユーザーテストに参加した全盲女性は「駅のトイレの性別マークが識別できたら」と感想を漏らした。

障害物の有無はもちろん、標識や看板の文字まで認識できれば、ユビキタス時代にふさわしい視覚障害者用移動支援システムになるだろう。ただし、安全性の確保のためには、製品化までに十分なユーザーテストが求められる。

価格は50万円の見込みだが、国の助成が得られれば20万円程度に抑えられるという。米国への輸出も計画している。

 

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菅野社長

伴走者がいなくても、視覚障害者がマラソンに参加できるような支援技術にしたい」と菅野社長は意気込んでいる。

 

(注)

オプタコンはピンが電磁石の働きにより物理的に振動する。この物理的な振動が「ブーン」 という蜂の羽音のような音を発生させる。一方、FRSで採用している電気刺激は個々の電極と呼ばれるピンの間でプラスとマイナスの電気が通じ合うことによ り、皮膚触覚を直接刺激する。つまり、非常に微弱な電流によって皮膚の中にある触覚受容体に感電作用を生じさせる。したがって、厳密には電極そのものが物 理的に動くのではなく、振動を感じる皮膚の受容体を刺激することで、あたかもオプタコンのピンが振動しているのと同じように、細かなビリビリ、ブルブルと いった感覚が生じる。

 

【2006年2月22日 岩下恭士】

 


株式会社アイプラスプラス~視覚障害者用生活支援システム~

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FSRS創 業者菅野米藏は1998年当初から視覚障害者の額を利用することに着目し研究を続け、2003年10月に網膜の代替手段として額を利用する手法にて特許を 取得しました。また、東京大学大学院情報理工学教授舘暲博士と彼の研究室は1970年代より電気刺激による触覚センサを研究・開発し、電気刺激による触覚 提示に関する数々の特許を取得しています。 2003年9月、舘研究室の梶本裕之博士(2006年9月に電気通信大学電気通信学部准教授に就任)が開発した「SmartTouch」の技術を基に菅野 と東京大学舘研究室は共同研究を開始しました。そしてより効果的かつ快適な電気刺激の生成を追及しながら、電気刺激による触覚提示装置の試作品をいくつか 開発し、遂に2005年9月、額触覚に電気刺激で提示する実用化モデルとして『額網膜システム:Forehead Retina System(FRS)』を開発しました。米国ではFRSを米国FDAの指導により『額感覚認識システム:Forehead Sensory Recognition System (FSRS)』と名称を変更しました。今般商品化を控え、日本の皆さんにもっと親しみを持って愛用していただこうと商品名を“額で見る”にちなみオーデコ (AuxDeco)と命名しました。


オーデコ(AuxDeco)は、額における感覚(触覚)を使って物を認識する感覚代行技術を用いています。サングラスにつけられた小さなカメラが装着者の 眼前の視界をとりこみます。とりこまれた視界の画像は電気刺激により触覚情報に変換されます。適切なトレーニングプログラムを受けることで、オーデコ (AuxDeco)は視覚障害者特に全盲の方にとって、外科的手術の必要のない視覚代行システムとなるでしょう。

額刺激

1960年代から電気刺激による感覚代行は提案されてきましたが、額を刺激部位とする本方式は大変新しく合理的な手法です。着け外しが容易であり,脳内での座標系変換も体の他の部位に装着する場合に比べてはるかに簡単になります。

画像処理

カメラで取得された画像情報は2つの処理を経て触覚情報に変換されます。最初の処理で輪郭情報を強調するための空間的な輪郭抽出を行います。次の処 理では,時間変化する情報を強調するたの時間的バンドバスフィルタリングを行います。これらは実際の網膜でも行われている処理です。オーデコ (AuxDeco)は実際の視覚系の前処理を模倣することで、脳内での画像理解を容易にします。

参考文献

[1] Kajimoto, Kawakami, Maeda, Tachi, "Tactile Feeling Display using Functional Electrical Stimulation," Ninth International Conference on Artificial reality and Telexistence, 1999.
[2] Kajimoto, Kawakami, Tachi, "Optimal design method for selective nerve stimulation and its application to electrocutaneous display," Tenth Symposium on Haptic Interfaces for Virtual Environment and Teleoperator Systems, pp.303-310, Mar 2002.

 

 

最終更新:2008年11月02日 19:21
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