ティーチングという言葉には、本来、「教えること」という意味しかないはずです。ところが、近年のコーチングブームに伴い、「・・・して下さい」という指示や「・・・してはいかがですか」という助言など、コーチングとは対照的な接し方(かかわり方)まで、ティーチングという言葉で表現されるようになりました。したがって、どういう意味で「ティーチング」という言葉が使われているのかを、吟味しなければならなくなっています。
指示や助言については、また別の機会に取り上げるとして、ここでは「教えること」に限定して、効果的なティーチングを考えたいと思います。メッセージを共有するというコミュニケーションの本来の意味から考えると、上手く教える技術は、コミュニケーション・テクニックそのものなのです。
「・・・ですよ」と伝えて知識や技術を提供するのは、「教えること」という意味でのティーチングの典型でしょう。相手が必要としている知識や技術であれば、ティーチングは上手く行きます。別の言い方をすると、相手が必要としている知識や技術を正確に判断して提供することが、ティーチングでは大切なのです。
相手にとって必要だと自分は思っても、相手はそう思っていないこともあります。相手が興味・関心を示さない場合にはティーチングも難しくなり、幾つかの点に留意しなければならなくなります。
①注意を引く
AIDMA(Attention,Interest,Desire,Memory,Action)の法則を持ち出すまでもなく、まずは相手の注意を引かなければなりません。目立たないところで細々と訴え続けてもダメで、相手の目に留まる場所や時間を限定して、集中的にメッセージを送るのが効果的なのです。
②分かりやすく
難しいことを理解するためにはエネルギーが必要ですし、もともと関心のないことにエネルギーを費やす気にはなりません。したがって、できるだけ分かりやすい言葉を選ぶ必要がありますし、文字よりは理解しやすい図表を使いこなして、一目瞭然になるように努めることも大切でしょう。
③手短に
関心のないことに時間を費やす気にもなりません。いくら分かりやすくても、説明が長くなってしまえば逆効果です。長話よりも短時間の話の方が耳を傾けてもらえますし、長い言葉よりも短い言葉の方が記憶にも残りやすいのです。
④意外性を提供する
相手にとって分かりきっていること、当たり前のことだけを繰り返し伝えても、仕方がありません。「へー。そうだったのだー」と相手が思うような新しい知識、意外な知識を提供できると効果的です。
⑤信憑性を高める
新しいことや意外なことも、根拠が曖昧では受け入れてもらえず、ガセネタとして処理されてしまいます。信じるに足りる根拠を示しながら、説得力のあるメッセージを送らなければならないのです。
※この文章は「広報」2007年12月号(日本広報協会)のために執筆した連載「コミュニケーション・テクニック 第9回 ティーチング」の一部をもとにして、少々加筆したものです。
※「行動変容ステージと支援方法」、「指示による積極的ティ-チング」、「助言による消極的ティーチング」なども参考にして下さい。