「医療戦略の本質」マイケル・ポーター氏著、株)メディヴァ、大石佳能子氏

 

メディヴァ代表大石佳能子による連載コラム | 医療経済を斬る

 www.mediva.co.jp/oishi-blog/2009/09/post-26.html

より

「医療戦略の本質」

2009.09.29

今、日経メディカル(日経BP社)よりの依頼でマイケル・ポーター氏著の「医療戦略の本質」をいう本の書評を書いています。マイケル・ポーターと言 えば、言わずと知れたハーバードの教授で、経営戦略論の大家です。私は在学中に師事する機会には恵まれませんでしたが、ハーバード・ビジネス・スクールの 経営学の先生方には多くポーター氏の弟子たちがいました。

詳しくは書評に譲りますが、本書はポーター氏が米国の医療・保険制度を振り返り、失敗の原因を説きほぐし、今後の提言として「患者への価値」を目的 として運営される仕組みを提言しています。今までの仕組みは保険者と医療機関がお互いにコストを押しつけ合う仕組みだったのを、連携しながら「患者への価 値」に向かって協働仕組みへ転換することの必要性を述べています。

本書は、アメリカの医療経営論でありながら、非常に興味深い本でした。当初は異国の失敗した制度について書かれたものとして読んでいたのですが、思 いの外、日本にも適用される内容が多く、実用的に使えるものです。多くのアメリカの医療経営本が制度的背景が余りにも違いすぎるので殆ど役立たないのと対 照的です。

たとえば、ポーター氏は医療保険者が一つしか存在しない制度のことを下記のように言及しています。「政府が独占事業者になり、ほかの医療関係者に比 べ絶対的な交渉力を持つ。予算管理のプレッシャーは不可避で、医療提供者や医療関連メーカー、患者へ多額なコストが添加される。医療サービスは画一的にな り、画期的な治療法の採用が遅れる。政府は医療業務を監視し、細かく管理するために最大限努力をする。」これはまさしく我が国で起こっていることではない でしょうか。

ポーター氏が提唱する「患者への価値」を目的とする仕組みは、「患者価値」をどう計るかを初めてとして解決されない問題を含んでいます。しかしなが ら私は、「患者への価値」を「目的とする」こと自体がパラダイム転換であり、方法論は試行錯誤を重ねれば良いのではないか、と思っています。

さて、話は変わりますが、メディヴァはもうすぐ設立10年を迎えます。設立されたばかりのメディヴァの第一号の案件は、世田谷区用賀にある「用賀 アーバンクリニック」というグループ診療のクリニックでした。院長の野間口先生と私どもは、当時、新しい「患者への価値」を提供する場としてクリニックを 立ち上げました。

何か新しいことをやってみたい、という思いで一つの実験現場として作ったクリニックも9年が過ぎました。経営的には非常に成功したクリニックです が、この間いろいろな苦労もありました。この間終始、地域医療の担い手として「患者価値」を追求し続けた野間口先生のインタビューがQLife Squareに掲載されました(「パーフェクト・ホーム・ドクター」という理想像)。今までの経緯と今後の思いが記載されていますので、ご興味頂ければ是 非ご覧ください。
http://www.qlife.jp/square/professionals/story6539.html

最終更新:2009年10月16日 01:29
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