修論研究
ブナ苗の葉内活性酸素消去系の物質含量と酵素活性に対するオゾンと土壌水分ストレスの単独および複合影響
修士課程では、樹木の葉の光合成活性に対するオゾンと水ストレスの複合影響に関する研究を行った。大気中のオゾン濃度が高くなる春から夏にかけては土壌が乾燥しやすい時期であり、森林を構成する樹木はオゾンと水ストレスの複合的な影響を受けている可能性がある。しかしながら、我が国の
樹木に対するオゾンの影響に関する知見はきわめて限られており、オゾンと水ストレスの複合影響はまったく明らかにされていなかった。そこで我が国の代表的な落葉広葉樹であり、その衰退が問題となっているブナを供試樹木として、樹木の成長を決定する最も重要な生理機能である葉の光合成活性に対するオゾンと水ストレスの単独および複合影響を研究した。自然光型気象室において浄化空気を導入した処理区と60 ppbのオゾンを一日7時間暴露した処理区の2処理区を設けた。それぞれのガス処理区において3日に1回250 mlの潅水を行った土壌湿潤区と土壌湿潤区の70%にあたる175 mlの水を同じ頻度で灌水した水ストレス区を設定し、合計4処理区でブナ苗の育成を行った。2成長期に渡る処理の結果、純光合成速度に対してオゾンと水ストレスの有意な相殺影響が認められ、水ストレス条件下ではオゾンによる純光合成速度の低下が抑制される事が明らかになった。その原因として、水ストレスに起因する気孔閉鎖によってオゾンの吸収量が低下したことと、水ストレスによって活性酸素消去反応において重要な役割を果たす抗酸化物質であるグルタチオンの濃度が増加し、それがオゾンに起因する活性酸素の消去に対して有効に働いた事が示唆された。それまでに欧米で行われた、オゾンと水ストレスの複合影響に関する研究では、水ストレスによる気孔閉鎖がオゾン害の軽減要因であると考えられてきたが、葉内におけるオゾンに起因する活性酸素の解毒能力が、水ストレスによって変化する事を指摘した点が新規性の高い研究であると言える。
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最終更新:2008年03月02日 02:51