第02話「ダンスフロア♪イクタ爆現」
「生田さん、こめかみの辺りにあるボタンを押してみてください。」
「え、これですか?」
黒服が突然ボタンだの言い出すから驚いたが、衣梨奈は言われた通りにした。
しかし押したところで何が起きるといったわけでもない。
音は鳴らないし、光が出たりもしなかったのだ。
だがしかし、唯一マネージャーだけは天変地異でも起きたかのように騒ぎ出した。
「き、消えた!本当に消えた!!」
「マネージャーさん?」
「生田さん、あなたは今透明人間のような状態になったのですよ。」
「えぇー!?でも、えり、ちゃんと見えとるし……」
「透明になることが出来る、そして透明なものを視ることが出来る。
それが我々タチバナの造り上げたライダーシステムの基本能力なのです。」
「???」
色々と分かりかけたところだったのに、衣梨奈の頭はまたもや混乱してしまった。
仮面ライダーと透明になることが繋がらないのだから無理もない。
「仮面ライダー龍騎」に出てくるカメレオン型ライダーのベルデや、
「仮面ライダーフォーゼ」の主役フォーゼがステルススイッチで透明になったりはしたが
そんなのはごく一部であり、全然ライダーに結びつかない。
「なんでこんな機能が?……いや、凄いですけど、なんか……」
「それはですね、我々の敵に対抗するためです。」
「敵!?」
敵というフレーズに衣梨奈はテンションが上がる。
ここで衣梨奈はあることを思い出した。
仮面ライダーはほぼ全ての作品で敵と同じ力を扱っているのだと。
「ワームのクロックアップに対抗するためにカブトはクロックアップしとった!
電王はイマジンを倒すためにイマジンの力を借りとったやん!
ダブルもメモリの力で、オーズもメダルの力で、つまり敵の力で対抗!!」
「そう、つまり生田さんたちハロープロジェクトの敵は?」
「透明な敵っちゃん!!」
「そう!透明の生命体と戦って奴らのデータを取ってもらいたいのです!」
「おおぉー!」
どのようにデータを取るのかはよく分からないが、
ライダーとして戦えることに衣梨奈の気分は高まる。
しかし上がったテンションは長くは保たず、すぐに不安に駆られてしまう。
「でも……本当に私なんかに戦えるんですか?」
KYであるとは言え、衣梨奈もまだうら若き少女である。
屈強な男たちが相手すると思われる透明生命体に、衣梨奈の力が通用するのだろうか?
そう思うとなんだか怖くなってくる。
しかし黒服は不安がることはないという風に言い放つ。
「透明生命体はあちらこちらにいます。でも本当に強いのはごく一部だけ。
この辺りには弱い固体しか生息していないと調べがついているのですよ。
それにライダーシステムには数多くの安全装置が備わっています。
例えスーツが全損したとしても装着者には傷一つつかない安心設計ですよ、凄い技術でしょう?」
「でも!スーツが壊れたところで怪物に襲われたらどうしよう、どうしよう・・・・・・」
「それも大丈夫です。生命体が狙うのはスーツだけですから。」
「スーツだけ?……」
ここで黒服は何かに気づいたような感じでピクリとする。
そして真剣な顔で衣梨奈に伝えたのだった。
「生田さん注意してください、奴らが迫ってきています。」
「も、もう!?」
「さっきの続きですが、ライダーのスーツは奴らの食料にもなるのです。
だからこそ奴らは不味い人間より美味しいスーツを優先して襲うのですね。
スーツからは食欲を誘う香りがプンプンと発せられています。すなわち……」
「食べるために、こっちにきとぉと!」
「そうです、だからこそライダーに変身したらすぐに準備をしなくてはならないのです。
迎撃の、準備を。」
衣梨奈、いや、イクタも奴の接近を認識し始めた。
それは蜘蛛の化け物だった。
二足歩行をしているので人型のようだが、腕が何本もある、間違いなく蜘蛛だ。
ステンドグラスのようにカラフルなその姿は衣梨奈には見覚えがあった。
それは「仮面ライダーキバ」に登場するスパイダーファンガイアにそっくりだったのである。
敵がこちらに近づくに連れて、イクタの胸の鼓動が激しくなってくる。
しかしそれは不安から来るものではない。
戦える喜びによるものなのだ。
(なんやろ、分からんけど、えり、勝てる気がするっちゃん)
イクタの身体は自然と動いていた。
スパイダーファンガイアに向かって自分から走っていっていたのだ。
そしてジャンプをし、敵の腹に蹴りを見舞う。
「グッ!!」
イクタはそこまで速く走ったつもりはなかった。
高く跳んだつもりはなかった。
強く蹴ったつもりはなかった。
しかし、現実はその全てが最高級の走りであり、跳躍であり、蹴りであったのだ。
自分の運動神経が最大限に活かされるこの感覚に、イクタは更なる興奮を覚える。
そして腹をおさえうずくまるスパイダーファンガイアに向けて、こう言い放ったのだ。
決めポーズつきで。
「その命、神に返しなさい!」
イクタはベルトの側面に取り付けられたいくつかのホイッスルのうち、一つを掴む。
それはナックルフエッスルと呼ばれる道具であり、
必殺技を発動するためのキーとなる装置であった。
イクタはベルトの中心部にナックルホイッスルを挿入し、
そして変身に用いたナックルを右手に装着する。
これで準備は完了、あとは強烈な一撃をぶつけるだけだ。
『イ・ク・タ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』
ベルトからの電子音声と同時にイクタは熱く燃えたナックルを敵にぶちかます。
その拳の破壊力が凄まじいことは一目瞭然。
スパイダーファンガイアはひとたまりもなく、ガラスが割れたように砕け散ってしまった。
「初めてでここまで動けるとは……」
黒服の男はイクタの鮮やかな戦いっぷりに感嘆する。
元々運動神経の良い女の子ということは聞いていたが
これほどまでに戦えるのはやはり仮面ライダーを知っていたからだろう。
仮面ライダーの戦い方を、必殺技を知っていたから無駄のない動きが出来たのだ。
「勝っちゃった……やけん、ちょっと物足りんかも」
"物足りない"とハッキリ言ったイクタに対して黒服はゾクッとする。
確かに透明生命体はあっさりと負けてしまった。
特撮の仮面ライダーと比べると弱すぎる敵に見えたのだろう。
イクタはもっと強い敵と戦いたいと思っているのだろうか……
黒服の属するタチバナは10代そこらの女の子がこんな仕事を受けてくれるとは思いもしなかった。
怖いから辞めるかもしれない、疲れるから辞めるかもしれない、そもそもライダーとか恥ずかしい。
そんな女の子たちばかりだと思っていたのだ。
だからこそタチバナはとある餌を用意していたのが、イクタにはそんなもの必要無かったのかもしれない。
しかし契約は契約、はっきりとご褒美を示さねばならない。
「物足りないですか、まったく関心しますね。
でも安心してください、これからもっと強敵と戦えますから。」
「えっ!やっぱりもっと強い透明の敵が……」
「違います、生田さんが戦うのはハロープロジェクトのメンバーですよ。」
「ええ!?」
またもや衣梨奈を混乱させる要素が舞い降りた。ハロプロと戦うとは何事だろうか
この硬い拳でメンバーを殴ろうなんて衣梨奈は毛の先ほども考えていない。
「そんな、ハロプロと戦うなんて……」
「言葉が足りませんでした。生田さんが戦うのは仮面ライダーになったメンバーですよ。」
「え?……あっ」
「生田さんを含め我々タチバナは13人の適合者をスカウトしています。
しかし中にはやる気をなくす方も現れるでしょう、全員に辞められたら我々にとって大打撃です。
そこでモチベーションを上げてもらう手段を考えました。
詳しくはマネージャーさんに説明してもらいましょうか」
「モチベーション?いったいなんのことですかぁ?」
今の時点ですでに楽しいのに、これ以上何かがあると思うと衣梨奈の胸はますます躍りだす。
「説明の前に生田、とりあえず姿見せて」
「あ、消えたままでしたね」
普通の人に自分の姿は見えないのだと気づかされた衣梨奈はこめかみのボタンをポチリと押す。
するとたちまち透明状態は解除され、仮面ライダーイクタの姿が可視化されていく
「見えますかー?」
「見える、見えるけど……やっぱり話にくいから元の姿に戻ってくれないかな」
「あ、そーですね、えっと戻り方は……」
「戻りたいって思えば戻りますよ、凄い技術でしょう」
黒服に言われた通りに頭の中で念じると、本当に衣梨奈の姿は元に戻った。
さっきまでジャケ写撮影をしていたので新曲の衣装だ。
現段階では衣梨奈の衣装の描写をすることが出来ないのがもどかしい。
「すごっ!本当に戻ったと!」
「やっと話しやすくなる、じゃあ言うぞ」
「はい」
「13人のメンバー、いやライダーか、13人のライダーに最後の一人になるまで戦ってもらうんだが
勝ち残った最後の一人には会社からご褒美が有るんだ。」
「ご褒美……」
「そのご褒美は来年1月に発売するモベキマス2ndシングルのセンターになれる権利、となっている、報告終わり。」
「えっ……ええええーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
衣梨奈の驚きは今日一番のものだった。
「センター!って本当ですか!!嘘じゃないですよね!!」
テンションMAXになった衣梨奈はかなりの跳躍力でピョンピョンと飛び跳ねている。
黒服はその跳躍力を見て、衣梨奈にライダーの素質がたしかにあったのだと再認識する。
「嘘ではありませんよ、費用はすべて我々タチバナが負担します。
協力をしてくれるのですからこれくらい当然です。」
「わぁぁ、わああああ!、ありがとうございます!」
衣梨奈は深々とお辞儀をする。よほどセンターのご褒美が嬉しいのだろう。
しかしまだセンターになると決まった訳ではない。勝ち抜かねばならないのだ。
「まだお礼は早いですよ、他の12人もなかなかの逸材ですからね。
スーツが全壊した時点で敗北とみなしますので、そうはならないよう注意してください。
あ、透明生命体と戦うことも忘れないでくださいね。」
「あ、あの」
「はい?」
「他のメンバーで、誰が仮面ライダーになっとるんですか?」
誰がライダーか
衣梨奈からしたら最も気になる情報であった。
これから戦う相手が誰かというのは気になるところなのだ。
しかし黒服は首を横に振る、現実は甘くないのだ。
「残念ながらそれだけは言えません。相手が誰だか分かるとフェアじゃありませんからね。」
「はぁ……やっぱりダメかぁ」
「ですが、仮面ライダーの名前くらいなら教えてあげても構いませんよ。」
そう言うと黒服は衣梨奈に一枚の紙きれを差し出した。
なんとその紙は仮面ライダー全13人のリストであったのだ。
本当に名前しか載っていないが、有益な情報には違いない。
仮面ライダーハウガ
仮面ライダーG3-M
仮面ライダーオーデン
仮面ライダー910
仮面ライダーパレット
仮面ライダー裂鬼
仮面ライダーゲンキックンホッパー
仮面ライダーめん王
仮面ライダーイクタ
仮面ライダーディエッグ
仮面ライダーBigW
仮面ライダーオーズッキ
仮面ライダーなでしこ
「な、な、なにこれ……」
「この情報は他の12人にも伝えます。どうです?、フェアでしょう?」
「本名はえりだけじゃないですか!!!フェアじゃなーーーい!!」
仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈
最終更新:2012年08月31日 15:20