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第04話「指令と二刀流と最強コンボ」

「いやいやいや、違うでしょ!タトバやないの!?」
「タトバ?なにそれ」
「タトバはタカ・トラ・バッタで……いや、なんでもない」

パチモン風なビジュアルに苛立ちを覚えたイクタだったが、
不平を香音に言っても仕方ないと悟り、怒りを押さえ込む。
それに目の前の相手はオーズではない、オーズッキなのだ。
言わばオーズを香音風にアレンジした仮面ライダーなのである。
何が来るか予想出来ないのが怖い。

「変なえりちゃんだなぁ、もう戦いは始まってるのにねっ!」

先に仕掛けたのはオーズッキの方だった。
オーズッキはトノサマバッタの脚で地面を蹴り、イクタのもとへと跳んでいく。

(えっ、速い!)

オーズッキは「高く」ではなく「前へ」跳ぶことを意識して地面を蹴ったのだ。
蹴りの角度と身体の向きが適切なものであれば、
トノサマバッタの跳躍力はオーズッキをミサイルへと変える。

(さっきもこれでカマキリの化け物を倒したんだよ。
 えりちゃんだって、すぐに倒してやる!)

高速飛行するオーズッキは、イクタにぶつかる直前にカギ爪を前に突き出す。
カギ爪は通常でも破壊力が高い。そこにスピードが加わることで破壊力が数倍に跳ね上がるのだ。
そこにさらに気合を注入しようと思ったのか、オーズッキは雄叫びのような声をあげる。

「セイヤァーーーー!!」

動物の身体能力を組み合わせたオーズッキの攻撃は速く、強かった。
この辺りに生息する透明生命体ならばひとたまりもないだろう。
しかし、イクタは高い技術力で造られた仮面ライダーなのである。
この程度の攻撃で破損するほど脆くはないのだ。
イクタは剣のような武器を両手で持ち、キィンと言う金属音とともにカギ爪を受けきる。

「あれっ!?そんな剣さっき無かったじゃん!」
「イクタカリバー、これがイクタ第2の武器っちゃん」

イクタはナックル以外にもイクタカリバーという武器があることを知っていた。
だからこそオーズッキの攻撃に対抗することが出来たのだ。

(かのんちゃんのオーズは変やけど、えりのイクタはイクサと同じっちゃん♪
 ということはこれも出来るはず!)

イクタはテレビで見ていた通りの手順でイクタカリバーを変形させる。
刀身を引っ込めて、通常より太く出っ張った鍔を相手に向ければ銃の形になる。
イクタは一瞬にしてイクタカリバーを銃へと変えてみせたのである。

(かのんちゃん近すぎ、もう当て放題!)

イクタは容赦することなく銃弾を撃ちまくる。
射撃経験が無いイクタでもこれだけ接近すれば十分に当てることが出来るらしく
4,5発放たれた弾丸はすべてがオーズッキの胸へとぶつかっていった。

「うわっ、わっ、やめてよ!」

ライダースーツの強度はかなりのものなので、香音自身への危害はまったく無い。
しかし外装には確実にダメージがある。一撃受ける毎に亀裂が生じているのがその証拠だ。
一つ一つのヒビは小さいが、このペースならいずれ全壊してしまうだろう。
その時こそがオーズッキの敗北を意味する。

(それだけはまずいよ、はやく逃げないと!)

オーズッキはバッタの跳躍力で遠くへと逃げようとするが、その間も撃たれ続けている。
イクタのコントロールの効かぬところまで逃げた頃にはすでに10発は被弾していた。
後先を考えない攻撃をしたのも、ただ黙って銃撃を受けたのも、オーズッキの戦闘センスのなさを示している。
もっとも、女子中学生で戦闘センスのある子を探すほうが難しいが。

「えっと、どうしよ……えりちゃん強くて近づけないし……」

オーズッキには次の手が思いつかなかった。
透明生命体と仮面ライダーの強さの違いを知り、計画がすべてパーになったのだから無理もない。
そのようにオロオロしているオーズッキを見て、イクタはもどかしい気持ちになってしまう。

(かのんちゃん……どうしてメダルチェンジをせんと?)

もしかしたら香音はメダルチェンジの方法を知らないのではないか。
イクタはそのように思い始めてきた。
本家のオーズは状況に応じてメダルを交換し、他の動物の力を借りて戦うことが出来る。
オーズッキのベルト側面にもメダルホルダーがつけられており、
おそらくそこに他のメダルが入っているのだろうが、香音は気づいてすらいないのだろう。

(こんままやったら勝てるけど……これでええと?)

次の手が思いつかないオーズッキに比べて、イクタはまだ作戦が山のようにある。
それはイクタが仮面ライダーのことをよく知っているからだ。戦い方と必殺技を熟知しているからだ。
しかし相手のオーズッキはまったくのライダー素人。
いくらオーズをモデルとした強いスーツを手に入れたとしても使いこなせなければ無意味なのだ。
イクタには今のオーズッキに勝つことが卑怯な気がしてならなかった。

(もちろん負ける気なんかないっちゃ、絶対勝つ。でも、ヒントくらいあげてもよかね?)

イクタは何かを決意し銃撃を中断した。
手加減をしようとしているのではない、むしろさらに強くなろうとしているのだ。

「かのんちゃんは同期やけん、最高の姿に変わって倒すっちゃん」

イクタの仮面に取り付けられた金色の十字バイザーが蒸気とともに開き
中からは赤く大きい複眼が現れる。
これが仮面ライダーイクタのもう一つの姿、「バーストモード」だ。
これまでの「セーブモード」より耐久力は落ちるが、その反面スピードと攻撃力が増すフォームである。

「か、変わった!?」
「そう、仮面ライダーは、変われる。」

オーズッキにフォームチェンジの存在を教えたが、まだ足りない。
もう一つ肝心なことを教えてあげなくてはならないのだ。
イクタは自身のベルトの側面に取り付けられた青いフエッスルを取り出し、ベルトに装着する。

「こんなのも出来るっちゃよ」

イクタが選んだフエッスルの名は「ガルルフェイク」
狼の意匠が施された剣「ガルルセイバー」を、自分の手元に呼び寄せることが出来るのだ。
イクタの右手には剣状態にしたイクタカリバー、左手にはガルルセイバー。
二刀流でオーズッキにプレッシャーをかけている。

「そんな、なんでも知ってるえりちゃんに勝てるわけ……あれ?これって」

この時、オーズッキは自分のベルトにホルダーが取り付けられていることに気づく。
イクタがフエッスルをベルト側面から取り出したから自分のベルトを見ただけなのだが
これがオーズッキにとって最も重要な気づきであったのだ。

(なにこれ!こんなとこにメダルが入ってたの!?)

オーズッキがメダルに気づいたと知り、イクタは安心する。
これでやっと本気を出すことが出来る。

(きっとあのメダルを使うはず、強くなれるよ、かのんちゃん
 でもえりはもっと強かね、絶対、絶対絶対かのんちゃんを倒す!)

イクタは離れたオーズッキの元へと走っていく。
その接近にオーズッキは焦るが、この場の状況に合ったメダルをしっかりと見つけることが出来た。
だが実際は状況判断をしてメダルを選んだわけではない。
ただ単に、自分にピッタリだと感じたから選んだのだ。

「このメダルは真ん中だっけ?……えいっ!」

メダルを挿入し、右手に持ったスキャナーで読み取った瞬間オーズッキの身体は変形する。
これがフォームチェンジと呼ばれるものなのだ。

『ヒヨコ!』

『カマキリ!』

『トノサマバッタ!』

オーズッキは「ヒョウメダル」と「カマキリメダル」を交換したのだ。
先ほどまでヒョウ柄で、カギ爪のついていたオーズッキの腕が
緑色の鋭いブレードのついた腕へと変わっていく。
両腕に刃のついたその姿はまさに二刀流。今のイクタといっしょだ。

「すごい……これが仮面ライダーの力……」
「ボーっとしとったらあかんよ!ほらぁ!!」

オーズッキは両手のブレードでイクタの二刀を防ぐ。
イクタとオーズッキ合計4本の刃の力は互角のようであり、必然的につばぜり合いとなる。
不利な状況を互角にしてみせた点からもカマキリメダルの選択は正しかったと言えるだろう。

(仮面ライダーの知識なら負けるけど、カマキリのマネだったら負けないよ!)

虫まねアイドルのプライドからか、オーズッキの押しの強さが一段階増加する。
少しずつ力強くなっていくカマキリブレードに、イクタは若干の焦りを見せる。

(このままやったら押し負けると……だったらこうするったい!)

イクタは踏ん張っていた右脚を上にあげ、オーズッキの脚を蹴ろうとする。
しかしその脚の初動すらもオーズッキは見ていた。
鳥類は視野角が広く、人間の死角となる位置も見ることが出来る。
オーズッキはヒヨコの眼でイクタの蹴りを捕捉し、
お返しにバッタの脚力でイクタの左脚にローキックをぶちこんだのだ。
プチ情報だが、鈴木香音はローキックが得意なのである。

「いったぁああああ!」

超脚力で繰り出されるローキックはとても強力で、片足立ちのイクタが耐えられるものではない。
倒されるだけでは済まず、数メートル先まで転ばされてしまう。
メダルを1枚チェンジするだけですべての力を最大限に活かすオーズッキを見て、
イクタはヒントをあげたことを後悔し始めた。

(やばか……でも大丈夫、えりにはまだ技があるっちゃけん)

この時はイクタもオーズッキもまだ気づいていなかった。
二人の戦いが長引くことで、彼女らを狙う存在が近づいていることを。


                    ♥


それは突然のことだった。
イクタとオーズッキの戦いに水をさすように、複数の透明生命体が襲い掛かってきたのだ。
その数はおびただしく、ざっと数えて300は越える大所帯であった。
二人の戦いが長引いたゆえに、スーツから発せられる甘い香りが大量の敵を呼び寄せてしまったのだろう。

「お、多すぎでしょ!」
「これは……ピラニアヤミーっちゃん!」

今回の敵もまたイクタには見覚えがあったようだった。
鋭い牙を持った魚のような生物は「仮面ライダーオーズ」に登場するピラニアヤミーに酷似している。
一匹一匹は小さな固体だが、数の力でライダーを喰ってやろうという考えはまさにピラニアそのもの。
イクタもオーズッキも決闘している場合では無いと悟ったのか、ピラニア退治に集中しだした。

「えーいっ!やっ!はぁ!」
「セイヤー!とりゃあ!」

イクタもオーズッキもそれぞれの二刀でピラニアを斬る、斬る、斬りまくる。
所詮は弱い固体であり、一撃二撃で倒すことが出来る。
しかし敵の数が多いゆえに噛まれる回数が多くなるのも確かだ。
先の決闘でのダメージも蓄積されており、イクタもオーズッキもいつまで持つかは分からない。
倒しきれず二人同時にゲームオーバーなんてこともありえるのだ。
ここで現状を打破しようとしたのはオーズッキだった。

「えりちゃん教えて!オーズッキの戦い方を知ってるんでしょ!?
 このままじゃ二人ともやられちゃう!教えてよ、あたしに技を教えてよ!」
「かのんちゃん……!」

イクタは策を思いついていた。
しかしそれは香音の身体に負担を与えるかもしれない危険な策なのだ。
出来ることなら策など使わずゴリ押しでピラニア軍団を退治したかった。
しかし現実問題ピラニアはまったく減っていない。
このままでは身体に負担をかける以前に二人とも失格になってしまうだろう。
そんなつまらないことで二人分の野望を終わらせて良いわけがない。

「分かったよかのんちゃん!ヒヨコメダルとクワガタメダルを交換して!」
「クワガタ?……あ、本当だ!あった!」

オーズッキはオーズに変なアレンジをきかせたパチモン風ライダーだが、
クワガタメダルがあるということは確信していた。
オーズッキが持つメダルはすべてが香音にゆかりのある動物たちなのだ。
クワガタのものまねをしたことはよく知っている。即ちクワガタメダルが有るということに繋がるのである。

「クワガタをセットして……あ!メダルが全部緑だ!」

頭パーツを担当するクワガタメダル
腕パーツを担当するカマキリメダル
脚パーツを担当するトノサマバッタメダル
これらの動物の共通点はすべてが虫だということだ。
虫のメダルはすべてが緑色で統一されている。
そしてオーズッキが3つのメダルの色を揃えた時、何かが起きる。

「全部同じ色だからええと……それがコンボ!!かのんちゃんの色でコンボを発動するっちゃん!!」
「うん!」

『クワガタ!』

『カマキリ!』

『トノサマバッタ!』

『ガータガタキリバ♪ガタキリバ♪』

オーズッキの頭部が、緑色のハサミを持ったクワガタヘッドにチェンジされる。
そしてオーズッキの全身が緑色に染まった今、コンボの能力が発動するのだ。

「ううぅぅ……うぉおおおおおお!!」

オーズッキは雄叫びをあげながら自身の分身を生成する。
その分身は1体や2体なんてケチなものではない。
50体だ。
群れをなして行動する虫のように、オーズッキは50体に増えて戦闘を開始するのだ。

(あたしがいっぱいいる……これなら、勝てる!)

圧倒的多数に増えたオーズッキはピラニア退治を再開した。
50体に増えたから一度に倒せる敵の数も50倍。
これまでとは比べ物にならない速度でピラニアを殲滅させることが出来るのだ。
ガタキリバコンボを発動したオーズッキはピラニアヤミーを斬る、斬る、斬る、斬る、
斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬りまくる。
これによってオーズッキは短時間でピラニアヤミーをすべて倒してみせたのだ。
信じられない強さを持つオーズッキに、イクタも感心する。

「やっぱりオーズはすごかね……あ!かのんちゃん大丈夫!?」

イクタがそう言うが速いか、オーズッキのすべての分身が一瞬にして消えてしまう。
そして一人だけ残ったオーズッキは急にふらつき、そのまま地面に倒れるのだった。

「あれ、なんだろ……凄い疲れちゃった」
「コンボを使ったせいっちゃん」
「コンボの?」
「メダルを同じ色で揃えると確かに強いっちゃん、でもその分体力を消費すると。」
「ああ、それで今こんなに疲れてるんだ……」

立ち上がろうにも立ち上がることが出来ない。オーズッキは身体すら満足に動かせないほど疲れているのである。
ライダーシステムは装着者へのダメージをゼロにするが、疲労だけは防ぐことが出来ないとことが分かる。

「はは、腕も脚も全然動かないや……えりちゃんおめでとう、この勝負えりちゃんの勝ちだよ」
「ううん、勝ちなんかじゃない」
「えっ?」
「えりは勝たない。」




仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈
仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音
















最終更新:2012年08月31日 23:18