第05話「共・同・戦・線」
イクタとオーズッキの戦いから数日が経った日のこと。
ハロコンの昼公演から夜公演の合間に、衣梨奈は香音に話しかける。
「かのんちゃん、そろそろ行くっちゃ」
「えりちゃん……本当に良かったの?」
「そのほうがえりにも都合よかとよ、なんも気にせんといて」
あの日、イクタはオーズッキを簡単に倒すことの出来る状況にいた。
しかしイクタは攻撃を取りやめ、オーズッキを見逃したのだ。
その理由はアンフェアな勝利を好まぬ騎士道精神から来るものではない。
オーズッキと組むことで、最強のタッグを組めると信じていたからだ。
「たぶんやけど、えりが一番ライダーに詳しいと思うと」
「うん、100%そうだろうね」
「オーズッキの一番良い戦い方を知ってるのもえりったい。
だからえりがかのんちゃんに指示を出す。そうすればかのんちゃんはもっと強くなれるっちゃん。」
オーズッキは適切なメダルを選べば強いが、選択を誤ると途端に弱くなる不安定なライダーだ。
強力なコンボもデメリットがあるので慎重に行わなくてはならない。
だからこそ、衣梨奈のような詳しいサポート役の存在が重要になってくるのである。
「仮面ライダーを知り尽くしたえりと、オーズの力を持つかのんちゃんが組むったい。
このチームならどんな相手が来よっても勝てそうやろ」
衣梨奈の話を聞いていると、香音は本当に勝てそうな気分になってきた。
ろくに戦い方も知らなかった自分が優勝する可能性はほぼゼロに近いが、
なんでも知っている衣梨奈が味方になってくれれば光が見えてくる。最後まで勝ち残れるかもしれない。
しかし問題が一つある。香音はそのことを聞いておかねばならなかった。
「でもえりちゃん、もしあたし達がたくさん勝ってさ、
残ったライダーがあたしとえりちゃんの二人だけになったらどうするの?」
「そん時は……二人で決闘の続きでもするっちゃね」
衣梨奈と香音のターゲットは真野恵里菜だった。
真野恵里菜は映画にて、本物の仮面ライダーである「なでしこ」を演じていた。
タチバナに貰ったリストにも「なでしこ」と書かれているので、彼女の参戦は確定的だろう。
また、真野恵里菜は衣梨奈の次にライダーに詳しいのではないかと衣梨奈は予想していた。
少なくともなでしこの扱い方に関しては熟知しているはず。
ライダー素人ではない彼女を2人がかりで今のうちに倒してしまおうというのが今回の作戦だ。
「真野さぁ~ん♪」
ハロコンの楽屋にて、衣梨奈は甘えた声で恵里菜に接近していった。
このように先輩メンバーでも臆せず話しかけることが衣梨奈の凄いところなのだろう。
「え、えりぽん?どうしたの?」
「真野さんあっちで話しましょうよ!色々教えてください♪うふふふふ」
「あっちってどこよ、ここじゃダメなの?」
「だめでーす♪くふふふ」
用件も伝えず強引に誘い出そうとする衣梨奈を見て、恵里菜は勘付く。
衣梨菜はやはり仮面ライダーイクタであり、自分をライダーバトルに誘っているのだと気づいたのだ。
いずれは戦おうと思っていた相手だったので恵里菜はその誘いに乗ろうと決意する。
「わかったわかった、次の公演までには終わらないといけないから早くね。」
「すぐ終わるから大丈夫ですよ~」
衣梨奈が恵里菜を誘い出す一連の流れを注目していたメンバーが同じ楽屋には何人かいた。
℃-uteの萩原舞もその一人であった。
(うわぁ、あれがライダーバトルってやつ?やっぱりあの3人はライダーだったんだ。
あの3人はマイと違って仮面ライダーの名前で誰かバレバレだもんねぇ……
どうせ他のみんなはマイが仮面ライダーだなんて気づかないんだろうけど)
ライダーバトルに興味を持った舞は衣梨奈たちの後をつけだす。
追跡する3人が向かった場所は会場内にある中ホールだった。
ハロコンが行われる大ホールとは異なる場所にあり、幸い人もいなかった。
……というより、衣梨奈が人のいない時間を狙ったのだ。
「こんなところでやるの?」
「外はファンでいっぱいやけん、ここしかないんですよ~」
「そっか……物を壊さないよう注意して戦わないとね。」
そう言うと恵里菜はベルトを巻きつけ、4つ取り付けられているスイッチを
ブレーカーを下ろすようにカチ、カチ、カチ、カチッと下ろす。
これが恵里菜の変身方法なのだ。
「変身!」
ベルトの右側に取り付けられたレバーをガチャンと動かすことで、
蒸気が一気に噴出し、恵里菜の姿を仮面ライダーへと変える。
「宇宙、キターーーーー!!」
銀色のスーツに水色のセーラーラインが入ったその姿は、
まさに恵里菜が映画で演じた仮面ライダーなでしこそのものだったのだ。
衣梨奈と香音は想像していた通りだったので、冷静な顔をしている。
ただ一人、扉の外からこっそり見ていた舞だけは目を丸くしていた。
(他人が変身するの初めてみた!いや、マイより派手すぎるでしょ!)
恵里菜がなでしこに変身したように衣梨奈と香音もライダーへと変身していく。
イクタは金のバイザーが閉じているセーブモード。
オーズッキはヒヨコ・ヒョウ・トノサマバッタの力を借りた「ピョヒョバ」となっている。
「イクタにオーズッキかぁ……それにしても二人がかりだなんてズルくない?」
「ルールでは禁止されてませんから♪」
「まったく、タッグなんていつ組む時間あったんだか……」
なでしこも、端で見ている舞もその点に関しては疑問だった。
ハロプロメンバーがライダーシステムを手に入れてから数日しか経っていないので、
相手を認めて、勧誘して、承諾を得るという3つの手順を踏む時間など無いはずなのである。
(でも、センターになれるのは一人なんでしょ?このルールで信頼関係が成り立つなんてありえない。
チームワークも付け焼刃だって証明してあげる!)
なでしこはオーズッキの方に飛び掛っていく。
複数を相手するならば弱い方から叩くべきという作戦なのだろう。
しかしそう来ることはイクタとオーズッキだって予測していた。
「メダジャリバーを出すっちゃん!」
「オッケー、えりちゃん」
オーズッキはどこからともなく剣を取り出し、向かってくるなでしこに斬りかかった。
メダジャリバーと呼ばれるこの剣はオーズッキに標準搭載されている武器であり、
イクタがその存在を教えることで使えるようになったのである。
急に剣が出てきたのでなでしこは戸惑ったが、斬られる直前のところで回避する。
「きゃっ!あぶな……」
「まだ攻撃は終わっとらんよ!」
斬撃を避けて体勢を崩したところにイクタが飛び蹴りを叩き込む。
背中でモロに喰らってしまったなでしこはそのまま吹き飛ばされ、奥の壁にドンッと全身をぶつけてしまう。
「や、やったなぁ~……こうなったら、とっておきを見せてあげるんだから!」
なでしこはベルトに取り付けられた小型のスイッチをポチッと押す。
このスイッチは「ロケットスイッチ」
なでしこの右腕にロケット型モジュールを装着するスイッチだ。
ロケットによる加速は凄まじいものであり、パンチやキックの威力を爆発的に増大させることが出来る。
『ロケット、ON』
「必殺!なでしこロケット……」
「おっと真野さん!そんなの室内でやってええと~?」
「あっ!」
イクタに指摘されて、なでしこはハッとする。
このままロケットを使用すれば壁や物を壊してしまう恐れがあるのだ。
ロケットは強すぎるし、速すぎるので100%コントロールをすることは難しいのである。
そんな中でロケットを使うわけにはいかず、解除するしかなかった。
「やったー!えりちゃんの思った通りになったね!」
「ロケットの使えんなでしこなんて怖くないっちゃん♪」
「ひ、卑劣な……」
仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈
仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音
仮面ライダーなでしこ / 真野恵里菜
最終更新:2012年08月31日 15:26