第07話「眩しい後輩!!」
全損したライダーシステムには、最後に一つだけ役割が残されていた。
それは装着者をやさしく包んでいたスーツを細かく分解し、あたりへ拡散させる機能だ。
餌を飛ばすことで透明生命体から装着者を守る効力があるのである。
もっとも、ライダー同士でのバトルではそれは関係ないが。
「……負けちゃった。」
強制的に素顔を見せることになった恵里菜は呆然としていた。
絶対に負けられない戦いで負けてしまうと、人はこうなってしまうのだろう。
ばつが悪くなったイクタとオーズッキは、変身を解除して恵里菜のもとに駆け寄る。
「真野さん……」
「なんか、ごめんなさい……」
「ふふっ、なに謝ってんの」
勝者だというのに暗い表情をしている二人を見て、恵里菜はなんだかおかしくなってくる。
(たぶんこの2人は人を蹴落とした経験が少ないんだろうなぁ
あたしもエッグに入りたての頃はそんな感じだったのかな)
室内で戦うことでロケットを封じさせたりといやらしい戦法を取っていた衣梨奈だったが
いざ他人の夢を潰すとなると胸に来るものがあるのだろう、顔がクシャクシャになっている。
このままでは良くないと感じた恵里菜は警鐘を鳴らすために立ち上がる。
「二人とも、そんなんじゃダメだよ。」
「「えっ?」」
「えりぽんの夢は世界一のアイドルになることだったっけ?」
「え?はい」
「じゃあいちいち敗者に気を使っちゃだめでしょ!
今の時代、山ほどアイドルがいるんだからさ、全員に謝ってたら身がもたないよ?
わかった?」
「は、はい!」
急に説教をしだした恵里菜に、衣梨奈と香音は驚いてしまう。
二人の戸惑いを知ってか知らずか、恵里菜は話を続ける。
「香音ちゃんもちょっと優しすぎるね。
勝ったら堂々としてればいいの!そんな暗い顔しない!」
「はいっ!」
「確かにあたしはセンターになる権利を失ったよ。
悔しいよ、そりゃ悔しいけどね……
なにも死ぬわけじゃないんだから、なにもアイドルを引退させられるわけじゃないんだから……
とにかく!二人とも元気を出しなさーーーーい!!」
「「はぁーい!!」」
「それでよし!」
恵里菜の説教はやや強引であったが、なんとも言えぬ実感がこもっていた。
思いが100%伝わったかどうかは分からないが、
見た目だけでも明るくなった二人を見て、恵里菜は満足する。
すると、衣梨奈と香音の携帯が同時に鳴りはじめた。
「わわっ、こんな時になんやろ」
「メール……みたいだね。」
二人に同時に着信したメールはタチバナから送られたものであった。
このメールはタチバナがライダーの全損を確認することで、残った全ライダーに同時送信される仕組みになっているのだ。
その文面は以下のようなシンプルなものとなっている。
「仮面ライダーなでしこ」
が
「仮面ライダーオーズッキ」
に
敗北したことをお伝えします。
「ええええええええ!!ちょっと、これみんなに送られてるの!?」
「あ~かのんちゃんドンマイっちゃね」
「うふふ、晒し者だね」
「待って待って待って、待って、まずいよ、名前出てるし、狙わるぅうぅ!」
(やばい!あの二人をなんとかしないと!)
戦いの一部始終を見ていた舞はひどく危機感を感じていた。
仮面ライダーの知識が豊富な衣梨奈と、多種多彩なフォームを持つ香音のタッグ。
その戦いっぷりを見て焦らないはずがないのだ。
特に衣梨奈は味方の強さを引き出すだけでなく、相手の能力まで制限するということがよく分かった。
彼女と戦う際には相当対策を練らないと苦戦を強いられることになるだろう。
そして二人を脅威と感じているのは舞だけではない。
舞同様に戦いを覗き見ていた数人のライダーがみな、早期に潰さねばと考えていたのである。
楽屋で無用心に恵里菜を誘ったのことが、呼ばざるギャラリーを集めてしまったのだろう。
(今ならあの二人は弱ってる、そこをマイが倒しちゃえばいいんだ!)
なでしこ戦の直後で疲弊している今がチャンスだと舞は思った。他のライダー達もそう感じている。
さっそく変身しようと、舞はさっきまで着けていたグラサンを取り、ベルトに手をかける。
余談だが、この少し大きめのグラサンはタチバナから支給されたものであり、
変身しなくても透明生命体やライダー達を見ることが出来る優れものなのだ
(緊張する……人と戦うのは初めてだからかな、でもやらないとね。
あんな子たちが残ってたらマイに勝ち目なんか無いんだし……)
マイが変身動作に入ろうとしたその時、香音がいきなり大きな声をあげる。
「ぎゃっ!もうこんな時間じゃん、着替えなきゃ!」
「わわわわっ!真野さんの話が長いからやん!」
「ちょっとぉ!そっちが戦いに誘ったからでしょ!」
なんとハロコン開始の時間がすぐそこまで迫っていたのだ。
衣梨奈、香音、恵里菜はもちろん、舞と他のライダー達も大慌てで楽屋へとダッシュする。
「しまった……能力使ってればあのとき遅刻しないで済んだんだ……」
ハロコンも終わり、楽屋で帰り支度をしている時に舞は自らの失敗に気づく。
舞が変身するゲンキックンホッパーにはある特殊能力が備わっており、
それを使えば大人たちに怒られずに済んだと、今さらながら気づいたのである。
パニックだったとは言え、己の頭のまわらなさに舞は自己嫌悪に陥ってしまう。
(はぁ……せっかく仮面ライダーになれたのに全然上手くいかないなぁ
あの二人のスーツもとっくに修理されてるだろうし、挑戦なんてしない方がいいよね
どうせマイなんて返り討ちにされるのがオチだし……)
舞の気分はどん底だった。
センターになれると思い、意気込んでライダーバトルに参戦したが、
あまり上手くいかない現実とのギャップに苦しんでいるのだ。
そんな舞に、とあるハロプロメンバーが声をかける。
「萩原さんお疲れ様です!ちょっと良いですか?」
その声の主はスマイレージ二期メンバーのだった。 竹内朱莉
朱莉はいつも元気はつらつであり、舞とは正反対の性格をした少女である。
「あぁ、タケちゃんどうしたの?」
「萩原さんって仮面ライダーですよね?戦いましょうよお!」
「えっ!な、なんでそれを……」
「だって萩原さん、真野さん達の戦い覗いてたじゃないですか、ベルトも巻いてたし♪」
(うわっ、見られてたんだ……恥ずかしすぎる)
舞と朱莉は、宿泊するホテルに近い公園に到着した。
今夜はここで戦おうと言うのである。
「夏なのにもう暗いなぁ……なんか危なくない?」
「あははは、変な人来たら仮面ライダーの力で倒せばいいんですよ」
「いやいやいや、それはさすがにだめでしょ」
舞はさっきから嫌な予感がしてならなかった。
出来ることならば戦いたくないとも思っているのだ。
その理由は朱莉の自信満々っぷりである。
自身が負けることなど少しも想像していないようなその表情が、
舞をどんどん不安にさせるのだ。
(眩しい、眩しすぎるよ……タケちゃんもやっぱり強いんだろうなぁ
えりぽんとズッキも強かったし、やっぱり最近の新人はおかしいよね
マイ、勝てるのかなぁ……?)
暗い表情をすべきでない分かっていても、思うように顔を作ることが出来ない。
怖がっていることが朱莉にバレたら戦いが不利になるだけだというのにだ。
「あ!萩原さんひょっとして怖いんですか?」
「そ、そ、そんなことナイヨ、ぜんぜん、まったく」
「安心してください萩原さん!朱莉がすぐに照らしてあげますから」
「へっ?」
気づけば朱莉はその手にカードケースのようなものを持っていた。
中心に鳥の模様が彫られたカードケース、それを朱莉はベルトにセットする。
「変身!」
黄金の光を放ちながら変身するその様はイクタやオーズッキと比較してもずっと派手だった。
しかもその光は変身し終えても消えはしない。
朱莉の変身するライダーはボディそのものが黄金に染められていたのである。
「仮面ライダーオーデンです!ねっ、明るいでしょう?」
(うわぁ……眩しすぎる)
仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈
仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音
仮面ライダーなでしこ / 真野恵里菜 敗退
仮面ライダーゲンキックンホッパー / 萩原舞
仮面ライダーオーデン / 竹内朱莉
最終更新:2012年08月31日 15:41