第10話「鳥の力」
突然現れたそのライダーの名は仮面ライダーパレット。
剣とカードを扱うライダーである。
オーデンとは対象的に銀の鎧を身にまとっており、
何よりも印象的なのはペン先のように尖った頭だ。
そのライダーの仮面はまるでスペードマークのように見える。
そしてゲンキックンは、そのライダーの声をよく知っていた。
「愛理……なの?」
「ヘァ‼カメンレアダパレットイアッダヨ!」
「ちょっとなに言ってるかわからない。」
同じ℃-uteのメンバーである鈴木愛理であることは分かったが、なんだか滑舌が悪すぎる。
確かに普段から愛理の滑舌は悪いが、今日は特に聴き取りにくい。
仮面で声が篭ってるにしても、ひどすぎるのだ。
(ひょっとして仮面ライダーになった副作用なのかな?こわっ!)
そんなやり取りをしているうちにオーデンが起き上がってくる。
パレットの登場にやや戸惑っている風だったが、
杖を構えていることから戦意が消えていないと分かる。
「鈴木さんがなんでこの戦いに?
……いいや、どっちにしろ倒すもん」
オーデンがタチアガールなり、パレットはゲンキックンをかばうように前に出た。
愛用する大剣も構えてるし、ヤル気マンマンだ。
「愛理……助けてくれるの?」
「ウェイ‼」
「だから意味わからないってば」
2対1なのでオーデンにとってはかなり分が悪い状況だ。
だが彼女の持つカードの中には、仲間を増やす効果を持つものもあったのだ。
そのためには防御重視のキャッチャーベントを解除する必要があるが、仕方ない。
『アドベント』
今回発揮したカードの能力は「モンスターの召喚」だ。
オーデンの後ろに黄金色をした巨鳥が現れる。そのゴールデンっぷりはオーデン以上である。
この黄金鳥の正式名称はゴルトフェニックスと言うが、オーデンは「楽天」と呼んでいる。
「本当はジャビットくんが良かったんですけどね、でもこの楽天は強いですよ。
さぁいけ楽天!鈴木さんを倒しちゃえ!!」
次から次へと新たな能力を出してくるオーデンに、ゲンキックンは頭がクラクラしてきてしまう。
瞬間移動に、攻撃重視のバットベントに、守備重視のキャッチャーベントに、そしてこの楽天だ。
ラスボス級の技の豊富さを目の前にしてゲンキックンは不満を感じずにはいられなかった。
ネガティブモードになったゲンキックンを見たパレットは、励ましの言葉をかける。
「アシンセッ、ジェテカッカラ!(安心して、絶対勝つから!)」
パレットは大剣の持ち手側に取り付けられているカードホルダーから、
まるでトランプのように見えるカードを1枚取り出した。
そして同じように大剣に搭載されているカードリーダーに読み込ませたのだ。
『スパークリング』
パレットが使用したのはスペード6、スパークリングのカードだ。
大剣からピンク色の電気が発生し楽天目掛けて飛んでいく。
金は導電率が高いからか、楽天は想定以上のダメージを受けてしまい
活躍の場もなく地に落ちることとなる。
「そんな……」
オーデンは楽天があっけなくやられたことにも驚いたが、
それ以上にパレットが自分と同じカード使いであることに衝撃を受けてしまう。
カードを使ったライダーは手軽に多彩な能力を発動させることが出来るために、
相手にすると厄介なのである。
オーデンの焦りを感じ取ったパレットは追撃を加えようと、さらにカードを使用する。
『スパークリング』『ドットドットスラッシュ』
電撃を出すスパークリングと、
斬撃を強化するスペード2、ドットドットスラッシュの合わせ技だ。
バチバチとスパークする電撃がパレットの大剣に帯電し、
鋭い斬撃とともにオーデンのもとへと放出されていく。
カード2枚を組み合わせた強力なこの技をパレットは「桃色片思い」と呼んでいる。
パレットの必殺技を直感的に危険だと感じ取ったのか、オーデンは攻撃の当たらない位置に瞬間移動をする。
楽天を一撃で落とす電撃の強化版なのだから回避するという判断は正しかったのだろう。
しかしオーデンはパレットの電撃を意識するあまり重要なことを忘れていた。
「愛理気をつけてね、タケちゃんワープするから」
ゲンキックンの声が聞こえた時にはオーデンは膝から崩れ落ちていた。
クロックアップしたゲンキックンに10発ほど蹴られてしまっていたのである。
キャッチャーベントを解除していたので被害は相当だ。
「うっ……しまった……」
オーデンはこれ以上ないくらいに焦っていた。
カード使いのパレットと高速移動のゲンキックンはどちらも強く、
自分はこの二人には適わないのではないかと思い始めているのだ。
こうなったらオーデンはとっておきを使うしかない。
ある人物に使用を禁じられていた、最後のカードを見せるしか勝ち目は無いのだ。
(これで逆転するしかないよ!サヨナラホームランぶちかましてやるっ!)
『ファイナルベント』
このファイナルベントは他のカードのように武器や防具を呼び出すものではない。
最後の必殺技を放つための莫大なエネルギーを生成するカードなのだ。
ファイナルベントの効果により楽天は生き返り、オーデンのもとに飛んでいく。
そしてオーデンの背中にドッキングするのだった。
これによりオーデンは大きな翼を持った戦士となる。
眩いばかりの光を発しながら空高くへと飛翔していく。
「ちょっと、あんなに高く飛ばれたら手出しできないじゃん!」
いくらゲンキックンがバッタ型ライダーだとしても鳥より高く跳ぶことは出来ない。
これからオーデンが何をするかは分からないが、ただ指をくわえて見ていることしか出来ないのだ。
しかしそんな中でもゲンキックンは(愛理なら何かやってくれる)のではないかと期待していた。
そしてパレット自身も策があるらしく、すでに2枚のカードを取り出していたのだった。
(……越えろ楽天イーグルス)
パレットの選んだ2枚のカードはスペード11とスペード13だった。
スペード11はワシの力を自身に付加する「融合」のカード
スペード13は他のカードの浸透力を高める「吸収」のカードだ。
この2枚の複合技がパレットを勝利に導く。
『フュージョンジャック、アブソーブキング』
融合と吸収の2枚のカードを使用することでパレットの姿が変わりだす。
銀色だった仮面と胸は金色になり、背中には刃のように鋭い羽が6枚生えている。
これが仮面ライダーパレット「ジャックフォーム」だ。
ワシの力を融合・吸収した、飛行能力に長けた形態なのである。
その変化にゲンキックンは声をあげて驚く。
「変わった!ズッキ以外にも変わる仮面ライダーっていたんだ」
「ジャックオーゥアヨ(ジャックフォームだよ)」
パレットはカブト虫のように羽を展開させると、オーデンのもとへ一目散に飛んでいく。
その飛行速度はワシや虫の比ではなく戦闘機のように速かった。
その接近にはオーデンも気づいたようで、パレットに狙いを定めていく。
(まずは鈴木さんを倒す!萩原さんはさっきのやり方で勝てるし!)
オーデンは急降下してパレットに蹴りかかった。
対してパレットは大剣を握りしめながら急上昇している。
2人の勢いはほぼ互角。
ならば重力の力を借りているオーデンのほうが有利であるように見える。
ところがオーデンは衝突直前にきてパレットの剣の異常に気づいてしまう。
(えっ、なんかバチバチしてるんだけど……)
大剣にはスパークリングによる電気がまだ帯電していたのだ。
金色のオーデンにとって、よく通る電撃は天敵である。
それが分かっても今さら回避することが出来ず、二人は正面衝突する。
「ウェエエエエエイ!」
パレットの斬撃は見事ヒットし、電撃とともに大きなダメージを与えることに成功する。
「ぜぇっ…ぜぇっ…ぜぇっ……」
オーデンは満身創痍になりながらもまだ倒れていなかった。
パレットにぶつかる寸前に瞬間移動をしたためギリギリ生き残ることが出来たのだ。
しかしもう戦える状態にはない。
腕が破壊されているのでオーデンにはカードを使う力も残されていないのだ。
出来ることはただ一つ瞬間移動のみ
「くそっ!……くそぉ!」
オーデンは目に涙を浮かべながら逃げていった。敗走という行為が相当悔しいのだろう。
そしてそんな彼女をゲンキックンとパレットは追いかけたりはしない。
二人もオーデン程では無いにせよ酷く破損しているし、疲弊しているのだ。
追いかけて他のライダーに遭遇してしまうよりはここでゆっくり休むほうがずっと良い。
変身を解除するなり、愛理は舞に話しかける。
「疲れたぁ……タケちゃん強かったねー」
「えっ、愛理滑舌よくなってるんだけど」
「マイちゃんほんと?毎日練習した甲斐があったよ~」
「いや滑舌がよくなったってのはそういう意味じゃなくて……まぁいいや」
変身を解除した途端、愛理の滑舌は普段通りに戻る。
やはり先ほどの滑舌の悪さはライダーシステムによる副作用によるものなのだろう。
「ところで愛理、どうしてゲンキックンがマイだって分かったの?」
「勉強したんだよぉ、ゲンキックンのモチーフの仮面ライダーを検索してさ、
どんな見た目をしてるのかとか、どんな能力を持ってるかとか調べたのさ」
「ほぇ~さすが愛理、勉強熱心だね。」
「いえいえ、そんなそんな」
オーデンはもう瞬間移動をするエネルギーも無いくらい逃げまくった。
それでも後ろから追ってくるかもしれないという不安感は拭えない。
それだけゲンキックンのクロックアップとパレットのジャックフォームは脅威だったのだ。
そのように思っていたオーデンの目の前に、安心出来る味方のライダーが登場する。
「あっ♪」
「あかりちゃん何やってるの?」
味方のライダーはシアンカラーとブラックの組み合わさったスーツを着ており、
顔に大きなカードが10枚つきささったような奇抜なデザインをしている。
彼女の名はディエッグ。仮面ライダーディエンドをモチーフとしたライダーだ。
ディエッグに出会うことでオーデンの緊張が一気に緩みだす。
「聞いてよ、萩原さんと戦ってたら鈴木さんもやってきたんだよ!
さすがに二人がかりはキツくてさ、ファイナルベント使っちゃったよ。
でもさ、それでも勝てなくて……」
「あかりちゃん」
「ん?」
「なんで約束を破るの、ファイナルベントはダメって言ったでしょ
そもそも勝手に他のライダーと戦うのも禁止だったよね?」
「あ……それは……」
ディエッグが冷たい声で突っ込んできたのでオーデンはまた緊張してしまう。
「戦う時は二人一緒にってあんなに言ったのに」
「ほら、その、少しでもライダーを倒して楽をさせてあげたかったんだよ」
「私が萩原さんを倒したかったの!」
「ひっ」
「鈴木さんも私が倒したいの!ファイナルベントとかやったら危ないでしょ!
あかりちゃんの仕事は私にトドメをささせる準備をすることでしょ!」
「ごめんよ、次からは気をつけ……」
「もういらない」
「えっ?」
「あかりちゃんのトドメを刺したくなったから、チームは解散。」
ディエッグは右手に銃を持ち、その銃にカードを挿入する。
いや、カードと呼ぶには少し語弊があるかもしれない。
ディエッグが持っていたのはカードではない、生写真だ。
℃-uteの矢島舞美の生写真を取り出し、銃に挿入したのだった。
この奇妙な行動こそがディエッグ特有の能力を発動するキーなのである。
『ハローライド・ヤジママイミ!」
銃口から放たれた光はホログラム映像のように人の姿を写しだす。
そこに写った姿は℃-uteのリーダーであり、竹内朱莉のいとこである矢島舞美そのものであった。
このホログラムはただのホログラムではない。実体を持つのである。
オーデンを敵と認識した矢島舞美は猛ダッシュで瀕死のオーデンに殴りかかった。
「や、やめて、それだけは辞めて」
「あかりちゃんが裏切ったのが悪い!矢島さんやっちゃってください!」
矢島舞美の姿をした光は人間のものとは思えぬパワーでオーデンのベルトを破壊する。
これにより仮面ライダーオーデンの脱落が決定。
他のライダーには以下のメールが送られることになったのだった。
「仮面ライダーオーデン」
が
「仮面ライダーディエッグ」
に
敗北したことをお伝えします。
仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈
仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音
仮面ライダーなでしこ / 真野恵里菜 敗退
仮面ライダーゲンキックンホッパー / 萩原舞
仮面ライダーオーデン / 竹内朱莉 敗退
仮面ライダーパレット / 鈴木愛理
仮面ライダーディエッグ / ? ? ?
最終更新:2012年08月31日 15:59