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第15話「現る鬼」


聖の発言に対して衣梨奈と香音は何も言えなかった。
あそこまで敵意を剥き出しにされたら勧誘など出来やしないのだ。
仲間になれないならその場で倒すという選択肢も有ったが、それも出来ない。
イクタもオーズッキもBigWとの戦いでかなりのダメージを負っているので、
逆に返り討ちにあってしまう可能性が高いからだ。
大破すればライダーの資格を剥奪されるという制約が二人を苦しめる。

(みずき……一緒に戦えたら絶対楽しいのに……)

衣梨奈は心から残念そうな顔をしながら聖から離れていく。
直前まで聖とともに戦うビジョンを描いていたのに、これからは倒す作戦を練らなくてはならないのだ。
ディエッグの能力の片鱗を見ることが出来たのが不幸中の幸いだろうか、
帰宅して自室に戻ってからも衣梨奈は対ディエッグの作戦を考え続ける。

(みずきはライダーを倒せば倒すほど強くなるけん、やるべきことは二つったい。
 ディエッグを明日にでも倒すか、他のライダーをみずきより先に倒すか)

まだたくさん残っているライダー達を倒すよりはディエッグ1体を倒すほうがまだ楽そうだ。
しかし聖の「二人を簡単に倒しちゃう」という言葉が耳に焼き付いて離れない。
あの状況であそこまで自信満々に言うということは確信が有るということだろう。
もしかしたら千奈美と同じようになでしこ戦を覗き見られていたのかもしれない。
となるとディエッグに立ち向かうのは危険だ。
衣梨奈はケータイを手にして、香音に電話をかける。

「かのんちゃん、明日はBigWにリベンジするとよ。
 もっと後にするつもりやったっちゃけど、今は確実に倒せる相手と戦いたい。」

「断る!」
「えぇ~なんでですかぁ~」

再戦を申し込みに行った衣梨奈だったが、早々に千奈美に断られてしまう。
手をバッテンの形にしながら拒否する千奈美の必死さは本物だった。

「だってまた2人がかりなんでしょ!一対一だったら良いよ。」
「2人で1人なんだから二対二でちょうどいいじゃないですかぁ~逃げるなんてかっこ悪いですよぉ」
「えりぽんだって逃げたじゃーん!」
「逃げましたけどぉ……それは言わないでください……」

頑なに戦おうとしない千奈美を前に、衣梨奈は参ってしまう。
BigWがディエッグに負けられては困るから再戦を依頼しているというのに、
千奈美はその思いを分かってくれないようだった。
これでは埒があかないので衣梨奈はせめて注意点だけでも伝えようとする。

「じゃあもう戦わなくて良いです。だけど、これだけはわかってください。
 みず(あ!名前言うのはまずいやん)」
「みず?」
「みず……色のライダーには絶対負けないでくださいね。
 負けそうになったら逃げてください!とにかく負けだけは絶対絶対ダメですよ!」
「いや、水色じゃなくても負けないけど……」

衣梨奈と千奈美がやんややんや話しているところに、メンバーが一人やってくる。
その人物はBerryz工房のキャプテン清水佐紀だった。
Berryzの楽屋でうるさく話しているのが気になったのだろう。

「ごめんね生田ちゃん、ウチの千奈美がうるさくて」
「うるさくない!」
「あ、清水さん!」

佐紀の登場に衣梨奈はドキリとする。
文字通り清水佐紀の名は「さき」なので、仮面ライダー裂鬼の候補だと衣梨奈は考えているのだ。
BigWと戦えないのならば裂鬼と戦うのも一つの手である。
佐紀が裂鬼である証拠を掴むためにストーキングをするのも衣梨奈は良いと思っている。

「清水さぁん♪今日はもう仕事終わりですよね?どこか行くんですかぁ?」
「舞とカラオケ行くつもりだけど……」
「へぇ~そうなんですかぁ~楽しいと良いですねぇ~クフフフフッ♪」
「う……うん、ごめんもう行くね」

気持ち悪く笑う衣梨奈は、誰がどう見ても何か企んでいる風だった。
佐紀もそんな衣梨奈を気味悪く感じたのかさっさと楽屋の外へ出て行ってしまう。
早速追跡しようとする衣梨奈だったが、その場を見ていた友理奈に首ねっこを掴まれる。

「ぐえ、熊井さん何するんですかぁ」
「二人ともさっきから声大きい!気をつけてよね。
 あとえりぽん、どうせキャプテンがライダーだと思ってるんでしょ」
「うぅ……だって怪しいじゃないですか」
「キャプテンはライダーじゃないよ。私もちぃも変身したところを見たことないもん。」

「えーそうなんですかー?」

手がかりを掴みかけたところで否定されたので衣梨奈はガックリきてしまう。
千奈美も友理奈に同調した発言をする。

「ずっと一緒なのに一度も変身したとこ見たことないんだよ、
 透明生命体とか倒さないといけないのに、ライダーにならないなんてありえないよね!
 だったらもうライダーじゃないんじゃないかっていう」
「だよねー」
「えーでもずっと一緒ってわけじゃないですよね、今も一緒じゃないし」
「ずっと一緒にいる時に変身しなかったから違うの!」
「そうだよ、ちぃの言う通りだよ。」
「ええ???」

衣梨奈は先輩二人の強い意見に押し負けてしまう。
釈然としないが、ここは話を合わせた方が良さそうだ。

「でもだったら仮面ライダー裂鬼は中島さんですかね、同じさきですし」

千奈美と友理奈は裂鬼を"さき"と読むことを知らなかったが、
すべて分かっていた風に首を縦に振る。

「私もなっきぃが怪しいと思ってた!」
「私も!」

その同調はまったく根拠の無いものであったが、
賛成された経験が少ない衣梨奈はなんだか嬉しくなり、舞い上がってしまう。

「おぉ~なんだか信憑性上がりましたね、じゃあ中島さんのとこに乗り込みましょうよ!」
「「おー!」」

同時刻、℃-uteの楽屋。
ライダーである愛理と舞は部屋の隅っこに固まり、ひっそりと作戦会議をしていた。
議題は仮面ライダーディエッグについてだ。

「舞ちゃん昨日のメール見た?ディエッグがハウガを倒したらしいけど」
「うん、あいつオーデンも横取りしてたよね……ほんと油断ならない」

既に2つの勝ち星をあげているディエッグは要注意。
こんな短時間で2回も勝つなんて戦い慣れしている証拠だ。
ディエッグとは1対1では戦いたくないと愛理も舞も思っていた。

「スマイレージとか、エッグに関係する子と仕事する時はなるべく2人で固まろうね。」
「うん、愛理がいたら安心」
「安心なんかしちゃだめだよ、ライダーバトルは何が起きるか分からないんだし」
「そっか、そだね……」

舞にとって仮面ライダーパレットである愛理は心強い味方であった。
しかし、それゆえに不安に感じることもある。
なぜ愛理が自分に味方してくれるのか、ということだ。
モベキマスのセンターを決める戦いでわざわざ味方を作る意味が分からないし、
そもそも愛理だったらこんなライダーバトルなんかしなくてもセンター付近を陣取れたはず。
不満も漏らさずバトルに参加して、しかも舞に協力してくれるなんていったい何を考えているのだろうか

(だけど、そんなこと聞けない)

舞が卑屈なことを言うと愛理は決まって複雑な表情をする。
おそらく愛理はそのような状況を居心地悪く感じているのだろう。
自分を助けてくれる相手を困らせるほど舞はひねくれてはいない。

「あ、もうこんな時間!?佐紀ちゃんとカラオケ行くんだった」
「えっ、さっき1人にならないって言ったのに」
「ごめん愛理!前から約束してたんだ」

舞と入れ違いに、衣梨奈と千奈美と友理奈が℃-uteの楽屋に突入する。
狙いは裂鬼容疑のある中島早貴だ。
一人座ってケータイをポチポチいじってる早貴を発見しては囲んでいく。
突然現れた3人に早貴が目を丸くしたのは言うまでもない。

「な、な、なんなの!?」
「なっきぃが裂鬼なんでしょー!」
「はい、確かにあたしはさきですけど……」
「認めたっちゃ!徳永さん!熊井さん!今中島さん認めましたよ!!」
「もう!意味わかんないこと言わないでよ!」

てい!てい!てーい!と早貴は3人の額にチョップを入れる。
いきなり犯人のような扱いをされたのでご立腹なのだ。
叱られた3人はシュンとしてしまい、部屋には矢島舞美の笑い声だけが響いている。
愛理はその様子を興味深そうに見物しており、
岡井千聖は今朝の遅刻について別室で叱られていた。

「ごめん遅れちゃった!」
「気にしないで、今来たとこだし」

舞は佐紀と合流して近場のカラオケへと向かっていく。
この2人は昨年の合同ゲキハロや合同コンサート以降、急速に親密になったのだ。
そのため一緒に遊びにいくことはしょっちゅうである。
舞はライダーバトルでは愛理と協力することで安心していたが、
プライベートの場では佐紀といることで落ち着くことが出来るのだ。

「今日はなーに歌おうかなー」
「ねぇ舞、ちょっと良いかな?」
「ん?どしたの?」

舞は佐紀が暗いトーンで喋りだすのでおかしく思う。
そして、直後の発言を聞いて凍りつくこととなる。

「舞ってゲンキックンだよね?」
「うぇ!?」

その言葉を知っているということは佐紀は仮面ライダーであるということ。
舞が事態を把握するよりも早く、佐紀は音叉を取り出す。

「私は仮面ライダー裂鬼、今日誘ったのも舞と戦いたかったからなんだ。
 愛理と一緒じゃ分が悪いけど……舞一人なら倒せるよ。」

佐紀は目をつぶり、ゆっくりと音叉を額へと持っていく。
この他のライダーとは一線を画す変身方法で佐紀は裂鬼になるのだ。







 仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈
 仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音
 仮面ライダーなでしこ / 真野恵里菜 敗退
 仮面ライダーゲンキックンホッパー / 萩原舞
 仮面ライダーオーデン / 竹内朱莉 敗退
 仮面ライダーパレット / 鈴木愛理
 仮面ライダーディエッグ / 譜久村聖
 仮面ライダーBig W  / 熊井友理奈&徳永千奈美
 仮面ライダーハウガ / 飯窪春菜 敗退
 仮面ライダー裂鬼 / 清水佐紀
















最終更新:2012年08月31日 16:41