第17話「危険な誘い・前編」
香音は連絡を待っていた。
衣梨奈が千奈美と友理奈に再戦の申し込みをしにいってからずっと待機しているのだ。
もうあれから二時間近く経つというのに衣梨奈はメールの一つも送ってこない。
いつ戦いが始まっても良いようにと準備し続けているためさすがに疲れてくる。
(遅いなぁ……えりちゃん何をしてるんだろ)
さらに数分待ったところで香音のケータイがブルブル震えだす。
衣梨奈からメールを受信したのだ。
「来た!…………中止?」
メールには今日の戦いが取り辞めになったことだけが書かれていた。
その他の詳細はまったく記載されていない。
衣梨奈のメールはいつもこうだ。ことライダーに関しては詳細が分からなさすぎるのである。
そのため香音はいつも不安感に苛まれてしまうのだ。
「中止になりそうだったら途中で教えてくれてもいいのに……」
香音はボソボソッと呟くが、すぐにそんな自分を反省する。
自分の知らないところで衣梨奈が長時間に渡る交渉をしている可能性があるので、
一方的に決めつけるのはよくないと思ったのだ。
香音は他人を疑いがちになっている自分を落ち着かせるために、近所のコーヒーショップに入る。
そして、そこで見たくなかった光景を目にしてしまう。
(熊井さん!……えりちゃんも、徳永さんもいる!)
衣梨奈と千奈美、友理奈がコーヒーを飲みながら楽しく談笑をしているのを香音は目撃する。
変装のため帽子をかぶってはいるが、間違いなくあの三人だ。
これから戦うはずだった先輩たちと衣梨奈はどうして一緒にいるのだろうか。
一息つくのならばどうして自分を誘ってはくれなかったのだろうか。
香音はもう何を信じればいいのか分からなくなってくる。
このようにして情緒が著しく不安定になっている時に、
香音は後ろから声をかけられる。
「ねぇ、鈴木香音ちゃんでしょ」
「……中島さん?」
♥
衣梨奈がいた店とは異なるコーヒーチェーン店。
気づけば香音は悩みの全てを中島早貴にぶちまけていた。
もちろんライダーバトルのことはボヤかしたが、ほとんど全て包み隠さず話したのである。
寂しい時に先輩が温かく迎えてくれたのでつい話しすぎてしまったのだろう。
「ぜんぶ早貴のおごり。」という一言も効いていたのかもしれない。
「香音ちゃんも苦労してるのねー」
「あ、ごめんなさい……なんか愚痴ばかり言っちゃって」
「ううん、いいのいいの気にしないで。
それに私もなんだか秘密を打ち明けたくなっちゃった。」
早貴はかばんの中から一本のベルトを取り出す。
そのベルトは明らかにライダーのベルトだ。
香音は店内だと言うのに大声を出してしまう。
「わぁ!!」
「シィーッ!大っきな声出さないの。」
「ごめんなさい……でもそれ、ひょっとして」
「そうよ、早貴も仮面ライダーの一人なの。」
早貴がライダーと分かった途端、香音はしまったという顔をして口に手を当てる。
気づかぬうちに衣梨奈がライダーであることを伝えたかもしれないので、焦ったのだ。
分かりやすい態度をとる香音を見て、早貴はクスリと微笑む。
「なーに心配してるの、生田ちゃんがライダーなことくらい最初から知ってたよ!」
「あ、イクタですもんね。」
「それに香音ちゃん、私は香音ちゃんの味方だよ。」
「ほ、本当ですか!?」
「うん、早貴さ、香音ちゃんと仲良くやれると思うんだよね……」
♠
「生田ちゃんとBigWは手を組んでるの。
香音ちゃんに急に冷たくなったのもあの二人の仕業なんだよ。」
「なんですって!それは本当ですか中島さん!?」
早貴の突然の密告に香音は転地がひっくり返るくらい驚いてしまう。
信じられない話だが、語る早貴の表情はいたって真剣だ。
「早貴はBigWを倒すために毎日後をつけてたんだ。
そこで偶然見ちゃったの……生田ちゃんがこっそり二人と会ってたのを」
「そんな!」
口では否定する香音だったが、心当たりが無いわけではない。
衣梨奈はライダーバトルの時に毎回作戦を立てているが、
その内容を殆ど教えてくれなかったのだ。
直近のBigW戦ではコブラメダルを使うという情報しかくれなかった。
これで本当に仲間と言えるのだろうか?
BigWと言えば、衣梨奈は優勢であったのに逃走で戦いを終わらせていた。
それは相手を倒せない理由があったからでは無いだろうか。
早貴の言う通り、裏で手を組んでいたからあえて倒さなかったのでは無いだろうか。
思い返せば思い返すほど不信感が強まってくる。
「許せないよね香音ちゃん」
「……はい」
「だったら見返すべきだよ!早貴がサポートしてあげる。
大丈夫、悪いようにはしないから。」
◆
ガールズトークを終えた衣梨奈と千奈美、友理奈らは上機嫌で帰り道を歩いている。
3人は早貴に追っ払われた時から意気投合したのだ。
「今日は楽しかったね!えりぽんなかなか面白いじゃん」
「オゴリだったらもっと楽しかったんですけどねぇ~」
「こらこら、先輩にたからないの」
3人は自分たちがライバルだということも忘れて楽しんでいた。
ここ最近張り詰めてばかりだったので、良い息抜きになったのだろう。
だがそのような楽しいひとときもすぐに終わってしまうものだ。
すべては道の途中で中島早貴に出会ったところから始まる。
「あーなっきぃだ!」
「中島さん何してるんですかぁ?」
早貴は何も言わず変身ベルトを見せ付ける。
その瞬間、3人は戦慄する。
「なっきぃ……やっぱりなっきぃが仮面ライダー裂鬼だったんだ。」
空気が一変したことを感じ取った衣梨奈はベルトとナックルをすぐに用意する。
千奈美と友理奈だってそれぞれのメモリを握っている。
4人が4人とも臨戦態勢に入っているのだ。
早貴はケータイを取り出すと、9・1・0の順にボタンを押す。
そしてそのケータイをベルトにはめて、「変身」と一言呟いた。
その変身行動を見て衣梨奈はハッとする。
(中島さんは……裂鬼じゃない!)
早貴は黒のボディに黄色のラインが入った姿に変身した。
そのラインは顔面でXのようにクロスしている。
いや、Xよりはむしろχ(カイ)に近い。
早貴がさっそく変身したので、千奈美と友理奈もBigWへと変身する。
千奈美の身体をベースとした通常通りの変身だ。
メモリは緑のチャチャと紫のジンギスカンを使用している。
「仮面ライダー裂鬼って名前の割には鬼っぽくないよね。」
「うん、どっちかと言えば悪魔みたい」
とぼけた会話をする千奈美と友理奈だが、やるべきことはしっかりとやる二人だ。
チャチャの疾風に乗りながら速いスピードで早貴に殴りかかる。
「裂鬼じゃないってのに!」
早貴は黄色く輝く剣を取り出し、BigWの攻撃をすべて受けきった。
その剣は早貴の愛用する武器であるカイザブレイガンだ。
黄色のサイリウムが大きくなってような見た目をしている。
BigWは自身の攻撃が防がれただけでなく、拳を剣で傷つけられたので焦りだしてしまう。
「さ、裂鬼じゃないってなら、なっきぃはなんなの!!」
「中島さんは仮面ライダー910ですよ」
「「えりぽん!?」」
衣梨奈はいつの間にかイクタに変身していた。
その右手には早貴と同じように愛用の剣イクタカリバーが握られている。
「徳永さん熊井さんここは手を組みましょう、カイザモチーフの910は確かに強いですけど、
えりとBigWが力を合わせれば勝てない敵じゃなかとです。
チームワークを発揮すれば絶対勝てますよ!」
「やっぱり手を組んでたんだ!!」
「えっ?」
香音の声が聞こえたと思ったその瞬間、イクタは顔面を勢いよく地面に押し付けられてしまう。
犯人はすぐ後ろにいたオーズッキだ。
クマ・ゴリラ・ゾウの重量系コンボでイクタを後ろからぶん殴ったのである。
仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈
仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音
仮面ライダーなでしこ / 真野恵里菜 敗退
仮面ライダーゲンキックンホッパー / 萩原舞
仮面ライダーオーデン / 竹内朱莉 敗退
仮面ライダーパレット / 鈴木愛理
仮面ライダーディエッグ / 譜久村聖
仮面ライダーBig W / 熊井友理奈&徳永千奈美
仮面ライダーハウガ / 飯窪春菜 敗退
仮面ライダー裂鬼 / 清水佐紀
仮面ライダー910 / 中島早貴
最終更新:2012年08月31日 17:02