第19話「ガール・ミーツ・ピーチ」
オーズッキが脱落した翌日。
聖は興奮した風に目を見開いていた。
そして衣梨奈の腕を無理矢理引っ張りだす。
「えりぽん、今すぐ中島さんを倒しにいこう」
「ちょ、ちょっとみずきぃ!」
聖は香音を先に倒されてしまったことに怒っているのである。
同期の夢を潰す楽しみを奪われてしまったので、
せめて先輩の泣き顔を眺めて悦に浸らないと気が済まないのだ。
むしろそっちの方がアリかもと思っている。
だが聖も衣梨奈もこれから仕事だ。
2011に加入した娘。9、10期とスマイレージ2期の合同イベントの打ち合わせが控えている。
メンバーのリーダー格である聖がサボってしまったら締まるものも締まらなくなるだろう。
「ほらみずき落ち着いて、別にそんな急がんでもよかよ」
「えりぽんは悔しくないの!」
「悔しかよ、でも、きっと仇を討ってくれるっちゃん」
「カタキ?」
衣梨奈は千奈美と友理奈を信頼していた。
あの二人ならきっとやってくれると信じているのである。
穏やかに微笑む衣梨奈を見て、聖も考えを改める。
「わかったよ、みずきお仕事する。」
「それがいいっちゃ」
これで事態は治まったと思われた。
しかし、衣梨奈は先ほどの聖の発言に違和感を覚えていたのだ。
聞くか聞くまいか迷ったが、どうしても気になるため質問してしまう。
「みずき、どうして910が中島さんやって知っとるん?」
「えっ、それは……ハロプロ大好きだから、かな?」
聖は以前にも全てのライダーの正体を暴いたと言っていた。
彼女くらいハロプロに詳しければ当然のことだと衣梨奈は納得していたが、
よく考えるとどうもおかしい。
「910やったら矢島さんでもええやん、鈴木さんでも、岡井さんでも、萩原さんでも……
ひょっとしたら9、10期の誰かかもしれん。
やけん、みずきは一発で中島さんって当てよった……どういうことなの!?」
「う……」
聖はバツが悪そうな顔をしていた。
そして決して衣梨奈の質問に答えることもなく、
「ほら仕事……」
と言いながらそそくさと歩いていってしまったのだ。
広めの会議室に到着したところで、衣梨奈と聖は香音と鉢合わせる。
しかも香音の後ろには春菜と朱莉までいた。
奇しくも全員が元ライダーだと衣梨奈が思ってたところで、香音が深く頭を下げて謝り出す。
それもかなりの大声だ。
「えりちゃんごめんなさい!」
「えぇ!?ちょっとかのんちゃん!」
次に香音と出会う時はこんな感じになるだろうと予測してはいたが、
周りに人もいる中で謝られたので衣梨奈は恥ずかしくなってしまう。
香音の後ろでは春菜がニコニコしながら「頑張ってくださいー」と小声で応援している。
朱莉は何故かビクビクと怯えている風だったが、
彼女も同様に香音を応援しているように見える。
(なるほど、えりに謝るために皆の力を借りたっちゃね。)
香音の涙ぐましい努力に気づいた衣梨奈はとても感動する。
全身全霊で謝ろうとするその姿がとてもいじらしく見えたのだ。
「かのんちゃんどうして?かのんちゃんなんも悪くないっちゃろ」
「だってえりちゃんを裏切ったし、コンボ使うなーって言われてたのにたくさん使っちゃったし、それに……」
「それに?」
「もうえりちゃんと戦うことが出来なくなっちゃった……
二人で最終決戦まで行く約束だったのに、守れなくて本当にごめん。」
香音が自分のことではなく、衣梨奈を助けられなかったことを悔やんでいたと知り、
衣梨奈は目頭が熱くなってくる。
「かのんちゃん、本当にもう気にせんでいいっちゃよ」
「でも!これでえりちゃんが不利になったら……」
「だったら、応援してくれたら嬉しいっちゃん」
「応援?」
応援と聞いた香音はキョトンとしてしまう。
願いがあまりに単純なものであったからだ。
「香音ちゃんが応援してくれるなら一人でも頑張れると。
負けそうな時も、きばれる気がするっちゃん!」
「そっか、分かった、うん!応援する!」
衣梨奈が心からそう願っているように感じた香音は笑顔で承認する。
二人の関係がよくなったので、周りのみんなも気持ちが穏やかになる。
それに触発されたのか、春菜までテンションが上がってきたようだった。
「私も譜久村さん応援してますよ!絶対優勝してくださいね!」
「うん、はるなんありがとう……で、あかりちゃんは?」
「うぇっ!もちろん応援して……ます。」
「ふふふ、あかりちゃんありがと」
負けた二人が応援を表明したのを見て、香音も聖に声をかける。
「私はみずきちゃんも応援するね、頑張ってね!」
「わぁ、かのんちゃんありがとう」
同期を応援するのは至極当然のことなのだが、それを聞いた衣理奈はギョッとしてしまう。
「かのんちゃん!えりを応援するんじゃなかと!?」
「うん、えりちゃんを応援するよ。でもみずきちゃんも応援するんだよ。同期だし!」
「同期っちゃけど……う~ん」
つい最近まで聖は自分達を狙う敵であったので、簡単に応援に回るのはおかしいかもしれない。
だが香音はライダーでなくなることでそのようなシガラミから開放されたのである。
今の香音は無敵とも言える。
「えりちゃん!ライダーである前に仲間なんだからもっと仲良くしなくちゃダメだよ!」
「仲悪くないとよ、でもそれとこれとは話が別で……」
「みずきはかのんちゃんが両方応援してくれて嬉しいよ。二人とも勝てたら良いね。」
「でもみずき、えりを倒すっちゃろ?」
「うん♪」
「こわっ!」
香音は衣梨奈と聖の肩を抱き寄せ、また大声を出す。
そこにはもう申し訳なさそうな顔は見つからない。
「よし!今日は三人でお昼を食べに行こうよ!
そして、今後のことを話し合おう!」
香音たちが話しているのを遠巻きに見ていた鞘師里保がトコトコと向かってくる。
何を話しているのか分からなかったが、
ご飯の約束をしているようだったので興味を持ったのだ。
「お昼みんなで食べるの?私も行きたい。」
突然里保がやってきたので三人は顔を見合わせる。
そしてプッと噴き出し、笑顔で断りだす。
「りほちゃんごめん!また今度ね!」
「りほには内緒の話やけんねー」
「ちょっと無理だよね」
里保は心の傷を負ってしまう。
打ち合わせも終わり、衣梨奈と香音と聖の三人はランチに向かう。
新人とは言え三人ともれっきとした芸能人であるので、
一般人に見つからぬようしっかりと帽子をかぶって裏通りを歩いて行く。
つまり彼女らは今、多少派手な行動をとっても見つからない状況に有るわけだ。
それが今回のバトルを引き起こすことになる。
「うぉ~~~~っ!!」
突然叫び声が聞こえてきたので三人は警戒する。
声は上空から聞こえてくるようだ。
上を向いてみると、今までみたことないライダーが降ってきていた。
地面に着地するや、両手を広げポーズを取り始める。
「モモ、参上!」
いきなりのことだったので、三人は呆気に取られてしまう。
何がなんだか把握できてないが、
三人が三人共通して分かったことが一つある。
それは、このライダーの声が嗣永桃子のものだということだ。
一度聞けば忘れぬ声質を聞いて、衣梨奈は納得する。
(なるほど、仮面ライダーめん王は嗣永さんやったんやね。)
全体的に赤と黒を基調としたボディカラー。
胸を上から下へ縦断する、線路を模した銀のライン。
割れた桃のような形状をした真っ赤な複眼。
その姿はまさに仮面ライダー電王そのものだった。
リストに載っていた中で言えば仮面ライダーめん王に当たるのだろう。
正体も分かったので心置きなく変身しようとした衣梨奈だったが、
聖が何やらブツブツ呟いていて様子がおかしいことに気づく。
「違う、嗣永さんがライダーなわけない……
どうして?いったい何がどうなってるの?……わからない!」
聖は桃子では無いと言っているが、どう聞いても桃子の声だ。
一番桃子が好きなはずの聖が取り乱しているので香音はおかしく思う。
「みずきちゃん?あれは嗣永さんでしょ……」
「香音ちゃん、も・も・ち」
「あ、ももちさんごめんなさい」
ライダースーツを着ていてもももちはももちだった。
小指は立っているし、なんかクネクネしてるし、ピンク全開である。
だが聖にはそれが認められないらしい。
急いでディエッグへの変身動作を開始する。
ディエッグはベルトでは変身しない。
普段ハロメンを召喚する時に使用する銃で変身するのだ。
ディエッグが写された生写真を挿入する。
「変身!」
変身すると同時にディエッグは嗣永桃子の生写真を銃に挿入する。
桃子の映像を具現化しようとしているのだ。
『ハローライド・ツグナガモモコ!』
銃から撃ちだされた光はみるみるうちに桃子の姿に変わっていく。
映像の桃子はよくテレビで見るようなフリフリ衣装を着ており、
めん王に負けず劣らずプリプリしている。
ディエッグは自分が呼び出したにもかかわらず見惚れてしまう。
「はぁ~やっぱり嗣永さん可愛い~……じゃなかった!あなたはやはり偽物ね!!」
ディエッグはめん王に向かってビシッと指をさす。
いきなり偽物扱いされたのでめん王はご立腹だ。
「ちょっとフクちゃん!どっちかと言えばその映像のほうが偽物でしょ!!
まぁ確かにそっちのももちも可愛いから、本物と間違える気持ちも分かるけどぉ……」
「嗣永さんの声で喋るな!嗣永さん、偽物をやっつけてください!!」
ディエッグが命令することで桃子の映像がめん王に襲いかかる。
その小指はいつもより鋭くなっており、めん王に突き刺そうとしていた。
めん王も剣を取り出し、映像のピンキードリルを必死で防いでいる。
そんなももちVSももちの光景を見て、香音は口をあんぐりと開けていた。
「嗣永さんが現れちゃった……生身で戦っちゃってるし……」
「信じられんけど、みずきやったらありえる……
みずきはディエンドモチーフみたいやしね。」
「でもみずきちゃん本当に何言ってるんだろう、どう考えてもアレは嗣永さんなのに」
「いや、えりにはなんとなく分かるっちゃん。
めん王は電王モチーフみたいやしね。」
「え?どういうこと?」
「まだ確信はなかとよ……ちょっと様子を見るっちゃん」
衣梨奈は変身だけして、ディエッグとめん王の戦いを離れた距離から傍観する。
未知の敵であるめん王のデータをとるためにディエッグにオトリになってもらうのだ。
ちなみに衣梨奈の中ではディエッグは未だに敵のままなので、
オトリ作戦を実行してもまったく心が痛まないのである。
「たぶんあとちょっとでめん王が嗣永さんじゃ無くなるとよ」
「え?……」
イクタが示した先ではめん王がディエッグ相手に苦戦を強いられていた。
桃子の映像は攻撃パターンが多彩であり、
ピンキードリル、ももアタック、こゆビームなどの技でめん王を苦しめていたのだ。
そこにディエッグの援護射撃も加わるので、剣一本しか武器の無いめん王は太刀打ち出来ない。
すでに2体のライダーを倒したディエッグにとってこの程度は敵では無いのである。
「もぉ~自分が相手だとやりにくいー!フクちゃんなんとかしてよぉ」
「偽者うるさい!」
「しょうがないな、じゃあここは桃の必殺技パート2を使うしか……あぐっ!!
うぐぐぐ……ちょ、ちょっと、今はももが戦ってるんだから待っててよ……」
「真剣勝負なのに待つわけないでしょう!」
「いや、その、フクちゃんに言ったわけじゃなくて……あぁああああ!!!」
苦戦こそしても喋りは順調だっためん王が突然苦しみだす。
イクタがその状況にニヤリとしたところで、めん王の姿が変わっていく。
これはハウガと同様のアイテムを使用しないフォームチェンジだ。
めん王の赤の鎧が剥がされ、代わりに黄色の鎧が装着されていく。
顔も大きく変わり、漢字の「金」の文字のような仮面になっている。
大きく変化したので赤の姿の時の面影は殆どない。
そして何より違うのはその声だった。
「後輩と戦わなきゃならないなんて、泣けるねぇ~」
「や、矢島さん!?」
黄色くなっためん王の声は間違いなく矢島舞美のものであった。
ディエッグはますます混乱してしまう。
仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈
仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音 敗退
仮面ライダーなでしこ / 真野恵里菜 敗退
仮面ライダーゲンキックンホッパー / 萩原舞
仮面ライダーオーデン / 竹内朱莉 敗退
仮面ライダーパレット / 鈴木愛理
仮面ライダーディエッグ / 譜久村聖
仮面ライダーBig W / 熊井友理奈&徳永千奈美
仮面ライダーハウガ / 飯窪春菜 敗退
仮面ライダー裂鬼 / 清水佐紀
仮面ライダー910 / 中島早貴
仮面ライダーめん王 / ? ? ?
最終更新:2012年08月31日 17:22