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第24話「死闘を制す者」


先手を打ったのは℃-ute側だ。
はじめからこう出ようと決めていたのである。
ゲンキックンはいつものように腰にあるボタンを押す。

『クロックアップ!』

それと同じタイミングでパレットも1枚のカードを読み込ませる。
そのカードはスペード9。

『キューティーサーキット!』

キューティーサーキットはマッハの速度で突進する必殺技だ。
あまりに速く動くので、自分で自分の動きを知覚出来ないという欠点があるが
これでゲンキックンに匹敵するスピードを得ることが出来る。

「愛理、狙いはBigWだからね」

ゆっくりとした世界で、誰にも聞こえることなくゲンキックンが言う。
裂鬼には音のバリアが貼られているため
先にBigWのほうを叩こうと打ち合わせしていたのである。
その目論見は正しかったようで、BigWへの攻撃が見事成功する。
ゲンキックンは腹に強烈な蹴りを入れ、パレットは全身で体当たりをしたのだ。
一発目が上手く決まったのでゲンキックンはたいへん喜ぶ。

「やったあ!作戦通り!」

ゲンキックンは幸先良いと感じているようだが、そう上手くいくはずがなかった。
Berryzのブレインである裂鬼がタダで攻撃させてくれる訳が無いのである。
ゲンキックンとパレットは背後から衝撃波が来るのを感じる。

「げっ!これはあの時の……」

衝撃波はもちろん裂鬼のキーボードから発せられる音波だ。
裂鬼はゲンキックンらの行動を予想しており、
あらかじめBigWに向けて衝撃波を放っていたのだ。

後ろから音の壁がぶつかるだけでダメージにはなるが、
裂鬼はその更に先を考えていた。
その作戦は衝撃波が℃-uteだけでなくBigWにもぶつかるという点がミソになる。
BigWの「チャチャ」は風を操る力。
風を操るということは即ち空気を操るということ。
空気の振動を敏感に感じ取り、それと同じ振動を逆方向へ発することなど朝飯前だ。
つまり、BigWも音を発することが出来るということになる。
裂鬼側とBigW側の両方から発せられる音にゲンキックンとパレットは挟まれてしまう。

「うああああああああ!!で、出れない!」

双方向から迫り来る音の壁にゲンキックンはもがき苦しむ。
時をゆっくりに出来る時間は限られているのに、こでは何も出来ない。
結局足止めされたままクロックアップが終了してしまった。
すべてが作戦通りにいったので、BigWの二人は驚く。

(凄い、全部キャプテンの言った通りだ……)
(ちょっと攻撃受けたけど、これくらい簡単に返せる!)

左担当の千奈美は紫のジンギスカンメモリから、銀のファイポメモリに変更する。
闘士のメモリであるファイポメモリは全身を鉄の鎧で纏っており、長い鉄棒を武器とする。
風で音を発生させつつ鉄の棒で叩くという作戦を実行しようとしているのだ。

(まずい!)

それに気づいた910が裂鬼の方へと走っていく。
音の壁に挟まれて二人が行動出来ないのならば、裂鬼かBigWのどちらかを止めれば良いと考えたのだ。
それならば音の発生源である裂鬼のキーボードをはたき落とすのが手っ取り早い。
少なくとも演奏をちょっとでも邪魔出来れば910の勝利だと思っていた。
だが裂鬼は910がそう来るのも想定済みである。
右手だけで演奏するライドハンド奏法をしながら、左手で複数枚のCDを取り出した。
そのCDの内訳は「行け 行け モンキーダンス」が3枚、「1st 超ベリーズ」が6枚だ。

裂鬼の音に反応したCDはその形を変形させ、動物のように変わっていく。
それらはディスクアニマルと呼ばれる裂鬼の忠実なしもべだ。

「オドリザル!ヒッパリダコ!イナカゼミ!がんばって910を食い止めて!!」

猿型、蛸型、蝉型のディスクアニマルは上から下から各方向から910の進撃を阻止する。
それぞれの力は微弱だが、行動が予測できぬためとても邪魔だ。

「なにこれ!もぉ~うっとおしい!!こんなの早貴聞いてない!」

剣で斬ろうとしても、足で蹴ろうとしてもチョコマカ動くので910は苦戦する。
ディスクアニマルの存在はゲンキックンから聞いていなかったので、
始めてみる敵に戸惑っているのだろう。
そんな910を見て佐紀は勝率が上がったことを確信する。

(なっきぃ、あの子はこの戦いの本質を分かってないね。)

いかに相手の知らぬ隠し球を活用するか、佐紀はこの戦いの本質をそう見抜いていた。
お互いに手の内がバレているのならまだ知られていない手段を使うまで。
それを理解していない910は勝ちあがれないと判断し、
裂鬼は演奏のほうに力を入れはじめる。
音の振動がビリビリと強くなったのを感じ、必殺技の準備を始める。

「いくよ熊井ちゃん!」
「うん!」

左の千奈美は鉄の棒にファイポメモリを差し込む。
こうして武器に挿入することで、メモリの力を最大限に引き出すことが出来るのだ。

『マキシマムドライブ!』
「「ファイポコースター!!」」

BigWは疾風の速度で鉄棒をゲンキックンとパレットにぶつけようとする。
それも1回殴るだけでは終わらない。
ジェットコースターのように旋回しながら何回も叩きつけるつもりなのだ。


音に挟まれて動きにくい中、パレットはやっとの思いで1枚のトランプを読み取っていた。
そのトランプはスペードの7「ロックンボーノ」だ。
トランプの効果を発揮しながら、ゲンキックンを護るように前へと出て行く。

『ロックンボーノ』

全身を硬化させる能力を持つトランプで、パレットはBigWの攻撃を全て受け止める。
1発、2発、3発4発5発と素早い打撃が雨あられのように飛んできたが
ロックンボーノにより硬くなったパレットは全て耐え切ってみせた。
それでもダメージはかなり大きいが、パレットは普段通り立ってみせている。
そして指で上を指し示しながらゲンキックンに一言囁いた。

「マイヂャン、オゥヨ!」
(えっ?上行くってこと?)

パレットは以前ゲンキックンが音の壁を破った時の話を思い出していた。
それはライダーJAUPのように勢いよく突っ込めば通過出来るというものだ。
パレットはこれから最高速の飛行で突き抜けようとしているのである。

『フュージョンジャック』
『アブソーブキング』

融合の効果を持つスペード11と、吸収の効果を持つスペード13を同時に使用することで
黄金の鷲と融合した姿「ジャックフォーム」へと変身する。
パレットの意図を理解したゲンキックンも脚に力を入れる。飛翔の準備はバッチリだ。

「ライダーJAUP!」

ジャックフォームとライダーJAUPの跳ぶ勢いは凄まじく、
二重に重なった音の壁だろうとコナゴナに破壊してみせる。
跳んだ二人の現在位置は既にはるかに高い空だ。
ここから二人同時にライダーキックを放てばBigWはひとたまりも無いだろう。

「ライダーキック!」
「ウェーーーーイ!!」

BigWは左も右も焦っていた。
高速で落下する2体の蹴りをまともに受ければこんどこそ大破しかねないからだ。
だからこそ、ここでしくじるわけにはいかない。
BigWは裂鬼の放つ音の反射を取りやめ、落下する二人に意識を集中する。
その間は音の衝撃波をモロに受けることになるが、それくらい仕方ない。

「熊井ちゃん、頑張って!」
「任せて……これは私の仕事」

ゲンキックンも、パレットも、どちらも高速で落下しながらBigWに蹴りを放っていた。
上空高いところから蹴りだしたので着弾まで時間はかかるが、だんだんと加速している。
そしてあるところまで達したところで、二人は自分たちのスピードが急激に速まったのを感じる。
まるで車でアクセルを勢いよく踏んだような、そんな急加速だ。

(なにこれ!?ちょ、勢い良すぎ!)

ゲンキックンは混乱していたが、鷲と融合しているパレットはその原因に気づいていた。
この加速は激しい下降気流によるものだ。
異常な気流はBigWの「チャチャメモリ」が起こしたものだと気づいていながらも
パレットは風に流されたまま身動きをとることが出来なかった。

「愛理、舞、二人とも落ちちゃえばいいんだ」

加速が最大限に高まる地面スレスレの地点で友理奈はさらに風を変える。
その風はBigWのいない、まったく関係のないところに吹いている。
つまりゲンキックンとパレットは超高速で地面に激突することとなったのだ。

「ア゛ッ!」
「ぎゃ!」

異常気流に気づいたパレットは翼を巧みに利用して着地のショックを和らげることが出来たが
ゲンキックンはそうもいかなかった。地面に右脚から突っ込む形になっている。
おかげで右脚には無数のヒビが入ってしまい、蹴りの威力を高めるアンカージャッキもバキバキに曲がっている。
これまで受けたダメージを考えたらそれも当然だろう。
パレットは次の手をすぐに考え始めた。
はやくしなくてはまた音の壁に阻まれてしまう。
自分はともかくゲンキックンはもう跳べないかもしれないので、急がなくてはならないのだ。
ここで、パレットはある違和感を覚える。
ほぼ同じ時にBigWも異変に気づく。

(マイちゃん……どこいったの?)

落下したはずのゲンキックンが居ない。
これはパレットにとってもBigWにとっても悪いニュースだった。
彼女が消えることで状況がどう転ぶか分からないからだ。
そして、この消滅事件が他所にも影響し始める。
はじめに異変が起きたのは910の近辺だ。

(あら……全部壊れちゃった)

仮面ライダー910とじゃれていたディスクアニマル達がすべて壊されていた。
これは910が倒したというわけではない、いつの間にか壊れていたのだ。
ついちょっと前まで邪魔していた物が一気に機能を停止するので910は驚く。

(あ、じゃあ佐紀ちゃん倒さないと!)

おかしな事態についボーッとしてしまったが、当初の目的は裂鬼の撃破だ。
やっと邪魔者に開放されたので裂鬼の方に顔を向けるが、
ここで910はさらに驚かされることになる。

「えっ……どういうこと?……」

なんと消えたはずのゲンキックンホッパーが裂鬼のキーボードに蹴りを入れていたのだ。
戦況の要となるキーボードに、今にも壊れそうなボロボロの脚を突き刺しているのである。
前触れもなく突然現れたゲンキックンに裂鬼は衝撃を受ける。

「なんで……どうやってここまで来たの?
あのディスクアニマルも舞がやったの?……高速移動で?」

裂鬼の音壁には弱点があった。
裂鬼は挟み撃ちの効果を強めるため、BigWのいる方向への音を強めていた。
そのため他の方向への衝撃波が疎かになり、特に裂鬼の背後は無防備になっていたのである。
ゲンキックンはそこから入った、という単純な話である。
だが裂鬼にはそれでも納得がいかない。
音の弱いところをゲンキックンが知っていたのは何故なのか分からないのだ。
ゆっくりと試行錯誤して考えれば分かるかもしれないが、ゲンキックンは一瞬しか動いていない。

「たった一瞬で、そんな思いつくわけじゃない!!」

「一瞬じゃないよ、マイにはたくさん時間があったよ」
「えっ!?」
「佐紀ちゃん読み違えてる、マイの能力は高速移動じゃないんだから」

そう言いながらゲンキックンは脚に力を入れてキーボードを蹴り抜いた。
その後すぐに裂鬼に殴られることで、スーツが完全に大破してしまうが
それでも萩原舞は良かった。
このキーボードを壊すことが自軍の勝利に大きく貢献することを知っていたからだ。
個人としては負けたが、チームは勝てるはず。
それに、クロックアップが何なのか裂鬼が分かってなかったことが舞には気分の良い事実だった。
高速移動じゃない、時を遅くしてるんだよ。
そう言ってあげたい気分だったがそれは出来ない。
スーツが完全に弾け飛んでしまったため、バトルから退かなくてはならないからだ。

(マイがセンターになれないことくらい分かってたよ。だから悔しくない。
でも、愛理かなっきぃには勝って欲しいなあ……)

キーボードが破壊されたことで音撃が封じられてしまった。
これはベリーズチームにとって大きな痛手だ。
このままでは音の衝撃波を作ることが出来ないし、裂鬼の戦闘能力が半減してしまう。
しかも、今現在910が裂鬼に接近している真っ最中だ。
このまま戦わせてはまずいと、BigWは風に乗って910の前に立ちはだかる。

「キャプテンは愛理を倒して!もう少しで倒せるはずだから!」

ショックでクラクラきていた裂鬼は千奈美の声を聞いてハッとする。
そして言われた通りにパレットのもとへと走っていく

「分かったよ千奈美!でも役立たず扱いしないで!!
音撃戦士は楽器が無くても強いんだから……鍛えてますから。」

状況の変化に戸惑っているのはベリ側だけではない。
910も困惑していた。
その困惑をなんとかするため、パレットに向けて声を張り上げる。

「ちょっと愛理!どうするの!?これでいいの?」
「ニェーテ!ニェーテイェーオ!(逃げて!逃げていいよ!)」
「何言ってるか分からない!そのまま戦うからね!お話終わり!」
「アウゥ……」

話し終えたパレットはすぐに臨戦体制をとる。
衝撃波や異常気象のせいでダメージを負っているが、寝ていられない。
あそこまでしてくれた舞のために勝たなくてはならないのだ。

(マイちゃんを負けさせるつもりはなかった……本当にごめん。
ここでなっきぃまでやられちゃったら計画がパーになっちゃうよ……
だから、佐紀ちゃんには悪いけどすぐに倒させてもらうよ!)

パレットは以前オーデンと戦う時に使ったスペードの6を読み込ませていた。
トランプの効果は「スパークリング」、雷撃で攻撃しようというのだ。

『スパークリング』
「ウァエィーーーー!!」

オーデンには効果覿面だったこの技だが、
裂鬼にはいまいち効かなかったようだ。
それどころか、その雷を拳にまとい、パレットに殴りかかってくる。

「えぃ!』
「ウアッ!!」

自分の攻撃がそのまま返ってきたので、パレットは失敗を認めざるをえなかった。
そんなパレットに余裕を見せつけるように、裂鬼は自分の特徴を紹介しだした。
言葉で動揺させ、パレットのパフォーマンスを落とすのが狙いなのだ。

「勘違いしてるみたいだけど、私は音の戦士じゃない。
音と雷の戦士よ!!裂ける音と轟く雷の両方が私の味方。
この自己分析にもう読み違いはない!」

雷の戦士なので雷撃は効果薄。当然のことだ。
つまりスパークリングは使えない。
ロッキンボーノとキューティーサーキットはデメリットが大きいので多用できない。
ジャックフォームの力で飛ぼうにもまた気流弄られたらピンチだ。
パレットはどう戦えば良いのか分からなくなってしまう。

「なっきぃ、やっと戦えるね。」

メモリをボンバーに変えながら友理奈は話しかける。
千奈美もファイポからジンギスカンに戻している。
今のボンバージンギスカンフォームは高い火力で格闘技を繰り出す力強いフォームだ。
基礎能力が高いとされている910に対抗するためこの姿になったのだろう。

「ふふ、ひょっとして香音ちゃんのことで怒ってるとか?」
「ううん、全然」
「あら、そう」
「でもね、後輩に頼られてすっごく嬉しいんだ。なっきぃにも簡単に勝てそう。」

BigWはすぐさま910に殴りかかった。
文字通り爆発する危険なパンチだ。
だが910だってそんな攻撃を簡単には貰わない。
日頃から鍛えているダンスの要領でヒラリヒラリと交わしていく。
そして隙を見ては剣で斬りかかるのだった。

「うっ……」
「ガチでやれば勝てると思った!?残念、早貴は普通に強いのよ!」

早貴が追撃を入れようとしたところでBigWは突然しゃがみだした。
攻撃が効いているのかと思われたが、そうではない。
910に攻撃を当てるため、千奈美が咄嗟に思いついた案なのだ。
爆発力を持った拳で地面を思いっきり殴りだす。

「これなら避けられないでしょー!!」

たちまち地面が大爆発し、砂やら石やらがあたりに飛び散っていく。
飛ぶ石が910とBigWの鎧を破壊する凶器と化していたが、真に怖いのは土埃だ。
視界を完全にシャットアウトされたため、910はどこから攻撃が来るのか分からなくなってしまう。
これだとBigWも等しく見えなくなるが、彼女らにはこれで良かったのだ。
なんせ辺り一体を満遍なく焼き尽くすつもりなのだから

「「ファイアー!!」」

BigWはいつの間にか、ジンギスカンメモリをダンガンメモリに変えていた。
よって今のBigWはボンバーダンガンフォーム。
爆発力のある火炎放射器で敵も自分も問わず焼き尽くす形態だ。
この土埃の中、迫りくる炎から逃げる手段は皆無と言える。
910はただただ焼き尽くされてしまう。

(スーツの中なのに暑い!これ、やばいよ!)

910には必死で逃げることしか出来なかった。
このまま燃やされたらスーツが耐えられなくなり、
炎の中にも関わらず変身解除してしまう可能性があるからだ。
そのため910は不格好だとは分かっていてもまっしぐらに逃げていく。
だが策が無い訳ではない。勝機は十分にある。
接近したら土埃にまみれてしまうことを学習したので、遠距離から攻撃をすれば良いと思ったのだ。
幸いにも910の剣はイクタの剣のように銃に変型する機能を持つ。
遠距離からの射撃はバッチリだ。

(問題はBigWも銃を使うところね。ここからは銃撃戦になりそう。
どっちが上手く狙撃出来るか勝負よ!)

910は銃を扱う自分を頭で思い浮かべながら逃げていく。
このライダーシステムには初心者でも目標に当てることが出来るよう、補正機能がついてるため安心だ。
よほど的外れだったり、相手の回避能力が優れていない限り当たるようになっている。
つまり落ち着けば当たるのだ。
走りながらも心を落ち着かせようとした時、足元に蛇のような何かが絡んで来る。
その謎の物体に910は精神を乱してしまう。

「いやっ!なに!?」

910の足元に伸びた蛇のような物体は黄色い腕だった。
これはBigWの付き片メモリによるものだったと910は思い出す。
神秘の力で腕や武器を伸ばすことが出来るので、
その力でここまで伸ばしてきたのだろう。
910が気づいた時にはもう遅く、足首を掴まれ転ばされてしまう。

「きゃ!」

910の足首を掴むと同時にBigWは腕を縮めて身体全体を910に持っていく。
地面を爆破して土埃を撒き散らしたのも、このようにして捕捉するためだったのだ。
火炎放射で焦らせたところに、見えないところから腕を伸ばす。
これが千奈美の当初の目的だった。
衣梨奈に910の弱点を聞いた時から、ここまで持っていく策を必死で考え続けていたのである。

「行くよ!ちぃ!」
「分かったよ熊井ちゃん!!」

BigWは両足を揃え、910のベルトに向けてドロップキックをぶつける。
足首を掴まれた910は身動きを取ることが出来ずそのままキックを喰らってしまう。
キックを貰う程度では910のスーツは破壊されないが、
衝撃が加わったベルトは外れてどこかへ飛んで行ってしまう。
これが910の弱点なのだ。
910のモチーフとなるカイザは仮面ライダー555に登場するライダーであるが、
そこに登場するライダーは総じてベルトがしょっちゅう外れてしまうという特徴がある。
衣梨奈は910にもそれが適用されると考えたのだ。

「あ~~~~!!」

ベルトが外れたことで、910は今までにないくらい取り乱す。
このままベルトが外れたままだと変身が強制解除されてしまうため、
早急に巻きなおさないといけないのだ。
しかし足首を掴まれているため910は動くことが出来ない。
それどころかBigWが足首を掴んだままジャンプをし、
910の命の次に大切なベルトをグシャッと踏んづけてしまう。
これにより910はもう変身することが出来ない。
じきに変身解除されるので、その時をもってライダーバトル敗退確定となる。
大破した訳でもないのに負けてしまったので、910は悔しさのあまり地面に転がりだす。

「なんでよぉ……こんな、こんな負け方ってないでしょ……」

910はまるで身体が引き裂かれるような思いをしてしまう。
勝ちへの執念が凄かったため、その反動で余計に苦しんでいるのだ。
もうモベキマスのセンターになれないと思うと910は悔しくてたまらない。
諦めても諦めきれない。それだけセンターになりたかったのだ。
この思いをどうにかするため910はBigWに当り散らす。

「そもそも貴方たちの目的はなんなの!2人じゃどっちもセンターになれないじゃない!
 センターは1人なのに、優勝者は1人なのに、どうしてBigWは2人なのよぉ!」

910のこの疑問は衣梨奈も、香音も、同じベリーズの佐紀も感じていた。
だが誰も口に出すことが出来なかったのだ。
質問してしまった瞬間、千奈美と友理奈の間にわだかまりが生じてしまう気がするからだ。
それでもBigWは悲壮感をまったく見せずに質問に答える。

「「二人でセンターになればいいでしょ」」
「ふふっ……なにそれ、おかしい」

双子のように声が揃っていたので、910は思わず笑ってしまう。
何も深く考えていないような二人を見て気が抜けたのかもしれない。
910は、中島早貴は今後も敗北に苦しみ続けるのだろうが、
千奈美や友理奈、他のハロプロメンバーらと馬鹿をやっていればそのうち傷も癒えるだろう。

(香音ちゃんって面白い子だったよね……今度友達になろうかな)

910を倒したBigWの次の仕事は裂鬼を助けることだった。
パレットがあの時点で既に弱っていたので助太刀する必要は無いのかもしれないが、
もしものことが無いとも言いきれない。

「そのためにはこの煙を消さないとね、熊井ちゃん」
「はいはい、また私がやるんでしょ」

右の友理奈はメモリをチャチャに変更して、上昇気流を巻き起こす。
この風のおかげで煙はすべて上空へと飛んで行く。
結果的にBigWは裂鬼のほうを見ることが出来るようになったのだ。
そこでBigWは見るも無惨な光景を目の当たりにしてしまう。

「二人とも、逃げて!!」
「キャプテン?……」

視界が開けた先では裂鬼が全身ボロボロになって倒れていた。
完璧な作戦を練るほど頭の良い裂鬼がここまで満身創痍になるのが二人には信じられなかった。
そして、もっと信じられないのが今のパレットの姿だ。
普段は銀の鎧を身に着けている彼女だが、今は全身を金の鎧で包んでいる。
その姿はスペードの11と13で変身するジャックフォームとも違うようだった。
こころなしか愛用する大剣も大きく見えている。
そして何よりも信じられないのはパレットがピンピンしていることだった。
裂鬼がボロボロになるほど戦ったのにパレットは二本の足で立っている。
あちらこちらにヒビが入ってはいるが、決して裂鬼ほどダメージを受けてはいない。

「キャプテン!いったいこれはどういう……」
「知らない!こんな姿聞いたことない!!強さが、別格過ぎる……!
 だから二人は逃げてぇ!!」

裂鬼がBigWを逃がそうとするところで、パレットは巨大な剣を振りはじめた。
それにより裂鬼とパレットの直線上に5枚の四角い光が現れる。
その光にはなにやら写真のような絵が描かれていた。
まるでCDのジャケット写真のように見える。

『Café Buono!』
『Buono!2』
『We are Buono!』
『partenza』
『SHERBET』
『ロイヤルボーノフラッシュ』

剣先から発せられるエネルギーは5枚のジャケットをぶち破ることで勢いを増し、
そのまま裂鬼のスーツを木っ端微塵に破壊してしまう。



パレットは最初のうちは裂鬼に苦戦していた。
音撃戦士は楽器以外にも鍛えぬいたその身体を武器とするため、
ダンスが得意な清水佐紀とはとても相性が良かったのだ。
力強い筋力としなやかな踊りが組み合わされた体術はそう簡単に崩せるものではなかった。
斬撃を強化するスペード2、ドットドットスラッシュや
パンチ力を強化するスペード3、ハイブリットパンチらを使用してやっと互角といったところだった。
他にも体当たり強化のバコーンや、キック力強化のガッタスなどを使ってきたが、
それらのトランプ効果は長くは持続しなかった。
結局は付け焼刃にしかならなかったのだ。
そして他のカードライダーであるオーデンやディエッグがそうだったように、
カードを使えば使うだけエネルギーを消耗してしまうため、逆に不利になってしまう。

(どうしよう、このままじゃ負けちゃう……絶対に勝たないといけないのに……
 勝ちたい、はやく佐紀ちゃんを倒してなっきぃを助けないと計画がダメになっちゃう!
 私はここで負けてもいいから、なっきぃを助けたい!!)

そう思いながらトランプを探っていた時、今まで無かったカードがあることに気づく。
それはスペードの12、いわゆるクイーンのカードだった。
トランプは1から13まで番号が振られているのは誰もが知っているだろうが、
パレットの持つトランプには何故か12だけが存在していなかったのだ。

(スペードのクイーン……エヴォリューションって書いてある。
 このカードは私に革命を起こさせてくれるの?)

パレットは12と、さらに13のカードを取り出し同時に読み込ませる。
スペード13は他のカードの浸透力を高める「吸収」のカードだ。
この2枚のカードを同時に使うことでより効果を発揮することが出来ると考えたのだ。
そしてその考えは正しかった。

『エヴォリューションクイーン』
『アブソーブキング』

真価を発揮したクイーンのカードはパレットの鎧を黄金に変える。
ただ色が変わっただけではない、甲冑がより重厚なものになったのだ。
剣も今までより立派なものに進化している。
そしてライダーから発せられるオーラや威圧感のようなものが段違いになっていた。
これが仮面ライダーパレットの最強フォーム「キューティークイーン」フォームだ。
もちろん戦闘能力も格段に強化されている。
この力でパレットは裂鬼を圧倒したのだった。

ベリキューらが戦っている公園の入り口に一台の車が停まっていた。
その車から一人の少女と、一人の青年が降りていく。
青年とはタチバナの本拠地で持論を力説したあの青年だ。
公園の奥のほうを指差して、少女に説明を始める。

「ほらここだよ、この先で戦ってるはず」
「全然見えないんだけど……」
「えっと、それはほら、この公園広いから……
 たぶんあの子たちも狭いとこで戦うのが嫌だったんじゃないかな?」
「そっか、まぁそうよね。」

二人はベリキューの戦いに興味があるようだった。
今からその場に向かうつもりでいるのだ。

「ノブアキ君、車で中まで入れないの?」
「ちょっとそれは無理かな、ってその名前で呼ばないでよ!
 もうその役は終わったんだからさ……」
「じゃあカズキ君がいい?私あれ出てないから言いにくいんだけど」
「それも終わったの!普通に本名で呼べばいいでしょ本名で!」
「めんどくさい、覚えにくいんだもん」
「えぇ~ひどいなぁ……」


ガックリと肩を落とす青年を無視して、少女はベルトを巻き始める。
そのベルトは確かに仮面ライダーのベルトであった。

「歩くんだったらこっちの方がはやいでしょ、変身していい?」
「もちろん!そのために君をここまで連れてきたんだから!」

少女は変身をするためにベルトを起動させる。
他の平成ライダーのベルト同様に、機械音がバリバリと鳴り響く。

『シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!』

「私このベルトなんかやだ、テンション高すぎ……」
「我慢しなさい、みんなすぐ慣れるもんなんだから」

同時刻、タチバナの本拠地
多くの科学者らが仮面ライダーパレットの最強フォームについて話していた。

「やっとパレットが最強フォームになりましたね。」
「彼女は勤勉ですからね、とっくに条件を満たしていたのですよ。」
「みんなが鈴木さんみたいな子だったら我々の仕事も楽なんだけどなぁ」
「ははは、あの年代の女の子にそれを期待しちゃいかんでしょう」

ここで話題になっている最強フォームへの条件。
それはタチバナへの貢献度であった。
つまりは「どれだけ透明生命体を倒したか」
そして「どれだけ仮面ライダーを倒したか」
この2つの要素が大きく関わってくるのである。

「彼女はライダーを倒したことが無いから1つ目の条件に当てはまるんだね」
「そうです、早い段階で1000体切りを達成したから驚きですよね」

他にも様々な要因が複雑に絡んでくるので一概にそうだとは言えないが、
目安としては透明生命体を1000体、
もしくは仮面ライダーを2体撃破することで最強フォームの資格が得られると言われている。
パレットは計画遂行のため日々訓練をしていたので、簡単に上の条件を満たしたのだ。
ちなみにディエッグは透明生命体狩りはサボりがちだったが、
オーデンとハウガの2体を倒した功績が認められて最強フォームになれたのである。

「あとは心から勝ちたいと思うこと、それが最後の条件でしたね。」
「はい、その思いと連動して変身アイテムが転送される仕組みになっています。」
「お?よく考えてみたらBigWは条件を満たしているんじゃないか?
 仮面ライダー910を倒しているし、透明生命体撃破数もなかなかじゃないか」
「いつでも変身アイテムを送れるよう設定してありますよ。
 でも、無駄じゃないですかね」

舞台はまた公園に戻る。
そこでは仮面ライダーBigWとパレットの決闘が行われていた。
いや、決闘と言う言葉はあまり相応しくないのかもしれない。
どちらかと言えば「リンチ」だ。

「はぁ、はぁ……熊井ちゃん、まだやれる?」
「大丈夫、大丈夫だけど……」

BigWのスーツはひどく破損していた。
これまでゲンキックンに蹴られたり、裂鬼の衝撃波を受け続けたり、
910に斬られたり、自分自身の炎を浴びたりしてダメージが積み重なっていたが、、
仮に健康体で挑んでもパレットには苦戦するだろうことをBigWは理解していた。
それほどに強いのだ。
斬撃が強い、パンチが強い、体当たりが強い、キックが強い、
攻撃に電撃を纏っている、装甲が非常に硬い、
相手を引き寄せる力を持っている、高速で移動することが出来る、
気のせいかもしれないが時を止めてるのではないかと思う時もある。
もはやすべてが凄いキューティークイーンフォームにBigWは絶望するしかなかった。

チャチャで風を操っても、ジンギスカンで肉弾戦をしても、
ボンバーで爆破しても、ファイポで防御を固めても、
付き片で腕を伸ばしても、ダンガンで狙撃をしても通用しない。
ではオタケビメモリを使って友理奈のボディで変身してはどうか?と考えたちょうどその時、
パレットは裂鬼を打ち破った時のように必殺技の準備をしていた。
BigWと自身の直線上に5枚のアルバムジャケットを出現させたのだ。

『キューティークイーン VOL.1』
『2mini~生きるという力~』
『3rd~LOVE エスカレーション!~』
『4憧れ My STAR』
『ショッキング5』
『ロイヤルキュートフラッシュ』

パレットはダッシュでアルバムジャケットを突破していき、
その勢いでBigWに斬りかかる。
結果、BigWはオタケビメモリを使うことなく大破してしまう。

敵をすべて倒し終えたパレットだったが、その心の中は空虚だった。
自分がこうして勝ち残ったとしても舞と早貴がやられてしまっては意味がない。
二人が、いや、せめてどちらか一人が生き残ることが計画実現の条件だったのだ。
どうして自分はもっと早くこの姿になれなかったのかと悔やんでしまう。

「ごめんね、舞ちゃん、なっきぃ」

この場にいる元ライダーらは全員疲れ果てて寝てしまっていた。
死闘を繰り広げた後であるし、そもそも早朝なので眠かったのだろう。
パレットは皆を起こさないように小さな声で呟いていく。

「私……なんとかして計画を達成してみせるよ。
 本当だったら二人が居るのが一番だったんだけど、
 どうにか、なんとかしてみる。
 あ、ひょっとしたらG3-Mが舞美ちゃんかちさとだったりするのかな
 ううん、そんなことないよね。だって携帯鳴ってなかったもんね。
 私、まずは優勝するよ。
 優勝してから、必死でお願いしてみる。
 ここまで来て諦めるのはしたくないんだ。
 だから二人とも、私を見捨てないで……」

パレットが計画の遂行を誓い終えたその時、
背後から何者かがやってくるのを感じる。
やたらと騒がしいベルト音声に気づいたのだ。

『ルパッチマジックタッチゴー!ルパッチマジックタッチゴー!』
『チョーイイネ!』
『キックストライク!』
『サイコー!』

無駄にテンションの高いベルト音声とともに謎のライダーが蹴りを入れてくる。
パレットは咄嗟に自身の身体を硬化させるが、直接蹴りを受けてしまった。
強い身体を持ってしても受けきれず、後ずさりをしてしまう。

「だ、だれなの!?まさか、G3-M!?」
「ううん、違う。」

そのライダーのカラーは赤だった。
赤いボディに、黒いローブのようなものを纏っている。
真っ赤な仮面を輝かせながら、新たなライダーが決め台詞を言い放つ。

「さぁ、ショータイムよ。」





 仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈
 仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音 敗退
 仮面ライダーなでしこ / 真野恵里菜 敗退
 仮面ライダーゲンキックンホッパー / 萩原舞 敗退
 仮面ライダーオーデン / 竹内朱莉 敗退
 仮面ライダーパレット / 鈴木愛理
 仮面ライダーディエッグ / 譜久村聖
 仮面ライダーBig W  / 熊井友理奈&徳永千奈美 敗退
 仮面ライダーハウガ / 飯窪春菜 敗退
 仮面ライダー裂鬼 / 清水佐紀 敗退
 仮面ライダー910 / 中島早貴 敗退
 仮面ライダーめん王 / 勝田里奈 敗退
 仮面ライダー? ? ? / ? ? ?
















最終更新:2012年09月03日 23:00