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第26話「優勝者になりたい」


衣梨奈はビビっていた。
いきなり菅谷梨沙子からメールが届いたからだ。
ハローの先輩とも臆せず話したりすることの出来る衣梨奈だったが、
今朝その梨沙子がリィサーコだと知ったばかりだったのでさすがにビクついてしまう。
しかもその文面は人通りの少ない公園で待ち合わせをするというもの。
どう考えてもライダーバトルのお誘いだ。
衣梨奈は憂鬱な気分で指定の場所に向かわなくてはならなかった。

(きっと梨沙子さんのモチーフはウィザードっちゃん。
これはダメだ、これはまずすぎる……)

衣梨奈にはリィサーコと戦いたくない理由があった。
これまでどのライダーと戦う時も積極的だった彼女だが、
今回ばかりは不安を掻き消すように必死にケータイを弄っている。
そして、とうとう不安を拭えぬまま目的地に到着してしまった。

「えーりーぽーんっ!」

不安気な衣梨奈とは対象的に、すでに現場にいた聖はご機嫌だった。
この温度差に衣梨奈はちょっと引いてしまう。

「あ、みずきもおったと?」
「どうしよえりぽん!菅谷さんから、菅谷さんからメールが着ちゃったの!!
キャーーー!!みずき死ぬかも!死んでもいい!」
「命は大切にね。」

衣梨奈は何かおかしいと感じていた。
タイマン勝負をするために一人を呼び出すのは分かるが、
衣梨奈と聖の二人を呼びだすのは、同時に相手をするつもりとしか思えない。
それだけ自信が有るということなのだろうか。
そしておかしい点がもう一点。
それは衣梨奈は梨沙子とアドレスを交換していないということだ。
スーパー奥手の聖もおそらくは梨沙子と交換できていないだろう。
別に知られて悪い気はしないが(聖にいたっては大喜びだし)
いったいどういうルートでアドレスを手に入れたのか衣梨奈は気になった。
そしてそうこうしているうちに当の梨沙子が現れる。

「「菅谷さんおはようございます!」」
「もう昼過ぎだよ、遅くなってごめんね。
なんか今朝は早起きしちゃって、眠いの。」
「眠そうな菅谷さんも可愛い……」

「G3-Mは来てないか、やっぱり忙しいのかな」
「じ、G3-M!呼んだんですか!?」
「うん、来ないっぽいけどね。」

まだ見ぬライダーの名前を聞いて、衣梨奈は思わず反応する。
仮面ライダーも残り五人となったので、優勝のために情報を欲しがっていたのだ。
それにしても梨沙子はライダーを三人も呼ぶなんて、大胆なことをするものである。
三人も呼んだのならば、もしかしたらもう一人も……と衣梨奈は思う。

「ひょっとして、パレットも呼んでるんですか?」

衣梨奈にとってはパレットもG3-M同様に未知のライダーであった。
そのため、これから正体を知れるかもしれないとドキドキしているのだ。
だが同時に、本当に来たらどうしようという不安も抱えていた。
仮に、残るライダー五人が集結したとしたらこの場はたちまちライダーバトルの決勝会場と化すだろう。
そうなった時はどのように振る舞えば良いのか衣梨奈は必死に考え始める。
ところが、梨沙子が首を横に振ることでその仮説は崩れることとなる。

「ううん、パレットは呼んでないよ。」
「どうしてですか?あと一人なのに」
「なんだって良いでしょ、それより話させてよ。」

梨沙子は面倒ごとを避けるように本題に入っていく。
話題なリィサーコの優勝特典についてだ。
梨沙子は愛理に伝えた内容を丁寧に二人の後輩へと伝えていく。
今回の目的は喧嘩ではないので、その口調は穏やかだった。
自分が二人はセンターに相応しくないと思っていることは伏せて、
なるべく賛同してくれるようにしっかりと話していく。
全てを伝え終えた時には衣梨奈と聖は感銘を受けたようだった。

「菅谷さん立派です!自分のためじゃなくハロプロのためを思って戦うなんて普通出来ません!」

聖の言い方は、少しヨイショが入っているように衣梨奈には聞こえた。
それでも梨沙子には効いたようで、とてもニコニコとしている。

「いや、私はただ自分の思うようにやってるだけだけどね、あははは
じゃあ生田ちゃんはどう思う?」

梨沙子は自分の考えが上手く行きそうだったので、良い気分で衣梨奈にも質問する。
しかし衣梨奈は思うような言葉を発してはくれなかった。

「えりも菅谷さん凄いと思います。
でも、やっぱりえりはセンターになりたいですねークフフフフッ」
「え?」

この時、梨沙子の顔が怖くなったことに衣梨奈は気づいていなかった。

「ちょっと、えりぽん!」

先輩に失礼な態度をとった衣梨奈を、隣にいた聖が小突く。
それに気づいた衣梨奈は慌てて口を覆うが、もう後の祭だ。
衣梨奈は冷や汗を流しながら梨沙子の顔色を伺う。

「ご、ごめんなさい菅谷さん」
「……」

KYの衣梨奈でも、梨沙子の醸し出す冷たい空気を感じることは出来る。
まるで氷の魔法でも使われたかのような寒さだ。
縮こまる衣梨奈に対して、沈黙していた梨沙子が口を開く。

「許してほしい?」
「はい!」
「じゃあ私のお願いを聞いてよ。」

この後の展開が予想出来るだけに、衣梨奈はとても居心地が悪かった。
梨沙子は衣梨奈の肩をポンと叩いて言葉を続ける。

「今日二人を呼んだのもそのためなの。あ、勝手にアドレス調べちゃってごめんね。
 本当に大事な話だから偉い人に聞いちゃったの」
「「全然大丈夫です!」」

衣梨奈はそう言わざるをえなかった。
アドレスを知られてウキウキ気分の聖が羨ましくもある。
そんなことを考えるうちに梨沙子が本題に入っていく。

「お願いってのはね、二人にライダーバトルを棄権して欲しいってことなの。」

「私の目的のためには二人を倒さないといけないの。
でも出来れば戦いたくない。だから棄権して。」

衣梨奈と聖は何も言えなかった。
たしかに梨沙子の考えは素晴らしいし、納得出来る。
それでもセンターになれる権利を手放すわけにはいかないのだ。
二人がなかなか賛同しないのに苛立ったのか、梨沙子は声を荒げていく。

「さっき私の考えが良いって言ったじゃん!あれは嘘だったの!?」

怒る梨沙子の迫力はかなりのものだった。
生の声のみで周囲を圧倒してしまっている。
それほど威圧感のある梨沙子に、衣梨奈が立ち向かっていく。

「だめです!えりは勝ちます!」
「二人はまだ若いんだから、これから努力してつんくさんに認めてもらったらいいでしょ、
なんで分かってくれないの!!」
「嫌です!えりはここで諦めることなんて出来ません!!
どんな場面でも逃げないし立場なんてのも関係ないんです!」

衣梨奈はこれまで戦って来た過程を思い出していた。
ここで棄権をしたら、今までの経験が無意味なものになると思えてならなかったのだ。
センターのため、倒したライバルのため、衣梨奈は諦めてはならない。
梨沙子も衣梨奈の瞳から鋼の意思を感じていく。

「ったく……じゃあフクちゃんは?」
「ふぇっ!」

この時、聖は揺らいでいた。
実際のところ彼女は、今はセンターにならなくても良いと考えていたのだ。

聖にもセンター願望はあるが、自分の実力と人気が上がった時に立てれば良いと考えていた。
このライダーバトルに参加したのも、ハロメンを召喚する能力とリストにある同期の名に興味を持ったからである。
今すぐセンターになりたいと必死になっているわけではなかった。
もちろん優勝することでセンターになれればとても嬉しいが、
梨沙子に嫌われてまでなりたいかと思えば、そうでもない。

「みずき!どう思っとーと?」
「フクちゃん、答えて」

先輩と同期の板挟みになった聖はかなり参ってしまう。
梨沙子と衣梨奈、両方好きなのでどちらにも嫌われたくないのだ。

だから聖は自分のやりたい方を選ぶことにした。

「私、えりぽんにつきます。」
「……!!」

決勝でイクタと戦うこと。それが聖の一番だった。
この約束だけはどうしても破れないのである。

「菅谷さん、ごめんなさい!」
「ううん、いい、よく分かったから。
初めからこうすれば良かったんだ。」

梨沙子は右手に指輪をはめて、下腹部へと持っていく。
これがリィサーコの変身動作だ。
機械音とともに掌の形をしたベルトが出現する。

『ドライバーオン』
『プリーズ』

梨沙子のやる気を感じた衣梨奈と聖は変身の準備を始める。
今回は二人で共闘だ。

「菅谷さん強そうだけど、えりぽんと一緒なら安心。
仮面ライダーに詳しいもんね。菅谷さんの弱点も分かってるんでしょ?」
「え!……あ、あぁ、うん。」

右手の指輪でベルトを出現率させた梨沙子は、お次は左手に赤い指輪を装着する。
左手の指輪は変身用リング。
これをベルトにかざすことで変身することが出来るのだ。
テンションのやたら高いベルト音とともに梨沙子はリィサーコに変わっていく。

『シャバドゥビタッチヘンシーン!』
「変身。」
『フレイム』
『プリーズ』
『ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!』

空中に出現した赤い魔方陣を通過した梨沙子は、たちまちリィサーコに変身する。
赤い仮面は四大元素の一つである炎を操るライダーであることを示している。
変身後の決めゼリフを言い放つリィサーコに、衣梨奈も聖も大興奮だ。

「さあ、ショータイムよ。」
「「キャーー!かっこいーーー!!」

見惚れている場合じゃないと気づいた衣梨奈と聖は、自分達も変身を始める。
衣梨奈はナックルをベルトにドッキングし、聖は生写真を銃に挿入する。

「「変身!」」

仮面ライダーの変身も慣れたものだ。
はじめはぎこちなかったが、数多くのライバルと戦うことで確実に成長していっている。
つい最近仮面ライダーになったばかりのリィサーコとは経験値が違うのだ。
ステージの上では梨沙子に勝てぬかもしれないが、イクタとディエッグとしてなら勝機は大いにある。
なんせ彼女らは巷では優勝候補だと囁かれているのだから。

「みずき、先手必勝っちゃん」
「分かった。だったらこの二人ね。」

聖は2枚の生写真を利用してメンバーを召喚する。
今回呼ぶのは同じモーニング娘。の仲間だ。

『ハローライド、サヤシリホ!』
『ハローライド、イシダアユミ!』

イクタはディエッグが呼んだ二人とともにリィサーコのもとへ向かっていく。
ダンスの得意な二人と協力してトリッキーな攻めをしようとしているのだ。
イクタとディエッグは打ち合わせなど全くしていないのだから大したものである。
だがリィサーコはまったく慌てるそぶりを見せなかった。

「召喚出来るのは、フクちゃんだけじゃないんだよ。」

リィサーコは召喚魔法を使うため、新たなリングをはめだした。
そしてプラモデルの部品のようなものを取り出し、それに指輪をかざすのだった。

『フェアリー』『プリーズ』
『トロル』『プリーズ』
『スパイシージャック』『プリーズ』

先日の大戦にて裂鬼がCDをディスクアニマルに変えて戦っていたが、
今回リィサーコが呼び出したのも同様の小型のメカであった。
名前をプラモンスターと言い、リィサーコの戦いをサポートしてくれる心強い味方である。
妖精がモチーフとなっているフェアリーとトロルは里保と亜佑美にダンス勝負を挑みにいき、
宇宙人と化け物が混ざったような姿をしたスパイシージャックはイクタに襲い掛かる。
このスパイシージャック、プラモのくせに大きすぎる。176cmくらいはありそうだ。

「ぎゃぁ!なにこれ!?」

イクタはリィサーコの召喚したモンスターを見て驚いてしまう。
それにより反応が遅れてしまい、スパイシージャックの爪が直撃する。
イクタの力ならこの程度の相手は軽く倒せるはずなので、あまりにもったいない。
実力を発揮しきれていないイクタを見て、ディエッグはおかしく思う。

(えりぽんどうしたの?なんか調子悪く見えるけど……)

ディエッグがイクタを心配している間にリィサーコは次の攻撃を仕掛けようとしている。
二人相手なので休んでいる暇が無いのだ。

『コネクト』『プリーズ』

空中に巨大な魔方陣を呼び出し、なんとそこからバイクを1台取り出してしまう。
そのバイクに瞬時にまたがり、ディエッグ目掛けて急発進するのだった。

「バ、バイク~!?」
「大丈夫、18だから」
「そういう問題じゃ……アァ!」

法定速度オーバーの突進を回避できず、ディエッグは撥ね飛ばされてしまった。
無免許でのバイク使用についてはタチバナが色々と複雑なコネを利用して許可をとっているので安心だ。
もっとも、その許可が下りたのはつい最近のことである。
そのため最新型のリィサーコにしかバイクオプションがつかなかったという裏事情があったりもする。

バイクで突進なんていうワイルドな攻撃は菅谷梨沙子のイメージからは離れたものであった。
実はそれこそが梨沙子の狙い。
なるべく自分がやりそうにないことをやるのがディエッグ攻略の鍵であると知っていたのだ。

(ノブアキ君の言った通りだ、フクちゃんはメンバーの性格で戦い方を変えてるから
 私が私じゃないような攻撃をしたら対応出来ないんだ。
 柄じゃない攻撃をするのは難しいけど、私の演技力なら出来る。)

リィサーコは前々から青年にゆすり、いや、質問を投げかけていた。
残ったライダーの特徴について聞いていたのだ。
後から参加したという不利を、詳しい人物に質問しまくることで解消していたのである。
決定的な弱点までは聞くことが出来なかったが、それなりに良い情報を得ることが出来た。
その一つはディエッグの対処法についてだ。
その強さの理由は持ち前のハロプロ愛によりメンバーの特徴を把握しているからだ。
それならばリィサーコは梨沙子らしく戦わなければ良い。
そうすればディエッグは混乱してしまうと考えたのである。

(次は、銃を撃ちまくるとか良いかも。)
『コネクト』『プリーズ』

梨沙子は魔方陣から銃を取り出す。
そして倒れているディエッグに向けて乱射を始めたのだ。
召喚した映像はプラモンスターに阻まれているためディエッグを助けられない。
結果的にディエッグは銀の弾丸をモロに受けてしまう。

(くっ……あかりちゃん、助けて!)

ディエッグはオーデンの生写真をその手に掴んでいた。
これより仮面ライダーオーデンを召喚しようとしているのだ。
カメンライドは強力ゆえに消費が激しいので、
本来ならば相手に合ったハローライドをすることで間に合わせるべきだ。
しかしリィサーコが梨沙子らしくない戦い方をするので
ディエッグは何が正解なのか分からなくなってしまっている。
その結果、万能型のオーデンを選んだのである。

(あかりちゃんなら瞬間移動出来るし、いざとなれば時間を戻せるし!)

オーデンの強さが本物なのはめん王戦で確認済みだ。
そこにイクタのアドバイスが加わればリィサーコをも圧倒できるだろう。
そう思っていたところに、リィサーコがまたもや指輪を使い始める。

『コネクト』『プリーズ』

今回使用したのは銃やバイクを取り出すのに使ったコネクトリングだ。
このリングは武器を収納した空間に直結した魔方陣を呼び出す効果を持つ。
ここまでは今まで知られていた能力であるが、
実は魔方陣の接続先を任意に選ぶことも出来るのだ。
つまり、ディエッグの手元付近に魔方陣の出口を作ることも可能ということになる。

「フクちゃん、没収。」
「え!?」

いきなり空中から手が現れ、オーデンの生写真を奪ったのでディエッグは驚愕する。
遠くにあるものを取ってしまうなんてまさに魔法だ。
上手い具合にデイエッグの切り札を取り上げることの出来たリィサーコはご機嫌になる。

「ハローライドは許してあげるけど、カメンライドはダメだよ。
 特にオーデンには要注意だって聞いたことあるもん。」

切り札を盗まれてしまったのでディエッグは愕然としてしまう。
このままだとオーデンを召喚することが出来ない。
そうなるとリィサーコの猛攻から護ってもらえなくなる。
さらに、ピンチの時にタイムベントで時を戻すことも不可能だ。
たった1枚盗まただけで可能性が大幅に潰えたのをディエッグは感じる。

「そんな……あかりちゃんが居なかったらどうすれば……」
「ほら、まだまだ行くよ!」

ショックを受けてるディエッグに向けてリィサーコはまた銃で撃ちまくる。
このまま銃弾を貰い続けたらスーツが壊れてしまうことは分かっていても、
ディエッグは次の行動に出ることが出来なかった。
また生写真を奪われてしまうかもしれないのが怖かったのである。
梨沙子はハローライドは許すと言っていたが、それも本当かどうか分からない。
結局ディエッグは自前の銃でリィサーコを撃つくらいしか出来なかった。

「そんな攻撃、当たらないよ。」

『ディフェンド』『プリーズ』

リィサーコの前方に炎の壁が現れる。
この壁でディエッグの銃撃を防ぎつつ、自分だけが弾丸を当てようとしているのだ。
炎の壁の性能は確かで、見事に銃弾を防ぐことが出来た。
しかし、壁の貼られていない前方以外の攻撃は防ぐことが出来なかったようだ。

「ライダートリプルダンシングキーック!」

リィサーコは背後に3つ分の衝撃がきたのを感じる。
ディエッグに気をとられているうちに、イクタ、里保、亜佑美の3人に蹴られたのだ。
イクタによる空中からのライダーキックと、
里保と亜佑美によるラインダンスハイキックが見事に決まっている。

「娘。のダンスが得意なメンバー3人によるコラボレーションっちゃん!
 もうみずきを撃たせませんよ!!」

余裕を見せていたリィサーコでもキックの直撃は痛手だったようだ。
逃げるようにイクタから距離をとっていく。

「スパイシージャックたちもうやられちゃったの?」
「はい!えりが3つの必殺技で倒しました!」

はじめは調子がおかしく見えたイクタだったが、
何も考えず戦うことに集中しようと決めてからは気分よく戦えたようだ。
スパイシージャックを倒した勢いでフェアリーとトロルも倒してしまったため、
里保亜佑美ペアと妖精たちのダンス対決の結果は謎のままになったが、それはまた別の話。

「じゃあ、次はこの指輪を見せてあげる。」

1対4では分が悪いと判断したリィサーコは、左手に緑色の指輪を装着する。
左手のリングは変身リング。これによりリィサーコはハリケーンスタイルに変身するのだ。

『シャドゥビタッチヘンシーン!』
『ハリケーン』
『プリーズ』
『フーフー!フーフーフーフー!』

上方向に出現した魔法陣をくぐることでリィサーコの色が緑色になる。

緑の姿であるハリケーンスタイルはBigW同様に風を操る能力を持つ。
BigWと異なるのは、風に乗って自由自在に空を飛ぶことが出来る点だ。
高速で空を飛びながら、地上にいるイクタやディエッグらを銃で撃ってくる。

「うわ!」
「きゃあ!」

手の届かない場所からの銃撃は凶悪だった。
里保と亜佑美の映像は撃たれて消えてしまうし、
イクタとディエッグがそれぞれの銃でリィサーコを撃とうにも高速飛行しているので当たらない。

「ど、どうしようえりぽん!菅谷さんの弱点とかないの?
 こんな時に効く必殺技とかあるんでしょ!?」
「……分からんと」

「分からない?えりぽん、何言ってるの」
「ごめんみずき!えり、仮面ライダーウィザードは全然分からんけん、どうしようもなか……」
「えぇ~!?」

イクタはまだ仮面ライダーウィザードの第1話を見たことがなかった。
前作のフォーゼは仕事で忙しくても必ず見ていたが、
ウィザードが始まる頃にはライダーバトルも本格化していたので、チェックすることが出来なかったのだ。
ライダーバトルに出ないウィザードよりは他のライダーを調査するほうが良いと後回しにしていたのである。
なのでイクタにはリィサーコの参戦は寝耳に水だった。
イクタにはウィザードモチーフのリィサーコのことは全然分からないのである。
そして、梨沙子はそのことを知っていた。
例によってあの青年に聞いていたのだ。

「ごめん、本当にごめん……」

ウィザードを知らないことを言い出せなかったイクタはディエッグに謝りだす。
空からの銃弾を防ぎながらなので面と向かっては謝れなかったが、その心はディエッグに伝わったようだ。

「えりぽん気にしないで、大丈夫だから」
「大丈夫……?」
「今からいっしょに考えよう、空を飛ぶ菅谷さんを撃ち落す方法を
 大丈夫、私とえりぽんが力を合わせたら絶対思いつくはず。」

「よし!わかったっちゃん!」

イクタとディエッグはこれより空飛ぶリィサーコの攻略を開始する。
絶え間なく降りそそぐ弾丸の雨を避けながら話し合うのは難しいが、
お互いの知識を総動員しなくてはリィサーコには勝てないことに気づいたのだ。
イクタはバッシャーフェイクという名のフエッスルを用いて水鉄砲を呼び出し、
リィサーコの銃弾の勢いを落としながらディエッグに話しかける。

「コンプリートフォームはダメ?」

イクタはディエッグに、最強フォームになれるか問いかけた。
確かにそれなら戦力は大きく上昇するが、ディエッグは出来ればなりたくないと思っている。

「ファイナルハローライドじゃあんな高いところに攻撃出来ないよ。
それに、エネルギーたくさん使っちゃうからあまりなりたくない……」
「そっか、そやね」

イクタに見せたくないという理由もあったが、それは言わないでおいた。
この場で変に信頼関係を傷つけてはまずいからだ。

(うーん、どうしたらよかね……空飛ぶ敵にはやっぱりこっちも空を飛ぶしか……)

あいにくイクタとディエッグには飛行能力は備わっていなかった。
オーズッキがいれば良かったとイクタは悔やむが、今は出来ることをやるしかない。

「みずき、えりを飛ばすことの出来る生写真持っとらん?」
「飛ばす?……ちょっと待ってて」

「有る。えりぽんを空まで飛ばす方法、有るよ。」

ディエッグは生写真を取り出して、さっそく使おうとした。
その生写真は「クドウハルカ」と「ピョコピョコウルトラ」だ。
工藤遥にヒヨコの格好をさせてイクタを空まで連れて行こうと考えたのである。
しかしリィサーコは上空から全てを見ている。
ディエッグが生写真を使おうとしていることも丸見えだ。

『コネクト』『プリーズ』

リィサーコはまたもやディエッグの付近に魔方陣の出口を作り出し、二枚の生写真をぶんどってしまう。
この時イクタがリィサーコの腕を逆に引っ張ってやろうと考えたが、
魔方陣が閉じていくスピードは思ったより速かった。

「ふふ、そっちには行かないよ。」

生写真を盗んだり、高いところから攻撃をしたり
そしてハローライドを邪魔しない約束を破ったりと、リィサーコの戦い方は決して綺麗なものではなかった。
それはリィサーコも自覚している。
優勝候補の二人を同時に倒すには汚い手も使わなくてはならないと分かっているのだ。
ハメ技に近い攻撃だが禁止されてはいない。
ならばこれも勝つための策と言えるだろう。
完全に魔方陣が閉まることで、リィサーコはまた勝利が近づいたのを感じる。

「あ~~惜しか!みずき、どうすると?」
「ふふふ……生写真はまだあるよ!」

ディエッグがすぐに生写真を取り出したのでイクタと、空のリィサーコは驚く。
実はディエッグは1セット盗まれてもいいようにもう1セット用意していたのだ。
ハロプロ愛の強いディエッグにとって、「空を飛ぶ」で複数のシングルを検索することなど容易いのである。
これに焦ったのはリィサーコだ。
ディエッグの持つ生写真が何なのかは分からないが、早く取り上げないといけない。
そのために再度コネクトの魔方陣を出そうとする。
指輪をベルトにかざす動作を行う時間がとてももどかしい。

(間に合って!フクちゃんに召喚される前に!!)

リィサーコの魔方陣がオープンした時、ディエッグはすでに1枚の生写真を銃に挿入していた。
すぐに手を伸ばしたので残りの1枚は奪い取れたが、出来ることならハローライドも阻止したい。
銃を叩き落とそうとリィサーコはさらに手を伸ばすが、イクタに阻まれてしまう。
なんとイクタはこの至近距離から銃弾を撃ったのだ。

「くっ……!」

衝撃を感じたリィサーコはすぐに手を引っ込め、魔方陣を解除する。
案の定リィサーコの手は焼き焦げていた。
まだ指はしっかりと動くが、これ以上コネクトを使うのは辞めたほうが良さそうだ。
指輪を使うリィサーコにとって手の損傷は死活問題。気にしすぎるくらいがちょうどいい。

「1枚奪えたし、とりあえずはよしとするか……んん?」

ディエッグから強奪した生写真を見て、リィサーコは目を丸くしてしまう。
その生写真はモーニング娘。のシングル「シャボン玉」のアー写だったのだ。
となるともちろん、ディエッグが召喚するのはあのメンバーだ。

『ハローライド・タナカレイナ!』

ディエッグは田中れいなに巨大なシャボン玉を作らせ、イクタを空に運ぶつもりだったのだろう。
シャボン玉だったら銃で簡単に割ることが出来たのでリィサーコはガッカリしてしまう。
手を犠牲にしてまで阻止したものがこれだなんて、骨折り損のくたびれ儲けだ。
しかもディエッグのターンはまだ続いていた。
なんとあと1枚、この状況を打破する生写真を隠し持っていたのだ。

「ピョコピョコウルトラとシャボン玉はオトリです。
 この2枚じゃゆっくりすぎますもん、えりぽんを飛ばすなら豪快にいかないと!」

ディエッグが新たな生写真を取り出すのをリィサーコは見ていた。
いくら取り上げても次々と生写真を出してくるので、さすがにうんざりしてくる。

(まだあるの!?もういい加減にしてよ……)

相手が逆転する可能性がある限りリィサーコはその芽を摘まなくてはならない。
しかしコネクトリングは使えない。またイクタに手をやられるかもしれないからだ。
早急に打開策を考えなくてはならないプレッシャーのかかる状況下で
リィサーコは案外早く次の手を閃いてみせた。

(そっか、田中さんを倒しちゃえばいいんだ。)

リィサーコは銃口を田中れいなの映像に向け、撃ちまくった。
緑のハリケーンスタイルは赤のフレイムスタイルと比べて攻撃力が低いため
いまいちイクタとディエッグに有効打を与えることが出来なかったが、
映像程度なら数発当てるだけで消し去れるほどの威力は持っている。
リィサーコは田中れいなの映像を早急に潰すことで、
ディエッグのシングルライドを封じることに成功したのだ。

(シングルライドはハローライドの映像が無いと使えないって言ってた!
 あの生写真が何なのかは知らないけど、シングルライドはもう使えないはず。)

なんとか処理出来たのでリィサーコはほっと一息つく。
しかしディエッグは田中れいなの映像がやられても、
切り札となる生写真を使用する動作を取りやめなかった。
その生写真は田中れいなが居なくても使えるのだ。

『シングルライド、ザ・マテンロウショー!』

イクタの足元の地面が突然盛り上がり、そこから巨大な建築物が出現する。
そしてイクタを屋上に乗せたまま建築物はぐんぐんと上に伸びていく。
その上昇速度は速いなんてものじゃなかった。みるみるうちに高度を上げていっている。

「み、みずき!なんねこれ!?」
「その摩天楼はえりぽんのだよ。凄いでしょ。
 田中さんじゃなくえりぽんに使ったんだから上手くやってよね!」

シングルライドは召喚したハロメンに必殺技を使わせる能力を持つが、
その曲にゆかりのある装着者に限り、仮面ライダーにも使用することが出来るのだ。
THE摩天楼ショーには生田衣梨奈も参加している。ゆえに効果が発動したのである。
こういったことが可能であることは以前同盟を結んでいたオーデンで検証済みだ。

(あの時はチョトマテクダサイを使ったっけ……懐かしいなぁ)

対象がライダーだと効果が高まるのか、摩天楼はあっという間にリィサーコの高さに届いてしまった。
こんなの聞いていないとリィサーコは一瞬焦ったが、風の力で逃げようとする。
摩天楼は上にしか伸びないので少し飛行すれば簡単に避けられるのだ。
しかしイクタはそれを許さない。
MAXの高さまで来たところでリィサーコ目掛けて跳びかかる。

「逃がしませんよぉおおおおお!!」

摩天楼の加速も加わり、イクタの跳びつくスピードはかなりのものだった。
逃げ切れないと理解したリィサーコは銃を剣に変えて応戦しようとするが
近接戦闘に関してはイクタに分があった。
仮面ライダーイクタの第2の技を使うことで、リィサーコの武器をはじき落としたのである。

「ライダー!ミラクルスピンバトン!」

愛用する剣・イクタカリバーを高速回転させながらリィサーコの胸へとぶつけていく。
このミラクルなテクニックは衣梨奈がおはガール時代に練習したバトン技を応用したものだった。
イクタが自分らしく戦うことを選んだ末に編み出しただけあって、その威力は生半可ではない。
リィサーコは耐え切れず地面に落下してしまう。

(まずい……このまま落ちたら、やられちゃう)

リィサーコは相手をなめていたことを反省する。
空から銃弾を撃つような弱々しい攻撃で勝てる相手ではなかったのだ。
本気で倒したいのならば、多少攻撃を喰らうリスクを犯してでも力強くぶん殴るべきだった。
そう思ったリィサーコは落ちる直前に黄色い指輪をベルトにかざす。

『シャバドゥビタッチヘンシーン!』
『ランド』
『プリーズ』
『ドッドッドドドドン!』

下方向に現れた魔方陣をくぐって黄色い姿に変身したが、すぐに地面に衝突してしまう。
落下の衝撃は凄かったらしく、辺りに土や砂などが派手に飛び散っている。
バトンの回転で地面への衝撃を和らげながら着地したイクタは、リィサーコを気の毒そうに見つめる。

「あれじゃ助からんね、大破確定っちゃん」

一仕事終えて安堵したイクタとディエッグだったが、そんな二人を突然の地割れが襲う。
その発生源はリィサーコが墜落した地点だった。
落ちたショックで地面が裂けたのかもと思ったが、
それにしては地割れが起こるのが遅すぎる。

「きゃ!ま、まさか」
「この地割れ、菅谷さんが!?」

砂ぼこりが晴れていき、リィサーコの姿が明らかになってくる。
黄色いこの姿は大地の力を借りたランドスタイルだ。
土を操る能力を持つので地面に衝突しても耐え切ることが出来たのである。
そして、他のどのスタイルより力強く、硬い。
今回の地割れもランドスタイルになったリィサーコが地面を殴って起こしたのだ。
そのパンチ力で殴られたらどうなるか、想像するのは難しくなかった。

「行くよ!!」

リィサーコはイクタとディエッグの元に走りだした。
Berryz工房で一番の俊足なうえに仮面ライダーの身体強化もあるので、
リィサーコは意外にもかなり速かった。
イクタとディエッグはそれぞれの銃で動きを止めようとするが、
ランドスタイルになったリィサーコはまったく止まらなかった。
もう彼女は敵を殴るまで止まらないのだろう。

「どうしよう!やっぱり菅谷さん強い……」
「待って、大丈夫、効いてるっちゃ」

リィサーコのスーツがヒビだらけであることにイクタは気づいていた。
いくら地を操ることが出来ても、高所からの落下ではダメージが大きかったのだろう。
効かないと思われていた銃撃も少しずつだが効いていた。
しかしこのペースでは大破させるまでに日が暮れてしまう。
よほど強烈な一撃を喰らわせないとリィサーコを倒すことは出来ない。

「えりぽん……」
「みずき!話してる暇が有ったら少しでも撃って!」
「……痛みは一瞬よ。」
「え?」

ディエッグは銃口をイクタに向け、トリガーを引く。

ディエッグは決してイクタを攻撃しようとしたわけではない。
イクタを背中から撃つことが、リィサーコに強烈な一撃を与える最良の手段だと考えたのだ。

『ファイナルフォームライド・イイイイクタ!』

「ちょ、ちょっと!みずき!!」

銃で撃たれるなり、イクタのスーツが本人の意思とは関係なく変形していく。
まず腕が真上にあがり、二の腕と耳がくっつく位にピンと伸ばされる。
同様に脚も背伸びする程に伸ばされ、太ももが隙間無く密着する。
今のイクタの姿はまさに一本の棒そのものだ。
さらに伸ばした手の先とつま先がオレンジ色に変色する。
その見た目はまるでバトンのようだった。
生田衣梨奈がおはガール時代に愛用していたミラクルスピンバトンそのまんまの姿である。
バトンに変形したイクタ、通称イクタスピンバトンをディエッグは抱え込むように担ぐ。

「へぇ……えりぽんを変形させるとバトンになるんだ。」
「みずき!これってまさか……まさか!」
「ちょっと目がまわるかもしれないけど、頑張ってね。」
「えええええええええええええ」

イクタはディエッグの使用した技を知っていた。
これはファイナルフォームライドと言って、味方のライダーを武器に変えてしまう技なのだ。
原作では仮面ライダーブレイドを剣に変えたり、響鬼を太鼓に変えたりとやりたい放題だった。
しかも武器に変形したら、その感覚は装着者に伝わるようであったので
バトンのように高速回転されたらイクタは目が回るどころでは済まないだろう。
嫌がるイクタもお構いなしに、ディエッグはイクタスピンバトンを回転させ
迫り来るリィサーコの腹に思いっきりぶつける。

「菅谷さん!これが私のレッツミラテクです!!」
「みずきの馬鹿ぁああああああああああああああ」
「!!」

人間ほどの太さのバトンが回転しながらぶつかってきたので
硬さ自慢のリィサーコもさすがに堪えることが出来なかった。
スーツの破片をばら撒かせながら吹き飛んでしまう。
それを見たディエッグは、役目を終えたイクタスピンバトンの変形を解除する。
回転に酔ってしまったのか、イクタはフラつき、そのまま倒れこんでしまう。

「えりぽんお疲れ様、おかげで倒せたよ。」
「やばか……吐きそう……」

イクタの体調不良こそ心配であるが、これで一件落着だとディエッグは思っていた。
しかしリィサーコはまだその足で立つことが出来ていた。
ボロボロと剥がれ落ちる装甲が見てて痛々しいが、まだ戦うだけの機能は残っている。
梨沙子の勝ちへの執念がスーツに伝わったのかもしれない。

「負けられないの、私は絶対に負けられない。
 このふざけたゲームを終わらせないといけないんだからぁっ!!」

根性のみで立ち向かってくるリィサーコにイクタとディエッグは恐怖した。
空から地面に落としても、大型バトンをぶつけても、まだ戦いを挑んでくる。
彼女らにはもう何をすれば良いのか分からなくなってしまった。
有利な状況であるはずなのに、二人はつい後ろに退いてしまう。

「どうしよ……私もうエネルギーがほとんど……」
「戦いたいけど、まだ気持ち悪かよ」

この上ないピンチだと二人が感じたその時、突然の銃撃がリィサーコを襲う。
それもただの銃撃ではない。マシンガンのように激しく連射されていたのだ。
マシンガンよりはガトリングと呼ぶほうが正確かもしれない。
リィサーコは全身くまなくガトリング射撃を受けてしまう。

「うぁあああああ!やめて、やめてよぉ!」

銃撃が終了する頃にはリィサーコのスーツは大破していた。
ガトリングを持つ謎の青き仮面ライダーによってリィサーコは撃破されたのだ。





 仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈
 仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音 敗退
 仮面ライダーなでしこ / 真野恵里菜 敗退
 仮面ライダーゲンキックンホッパー / 萩原舞 敗退
 仮面ライダーオーデン / 竹内朱莉 敗退
 仮面ライダーパレット / 鈴木愛理
 仮面ライダーディエッグ / 譜久村聖
 仮面ライダーBig W  / 熊井友理奈&徳永千奈美 敗退
 仮面ライダーハウガ / 飯窪春菜 敗退
 仮面ライダー裂鬼 / 清水佐紀 敗退
 仮面ライダー910 / 中島早貴 敗退
 仮面ライダーめん王 / 勝田里奈 敗退
 仮面ライダーリィサーコ / 菅谷梨沙子 敗退
 仮面ライダー? ? ? / ? ? ? 
















最終更新:2012年09月09日 09:52