第27話「14体目の戦士」
リィサーコを撃ちまくった青いライダーをイクタは知っていた。
「仮面ライダーアギト」に登場する、とあるライダーにそっくりであったからだ。
メカメカしい装甲、3本の銀の角、そして装備している巨大なガトリング砲。
その見た目だけで特定するには十分であった。
真実を確かめるため、イクタはすぐにケータイをチェックする。
「仮面ライダーリィサーコ」
が
「仮面ライダーG3-M」
に
敗北したことをお伝えします。
やはりそうだとイクタは思う。
突如現れた謎のライダーの正体は、今まで姿を隠していたG3-Mであったのだ。
梨沙子がG3-Mも呼んだと言っていたので、遅刻でもしてこの時間に来たのだろう。
イクタは危機的状況を助けてもらってありがたいという気持ちもあれば、
もう少しで倒せるところを横取りされて悔しいという思いもあった。
そして今一番の関心事はこのG3-Mの正体は誰かということだ。
イクタは謎を解明するため、質問を始める。
「G3-M!お前は誰っちゃん!!」
まだ目が回る中、イクタはG3-Mを指さす。
本人はビシッとしていつつもりだったが、実際はフニャフニャしていた。
そんなイクタをディエッグは信じられないといった風に見ている。
「えりぽん……まだ分かってなかったの?」
「へっ?」
「とりあえず"お前"はダメ、"あなた"って言わないとダメでしょ!!」
「え?え?……わ、わかったと……G3-M!あなたは誰っちゃん!」
声に気づいたG3はイクタとディエッグのほうを向く。
そして担いだガトリングでいきなり撃ちだした。
見るからに敵意剥き出しと言った感じである。
「わ!ひどい!!」
突然だったので驚いたが、これくらい避けられない二人では無かった。
イクタは右に、ディエッグは左にと逆方向に逃げることで狙いをつけにくくする。
ここまで勝ち抜いただけあって、その判断力は優秀だ。
だがG3だってこれまで遊んできたわけではない。
「……生田かな」
G3 はボソッと呟きながら照準をイクタに向ける。
フラついてるイクタの方が先に仕留められると考えているのだろう。
自分が狙われてると気づいたイクタは、より速いスピードで逃げるため前転を始める。
彼女にとっては前転の方が速いのだ。
しかも前転移動することでイクタは新たな事実を発見する。
「すごっ!ハンドスプリングやと全然目が回らん!!」
目が回っているので、身体も回せばプラスマイナスゼロという理屈だ。
ライダーシステムによる効果か、衣梨奈が単純だからかは分からないが
とりあえずこれで移動に関しては問題なさそうだ。
イクタはそのままの勢いでG3へと向かっていく。
「喰らわせてやるっちゃん!必殺!!」
イクタは地面を強く叩き、空中へと舞い上がる。
そしてムーンサルトをしながらG3に蹴りを入れようとしているのだ。
アクロバットで翻弄すれば銃弾が当たることなくG3を蹴れると思っていたのだ。
でもそうはならなかった。
なんとG3も前転から高く舞い上がり、イクタ同様に空中で回転してみせたのだ。
イクタとG3の二人は宙に舞いながら、お互いにキックを当てる。
「やあ!」「はっ!」
蹴りの威力、技術は互角だった。
イクタもG3も弾かれ、地面に落ちてしまう。
「……そんな」
イクタはG3のアクロバットに驚いていた。
それは、G3の跳び方に見覚えがあったからだ。
「あれは、タンブリング!」
タンブリングとハンドスプリングがどう違うのかは分からないが、
イクタの中では明確な違いがあるようだった。
そしてその違いがG3-Mの正体を気づかせる。
「まさか……新垣さん?」
「遅いっ!」
新垣里沙は今年5月にモーニング娘。及びハロープロジェクトを卒業したメンバーだ。
面倒見の良い性格をしており、多くの後輩に慕われている。
中でも特に里沙のことを慕っていたのが生田衣梨奈であった。
その溺愛っぷりは異常であり、メンバーどころかファン達にも知られ渡っている。
ところが、今のイクタの表情は険しいものとなっていた。
久々に里沙に会えて嬉しいし、ライダーという秘密を共有できて最高の気分だが、
ハロプロでない新垣里沙がライダーバトルに参加することが不思議でならなかったのだ。
バトルの優勝特典はモベキマスのセンターである。
ハロプロでない、つまりモベキマスでない里沙がセンターになるなんてことがありえるのだろうか?
そして、里沙はそれを望んでいるのだろうか?
それが分からない衣梨奈には、どう声をかければ良いのか分からなかった。
むしろ先に声をかけてきたのは里沙のほうだった。
「それにしても生田ぁ、私がG3-Mだって気づくの遅くない?
生田だったら真っ先に分かってくれると思ったんだけどなぁ」
「えっ、だって、そんなヒントもないのに……」
「G3だから"ガキさん"でしょ、単純じゃない?」
「あっ!……」
言われてみればそうだと衣梨奈は感じた。
たしかに笑ってしまうくらい単純だ。裂鬼や910よりずっと簡単である。
それでも分からなかったのはやはり新垣里沙がハロプロではないからだろう。
そのため衣梨奈は無意識のうちに頭から除外して考えていたのだ。
それにG3-MのMもよく分からない。
「じゃあ、Mってなんなんですか?ひょっとしてモーニング娘。のMですか?
あれ、だったらモーニングと娘のどっちのMやろ……」
戦闘中にも関わらず考え込むイクタに、ディエッグが声をかける。
彼女も彼女で言いたいことがあるようだ。
「新垣さんの昔のあだ名はマメだからそのMかもしれないよ!」
「ふふっ、残念、二人ともハズレ。」
戦わなくてはならないというのに、里沙も結構ノリノリだった。
少しタメてから正解を発表する。
「答えは"みなとみらい"でっしたー!あんたたちも行ってごらんなさい?良いところなんだから」
「「は、はぁ……」
思いがけない返答にイクタは気が抜けそうになる。
里沙のペースに乗せられるところだったが、ここで緊張を解くわけにはいかない。
イクタには名前なんかよりもっと聞きたい質問があったのだ。
「新垣さん……」
「どうした?」
「何が……目的なんですか?」
イクタは里沙にモベキマスに戻って欲しくなかった。
また一緒に歌ったり踊ったりすることが出来れば楽しいだろうが、
それよりも自身の夢に一直線に向かってもらいたかったのだ。
つまりは舞台女優として活躍して欲しかったのである。
「もしモベキマスのセンターになりたいって言うんだったら、
えりは新垣さんを倒さないといけません!!
新垣さんには寄り道をしてほしくないから!!」
「……へぇ」
イクタの叫びはかなり力がこもっていた。
絶対に里沙を優勝させたくないという思いが感じ取れる。
それに続くようにディエッグも里沙に物申していく。
「モーニング娘。卒業生で娘。に出戻った方は誰もいません。
ハロプロ卒業生でハローに戻った方もいません!!
だから、新垣さんに恥をかかせる訳にはいかないんです……ここで負けてもらいます。」
二人の宣戦布告を聞いた里沙はおちゃらけムードから一転し、
G3として真剣にガトリングを構えだす。
「そっか、じゃあ二人を倒さないといけないワケだ。」
G3は容赦なくガトリングをぶっ放す。狙いはイクタだ。
イクタも自分に攻撃が来ることに気づいていたのか、
バク転とバク宙を織り交ぜながら距離をとり弾丸を回避していく。
その滑らかな動きはイクタが個性をシステムに反映させたことを表している。
(G3のことなら知っとぉよ、何も怖くないっちゃ!)
リィサーコの時は相手の力が未知だったのでビビってしまったが、
今回はよく知っているため思いっきり戦うことが出来る。
イクタはハンドスプリングをしながらディエッグに情報を提供する。
「みずき!G3は銃や剣で闘う武装派ライダーっちゃん!
魔法みたいな特殊能力はなかよー!
新垣さんのタンブリングさえ気をつければ勝てるはずっちゃ!
だから、それに合ったカードを召喚して!!」
「分かったよえりぽん!」
自分のスペックをほとんどバラされてしまったのでG3はゲンナリする。
(おいおい生田、なんでそんなことまで知ってるの?……ハッ!まさか盗聴されてた!?
あ、そういえば戦隊モノが好きって言ってたっけ。だからか。
でもね生田、良い気になるんじゃないわよ~
こっちだって梨沙子ちゃんとの戦いを見てたから、アンタの能力を分かってるんだからね。)
全ては見れなかったが、G3はリィサーコ戦の後半を見ていた。
イクタはともかく、ディエッグの正体が聖だと知っていたのもそのためだ。
(だいたい生田だって私と同じ武闘派じゃないの。
怖いのはどっちかと言えばフクちゃんのほうね。
良いビル立てたり、生田を武器にしたり謎すぎるわ……
それに生田が言ってた召喚ってなんのこと?
田中っちっぽいのを出したのに関係あるのかしら。)
ディエッグはシングルライドやイクタミラクルバトンでかなりのエネルギーを使っていた。
これでは最強フォームになってG3を倒すなんてことは出来ないだろう。
それでもまだハローライドをするくらいの余力は残っている。
G3が武装派であるのならば、近接戦が得意な肉体派を呼ぶのはやめたほうが良い。
ここは敵を翻弄する特殊なメンバーを呼ぶべきだ。
『ハローライド・ミチシゲサユミ!』
『ハローライド・サトウマサキ!』
ディエッグはモーニング娘、メンバーの二人を召喚した。
どちらも相手を惑わすことに関してはピカイチの能力を持つ人材だ。
ディエッグはまず道重さゆみの映像にお願いをする。
彼女の特殊技能でG3のペースを乱すつもりなのだ。
「道重さんっ!お願いします!!」
さゆみの映像はスーッと息を吸い込み、口から超音波を発生させる。
その超音波の及ぶ範囲は広く、半径30mほどにさゆみの歌声が届いていく。
全身を機械の装甲で固めたG3-Mには超音波攻撃は効果大だ。
ほぼすべての機能がエラーを起こし、30%以下の力しか出さないセーブモードに切り替わる。
もちろん、新垣里沙本人にも効果は及んでいる。
独特の発声により精神が不安定になってしまうのだ。
(こ、これは酷い……フクちゃんいったい何をしたの……)
戦闘もまだ序盤だと言うのに仮面ライダーがこれほど弱るのは珍しい。
それだけ現リーダー道重さゆみは強大なパワーを持っているということだろう。
しかし、これだけG3を弱らせてもイクタ達にチャンスは訪れなかった。
何故か?
それはイクタも超音波で苦しめられていたからだ。
さゆみを召喚した張本人であるディエッグも眩暈を感じる。
絶対音感を持つ佐藤優樹の映像が最も苦しんでいた。
味方に被害を与えてしまう道重、一筋の光明がそこに差し込むことは無かった。
超音波が他の若い子に流れまくるのでは使い物にならない。
これでは戦いどころではないので、結局道重を解除するしかなかった。
イクタが「道重さんを呼ぶのは今日が最初で最後……」とブツブツ呟くほどなので相当キツかったのだろう。
「えりぽんごめん、まさかこれほどとは」
「……えりは大丈夫と。それよりまさきちゃんが」
「あっ!!」
佐藤優樹の映像が死にそうな顔をしているのでディエッグは驚く。
そしてそのまままーちゃんは消えてしまった。
それだけ彼女にはストレスだったのかもしれない。
「そんなぁ……ごめんね、みずきのせいで」
ディエッグは優樹に謝るが、自身もかなり辛かった。
なけなしのエネルギーを使ったというのに二枚とも不発に終わったので堪えているのだ。
超音波が無くなるなりG3が立ち上がったこともディエッグの精神をすり減らす要因となっている。
「ハァ、ハァ……一時はどうなることかと思ったわ」
G3に備わるメカの大体が機能を取り戻しつつあった。
超音波を受けている間は危険だったが、喉元過ぎれば熱さを忘れるというものだ。
「それにしてもフクちゃんの能力なーにー?それ。
どうせモーニング娘。には攻撃出来ないとか思ってたんでしょー」
「いえ……そんなことは……」
「ダメダメ無駄よ無駄。安倍さんくらい呼ばないと私は止まらないわよ~?」
「えっ?」
「んっ?」
「そうやんみずき!安倍さん呼べばいいっちゃん!」
安部なつみはモーニング娘。の初期メンバーであり、里沙の最も尊敬する先輩である。
里沙も言っていたが、もし召喚することが出来たらG3は手出し出来なくなるだろう。
しかしディエッグはあまり乗り気ではなかった。
「だめだよぉ……安倍さんを呼ぶなんて畏れ多いよぉ……」
「ちょっと!そんなこと言ってる場合?」
「違うのえりぽん、安倍さんみたいな凄い人呼んだらみずき空っぽになっちゃう。」
ディエッグは強いメンバーを召喚するほどエネルギーを多く消費するのだとイクタは思っていたが
実際はそうではなく、彼女が凄いと思うメンバーを呼ぶ時に大量に消費するのだった。
特にハロプロ歴の長い先輩であるほど偉大であると思う傾向にある。
先輩らを一斉に召喚するファイナルハローライドで消耗が激しかったのはそのせいだ。
その理屈でいくとモーニング娘。OGの生写真を使う時はおびただしい量の力を使うことになる。
レジェンドとも言われる初期メンバーを呼んだりしたら、
一発でディエッグはガス欠してしまうことだろう。
「というわけで安倍さんはちょっと……」
おかしな仕組みではあるが、イクタはすぐに納得できた。
自分が新垣里沙を呼べたとしたら、それだけで全精力を使ってしまうような気がしたからだ。
ここまでの一連の流れを聞いていたG3は安心して攻撃を再開する。
「なぁんだ結局安倍さんは来ないんじゃないの、おどかさないでよ。」
梨沙子はただ一人地べたに座っていた。
ガトリング銃の音は聞こえるし、イクタが逃げ回るような足跡と手跡も見える。
得体の知れない不協和音に苦しまされることもあった。
しかし肝心の戦いが全く見えていない。梨沙子には透明は見えないのだ。
自分を破ったイクタ、ディエッグ、G3-Mの3人はどんな戦いをしているのか
梨沙子にはそれが気になって仕方が無かった。
そんな梨沙子に、何者かがサングラスを手渡す。
「これ使いなよ、見たいんでしょ?」
「ノブアキくん……来てたの。
そっか、新垣さんの担当だったっけ」
声の主はタチバナの青年であった。
萩原舞にしか支給されなかったサングラスを特別に分け与えたのだ。
おかげで梨沙子も戦いを見れるようになった。
「どうかな、梨沙子ちゃん」
「さっきから聞いてて思ってたんだけど、あの3人ふざけすぎじゃない?
戦いなのに緊張感が無いっていうか……」
「僕にはとても楽しそうに見えるけどね」
「カズキくんは他人事だからそんなことが言えるのよ。
私、すごくやだ。あの3人の誰がセンターになっても。
愛理なら許してあげてもよかったのに……なんであんなこと……」
梨沙子は何も出来ない自分を歯がゆく思っているようだった。
リィサーコが敗北した今、優勝候補は4人に絞られている。
アイドルとしての経験値が少ない生田衣梨奈と譜久村聖。
OGなのにモベキマスに戻ろうとしている新垣里沙。
他のメンバーにセンターを譲ろうとする鈴木愛理。
誰が優勝しても梨沙子にとっては不満だ。
梨沙子の気持ちを汲み取ったのか、青年が情報を一つだけ提供する。
「梨沙子ちゃん、良いこと一つだけ教えてあげよっか?」
「なに」
「あの3人の中で本気でセンターになりたいと思ってるのは
生田衣梨奈ちゃんだけなんだよ。」
「え?……」
「詳しく教えて」
譜久村聖がセンター獲得に積極的でないことはなんとなく感じ取っていた。
しかし新垣里沙もそうではないとはどういうことだろうか
梨沙子にはそれが気になった。
だが青年はそう簡単に教えてはくれないようだった。
「教えるのは一つだけって言ったでしょ、もうおしまい。」
「……本当にズルい」
リィサーコでなくなった梨沙子の立場はとても弱かった。
以前ならライダーを辞めるとでも言えば、慌てた青年がペラペラ喋ってくれたものだが
今の梨沙子にはそれが出来ない。
取引材料と言えるものが無いのである。
「そんな顔しないで、今は言えないけどいつかは教えてあげるから」
「いつかっていつ?」
「えっと……新垣さんが優勝する時、もしくは負ける時かな?」
つまりは里沙の目的が成就する時か、潰える時ということだ。
目的に向かっている最中である限りは秘密をリークするのは難しいのだろう。
梨沙子は色々考え、ある結論を導き出す。
「はぁ……私はフクちゃんと生田ちゃんを応援しなきゃならないのね。」
「えっ?別にそんなことしなくてもいいけど」
「ねぇノブアキくん、私は1対3でやられたんだけど、これは卑怯には入らないよね?」
「まぁ、ルールに反してはないよね。」
「じゃあG3を1対3で倒すのも卑怯じゃないのね、わかった、ありがと」
「え?梨沙子ちゃんいったい何を……」
梨沙子は立ち上がり、大声でイクタとディエッグに情報を知らせる。
G3-Mの攻略法に関するお宝情報だ。
「聞いて!!G3の武器はその銃だけじゃないの!
他の武器のほうがもっと危険だから気をつけて!!」
仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈
仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音 敗退
仮面ライダーなでしこ / 真野恵里菜 敗退
仮面ライダーゲンキックンホッパー / 萩原舞 敗退
仮面ライダーオーデン / 竹内朱莉 敗退
仮面ライダーパレット / 鈴木愛理
仮面ライダーディエッグ / 譜久村聖
仮面ライダーBig W / 熊井友理奈&徳永千奈美 敗退
仮面ライダーハウガ / 飯窪春菜 敗退
仮面ライダー裂鬼 / 清水佐紀 敗退
仮面ライダー910 / 中島早貴 敗退
仮面ライダーめん王 / 勝田里奈 敗退
仮面ライダーリィサーコ / 菅谷梨沙子 敗退
仮面ライダーG3-M / 新垣里沙
最終更新:2012年09月12日 12:36