アットウィキロゴ


第28話「運命の対決」


新垣里沙の装着するG3-Mは他のライダーとは大きく異なっていた。
強化装甲という位置付けであるため、服を着るように鎧の一つ一つを装着しなくてはならないのだ。
仮面ライダーらしく一瞬で変身、というわけにはいかないのである。
しかもこのスーツ、一人で着ることが出来ない仕様になっている。
戦闘中に外れたりしないように、プロに装着をサポートしてもらわないといけないのだ。
そのため里沙はいつでも好きに変身することが出来ず、
G3トレーラーというG3-M装備を搭載した車両の中でしか準備をすることが出来ない。
これらは原作に準拠した設定となっており、
里沙がなかなかライダーバトルに参加出来なかったのはこの制約が有ったからである。
だがタチバナの技術力ならG3-Mを一瞬で変身できるよう改良出来たはずだ。
それでも彼らはあえて面倒な変身方法を採用していた。
その理由には、ハロプロ内の人事が関係していた。
ハロプロにライダーバトルをさせる計画は最近始動したわけではない。
一年以上前から始まっていたのだ。
メンバーそれぞれの特性を調査し、誰がどのライダーに適合しているか確認するのにかなりの時間を要したのである。
最後の適合者、飯窪春菜を発見したところでタチバナに悪いニュースが舞い降りる。
それは新垣里沙のハロプロ卒業のお知らせだ。
その時には既にG3-Mを里沙に合うよう改造と調整を終わらせていたので
今更他の適合者を探し出し、その人に仕様を合わせるのは無理があった。
難しい状況でも里沙にはライダーバトルに出てもらうしか無かったのだ。
だがそうなると、卒業したのにモベキマスのセンターを目指すという図式になる。
里沙のライダーが他のライダーと同条件ではどこからか不満が湧き出てしまうだろう。
そのため、タチバナはG3-Mにハンディキャップを設定することにした。
それが装着変身という手間のかかる方法というわけだ。
ライダーバトルに参加しにくい仕様なので、タチバナは埋め合わせとしてG3-Mの訓練施設を用意した。
里沙はすぐに施設を気に入り、さらにお気に入りの武器を見つけたようだった。
里沙はその武器でイクタとディエッグを倒すつもりだ。

「ちょっとぉ~梨沙子ちゃんバラさないでよ!」

いきなり梨沙子が秘密を喋りだしたのでG3は焦ってしまう。
なぜ梨沙子がそんな情報を知っているのか疑問だったが
その隣にいた青年を見てすぐに納得する。

(あいつか!)

G3だけでなくイクタとディエッグも梨沙子のほうを振り向く。
そして、そこにいた青年を見て驚いてしまう。二人も青年を知っていたのだ。

「幸太郎!うわ、なんでここにおるの?サイン欲しいっちゃん……」
「ノブアキさんがどうしてこんなところに?……王様ゲームの裏話おしえてほしいなあ」
「ちょっとちょっと、二人ともどうして本名で呼ばないの?」
「本名?」「えーっと」
「忘れたの!?僕ら一応共演してるんだけどね!」

青年らが漫才をしているうちにG3はイクタから距離をとっていく。
そして、これまで使っていたガトリング銃を折りたたみ、
代わりに小型のサブマシンガンを取り出す。
武器のスケールはダウンしたが、このサブマシンガンには狙いを定めるためのスコープがついている。
これでチョコマカ逃げるイクタに確実に当てようとしているのだ。
気配を感じたイクタはサブマシンガンに気づくなりディエッグに知らせる。

「あれはGM-01スコーピオン!小さいけど強力な銃っちゃん!」
「よく知ってるじゃない生田、でも名前が違う!これはチサトって言うんだよ」

ディエッグにはG3の持つ銃が危険とは思えなかった。
どちらかと言えば先ほどのガトリングのほうが凶悪に感じられる。
小さいサブマシンガンなので弱く思えたのだろう。

「え?あまり強そうには見えないんだけど……」
「あの銃はGG-02サラマンダーと合体してランチャーになるったい!」
「ランチャー?なにそれ」
「いいから気をつけて!」

イクタが言う通りにG3は「GH-01チサト」の銃身にタンブラーのような形状のアタッチメントを取り付ける。
これによりサブマシンガンはグレネードランチャーに変化したのだ。
G3はチサトのスコープを覗き、イクタに視線を送る。
このシセンからはもう逃げられないだろう。

「本当に詳しいわねぇアンタは……でもまたまた名前が違う。
そんなにかっこいい名前なんかじゃない、私のはチサトとミノリって言うのよ。」

G3は引き金を引き、グレネード弾を発射する。
「GH-01チサト」の命中制度と「GM-02ミノリ」の爆発力が組み合わさっているので、
高い確率でイクタのスーツを爆破することが出来るだろう。
それだけは避けたいとイクタは必死で逃走するが、
行動パターンを理解しだしたG3にとって当てるのは難しいことではなかった。
イクタの行き先を先読みして、そこにランチャーをぶっ放したのである。
このまま進めば順調にイクタに着弾するだろう。
G3がそう思った時には、ディエッグはすでに生写真を銃に挿入していた。

『ハローライド・タムラメイミ!』
「まゆげ、ビーーム!!」

芽実の眉毛から閃光が放たれ、グレネード弾を空中で爆発させてしまう。
危機一髪だったのでイクタはディエッグに感謝する。

「わぁ!みずきありがとう!」
「ふふふ、任せて」

ディエッグは偉大な先輩を召喚するほど負担増になると以前書いたが、
逆に言えば同期や後輩ならそれほどコストを使わずに呼ぶことが出来るということになる。
9期10期、そしてスマイレージ2期ならば省エネ可能だとディエッグは考えたのだ。
もっとも、同じカードを間をおかずに使用することは出来ないので
鞘師里保、石田亜佑美、佐藤優樹、工藤遥、田村芽実以外の新メンバーを使わなくてはならない。
残りの生写真をどこで使うかがディエッグの腕の見せ所だ。
好機を見出したディエッグに対して、G3は浮かない表情をしていた。

(なかなか良いビーム出すじゃないの……ちょっとやばくなってきたわね)

G3は芽実の映像にグレネード弾を落とされたので、焦燥感を感じてしまう。
まさか過去に自分が使った技にしてやられるとは思ってなかったのだ。
だがG3にはまだ武器が残されている。
ビームを受けても平気で、かつ確実にダメージを与えるウェポンを使えば良いのだ。
G3は右手に新たなアタッチメントを取り付ける。
その武器は先端がモリのように尖っていた。

「GA-04アンタレスっちゃん!みずき気をつけるっちゃ、あの武器は伸びる!」

イクタが言うが早いか、G3は右手に取り付けられたモリを芽実に向けて発射する。
尖った先端と右手はワイヤーで繋がっているので、
まるで新体操の選手が長いリボンを操っているかのように見える。
ワイヤーはビームを貰ってもブレることなく、芽実を一突きして消滅させてしまう。

「アンタレスじゃなくてカオルよカオル。」

G3はGT-04カオルが取り付けられた右手に力を入れて、ワイヤーの軌道を変更する。
次の狙いは芽実の近くにいたディエッグだ。
モリの先端がディエッグ目指して飛んでいく。

(怖い……でもこれくらいなら受け止められる!)

ディエッグは飛んできたモリを両手で掴み、ロックしてみせる。
動きを止めてしまえばなんてことないと考えたのだ。
だがこの対応は悪手であった。

「みずきダメ!離して!!」

リボンを扱う要領でG3はワイヤーをぐるぐると回していく。
その結果GT-04カオルはディエッグの腕に巻きつき、ガチガチに固めてしまった。
ディエッグはロックしようとして、逆に自分がロックされたことになる。
それを確認したG3はワイヤーをさらに大きく回していく。
その回転はとても力強く、ディエッグは全身引っ張られてしまう。
一回転するたびに地面に叩きつけられるので、ディエッグのスーツがどんどん破壊されていく。

「うっ……」

リィサーコ戦での蓄積もあるので、ディエッグの耐久力は限界に近づいていた。
これはまずいと思ったイクタは逃げるのを辞めて、
G3目掛けて一直線に前転運動を開始する。
加速してからのキックをぶつければ大ダメージを与えられるとイクタは考えたのだ。
ところがG3は、イクタが迫ってくるというのに焦りの一つも見せない。

(まったく生田は単純なんだから、思った通りに動いてくれちゃって)

G3はイクタが近くに来るように仕向けていたのだ。
ディエッグに集中して隙を見せたのも、全てはイクタを倒すためだ。
G3は手に取り付けていたGT-04カオルをすぐに取り外し、
右手に巨大なノコギリ状のソード、左手にコンバットナイフを装着する。
そしてキックを繰り出すイクタに刃のカウンターを喰らわせるのだった。
二刀流の威力はすさまじく、イクタのスーツを深く切り裂いてしまう。

「うぁっ……」
「残念生田、私は銃よりこっちのほうが得意なのよ。」

G3の斬撃にやられたイクタは弾き飛ばされ、地面に倒れこむ。
ソードとコンバットナイフをG3が扱うというのはイクタも知っていた。
原作ではGS-03デストロイヤーとGK-06ユニコーンという名前だったことも記憶している。
しかしそれらの武器は作中での活躍がいまいちであったため、印象が薄かったのだ。
イクタの中ではG3は重火器をメインウェポンとするライダーとなっていた。
少なくともソードとナイフでバリバリ近接戦闘を行うようなライダーでは無かったはずだ。
だというのにG3がいきなり剣術スタイルを取り出したので、
イクタは対応しきれず斬られてしまったのである。
だがイクタは斬られながらもあることを感じ取っていた。
それを確かめるためにイクタはG3に質問をする。

「やっぱり新垣さんは凄いです……ところで、一つ聞いていいですか?」
「ん?言ってごらん」
「今、新垣さんが使ってる武器ってなんて名前なんですか?
 デストロイヤーやユニコーンじゃないってことは分かるんですけど」
「おぉ~学習したじゃん、そう、私の武器の名前はユキノとジャンヌって言うのよ。
 剣がユキノでナイフがジャンヌね。」
「!!……そうですか、分かりました、戦いを続けましょう」
「よぉし、かかってきな」

ソードとコンバットナイフの名を聞いてイクタは確信した。
だがその確信は、イクタがG3に勝つ確率を大きく下げる要因にもなっていた。

(えりがハンドスプリングやバトンとかの個性をライダーに反映させたように、
 新垣さんも個性を反映させとるったい……
 しかもよりによって、新垣さんが反映させたのは"殺陣"の技術っちゃ。
 新垣さんの迫力ある殺陣で襲い来られたら勝てる気がしないっちゃね……
 う~~~ん、どうしたら勝てるとよ……)

歴代モーニング娘。が本気で喧嘩をしたら誰が勝つだろうか。
上下関係完全無視の状況下では誰が最強なのか考えてみよう。
運動神経の良い吉澤ひとみが有利かもしれない。
拳での殴り合いなら根性のある藤本美貴が勝つように思える。
では、そこに木刀が有ったらどうなるだろうか?
木刀でなくてもいい、その辺に落ちてる角材の使用を許可したらどうなるか。
おそらくだが、新垣里沙の勝率が大幅に上がるだろう。
里沙は自身の出演する舞台で本格的な殺陣を経験している。
殺陣は相手を倒すことを目的としている訳ではないが
それでも未経験の素人よりはずっと上手く立ち回ることが出来るはずだ。
しかも里沙はつい最近まで現役のモーニング娘。であった。
体力面ではまったく問題ないと言える。
妊娠による身体の女性化についても当分は関係なさそうだ。
以上の理由から、喧嘩最強は新垣里沙であると推測出来る。
そんな里沙が、二刀流でイクタの前に立ちはだかっている。
今のG3はさっきと違ってスキがまったくない。
どこから攻めても反撃されそうだとイクタは感じる。
G3にスキがあると思いこませるために「大スキ大スキ大スキ~~~!!」と叫びながら襲いかかるのはどうかと考えるが、
イクタはすぐに却下する。ろくなことにならないのが目に見えている。

(みずきはどうしてると?)

イクタはディエッグのほうにチラリと視線を送った。
地面に何度も叩きつけられたのが効いているようで、
まだ両膝を地につきうずくまっていた。
この様子だと応援は期待出来なさそうだ。
イクタがそう感じたその時、G3は距離を大きく縮めた。
視線を送る一瞬の間に迫ってきていたのだ。

「余所見しないっ!!」

イクタは直前になってG3の攻撃に気づき、エビ反りの形でソードを回避する。
運動神経が良いだけあってその反射神経はなかなかのものだった。
しかしこの体勢ではもう一振りの刃を避けることは出来ない。
G3は下からナイフを突き上げ、ピンと張った背中を切り裂いていく。

「しまった……!」

G3は刺さったナイフをガリガリと動かしてイクタのスーツを傷つけていく。
小型な剣とは言え切れ味は十分だ。さすがはジャンヌの名を冠した武器である。
イクタはナイフから離れるため半身を上げようとするが
それを阻止しようと、G3はソードを装着した腕で上から押さえつける。
イクタは無理のある体勢で上下から来る刃に耐えなくてはいけなくなってしまった。

(本格的にまずかね……はやくなんとかせんと)

イクタはどこからともなくイクタキャリバーを取り出す。
剣にも銃にもなるこの武器で状況を打破しようと思ったのだ。
この武器についてはG3も知っていた。
空飛ぶリィサーコを撃ち落すため使用したのを見ていたのだ。

(これはたしか梨沙子ちゃんを撃ってた銃!まさかこの距離で撃つつもり?
 あ、でも剣にもなってたっけ、生田アンタいったい何をするつもりなのよ。)

G3は早々に決着をつけようと、両腕に更なる力を加える。
おかげでナイフもソードも装甲の深くまで入り込むことが出来た。
さらに全身をイクタに密着させることで、イクタキャリバーの攻撃が当たらないように備える。
ボクシングで言えばクリンチのような状態だ。
G3は密着しながらも刃を押し込めば良い。
しかしイクタはある程度のリーチが無ければG3にダメージを与えることが出来ない。
G3とイクタは条件がまったく違ったのだ。

G3が刃を進ませるたびに背中らへんがバチバチ言ってるのをイクタは感じる。
ナイフはもう装着者を護るセイフティガードの表面にまで達しているのだろう。
その深さを保ちながら刀身を移動させたらイクタの重要な機構を壊せるはず。
G3はスイカの皮を切るようにゆっくりとナイフを動かしていく。
イクタはイクタキャリバーから銃弾をバンバン撃つことで抵抗するが、
完全に身体を密着されてしまっているので弾丸を当てることが出来なかった。

「無駄だよ、覚悟しな」
「うぅ……」

現役時代は何度も里沙に抱きつきたいと思ってた衣梨奈だったが
よもやこんな形で向こうから抱きついてくるとは思ってもいなかった。
スーツ越しの抱擁なんて気持ち良くもなんともない。
胸に刺さるソードを止めるのに必死で、むしろ苦しい程だ。
この辛さから開放されるにはどうすれば良いのか考えた結果、
最強フォームになるしかないという結論にイクタは達した。
ライジングイクタになれば性能が向上し、G3も振り払うことが可能と思ったのだ。
しかし彼女には最強フォームになる方法が分からなかった。
以前から試しているが、一向に姿が変わらないのである。
ここでイクタはタチバナから送られた、リィサーコ参加のお知らせメールを思い出す。
そこには「リィサーコは条件を満たしても最強フォームにはなれない」と書かれていた。
つまり変身にはある条件が必要ということだ。
ディエッグにあって自分にないものは何か、イクタは頭をフル回転させて考える。

(あ、勝利数っちゃん)

これまでディエッグは「オーデン」「ハウガ」の二体に勝利している。
それに対してイクタは「めん王」に一勝しただけだ。
この一勝の差が最強フォームになれるかどうかの境目である可能性は十分にある。
しかし、そこまで分かっていても今のイクタには何も出来なかった。
今すぐG3のホールドから逃れたいから力が欲しいのに、
ライダーをあと一人倒さないといけないなんてナンセンスだ。
ところが、その一勝をすぐに手に入れる方法が一つだけ残されていた。

(みずきを……倒せばいいんだ)

今のディエッグはかなり弱っている。
イクタキャリバーで狙撃すれば倒せるかもしれないのである。
背中を全て剥ぎ取られる前に勝ち星を一つ増やし、
その後すぐに最強フォームになればG3にも勝てる。
危険だし、安定感のかけらもない作戦ではあるが
試す価値が無いとも言い切れない。
イクタはうずくまるディエッグの方へ重厚を向け、
一発パァンと銃弾をを放つ。

イクタの銃弾はディエッグのすぐそばの地面に撃ち込まれていた。
外れたのではない、外したのだ。
トリガーを引く直前で銃口の向きをズラしたのである。

(倒せるわけなかよ、約束を破ったらえりは人間じゃなくなるっちゃん……)

イクタとディエッグは二人で決勝戦を行う約束をしていた。
だからこそディエッグはリィサーコ戦で協力してくれたのだ。
そんなディエッグを裏切るなんてイクタには出来ない。
ましてや尊敬する新垣里沙の前ならなおさらだ。
仲間を裏切る形でG3に勝っても意味が無いと思ったのだろう。
だがしかし、イクタは勝負を諦めてはいなかった。
より不確実で、不安定で、危険ではあるが、
このピンチから脱する手段をイクタは思いついていたのだ。
ヒントを与えてくれたのはイクタの背中だった。
傷つけられてバチバチと鳴っているの聞いて、閃いたのである。

(えりはえりの力で新垣さんを倒す!!
最強フォームになれなくても出来ることはある!!)

イクタは銃を地面に落とし、その手でベルト側面についているフエッスルを掴み取る。
今回選んだフエッスルは緑色の「バッシャーフェイク」だった。
イクタはそれをベルトのバックルに差し込み、音を鳴らせる。

「なにこの音!なにをしたの!」
「新垣さん……一緒にシャワー浴びませんか」
「ヒッ!?」

この音はバッシャーマグナムという名の水鉄砲を手元に呼び寄せる効果を持っている。
リィサーコの弾丸の勢いを落とす時に使った程なので、水圧と水量はなかなかだ。
イクタは水鉄砲を掴むと、すぐに上空に向けて撃っていく。
激流は勢いよく空に舞い上がり、そして滝のように降ってくる。
イクタとG3はあっという間にビショ濡れになってしまった。
イクタもG3も最新の技術で作られた機械であるため、
当然のように防水機能を備えている。
だから本来ならばズブ濡れになっても影響は無いはずだった。
しかしいくら防水性が高くても、中身の基盤が剥き出しではふせぐことが出来ない。
イクタの背中の機械は一瞬にしてショートしてしまった。

水が大量に流れ込むことでイクタの背面はショートしてしまった。
スーツ内部の機械がオジャンになるとイクタは戦えなくなってしまう。
背中が焼けただけでは全機能が停止するわけではないが、大損害には変わりない。
だが、そのおかげでイクタはG3を道連れにすることが出来た。
イクタの背中をガリガリと削っていたナイフはもちろん金属製だ。
発生した電気は伝導体であるナイフを伝わり、G3のスーツに強烈な電流を流し込んでいく。
しかも電気の通り道はナイフのみではない、滝ように降り注ぐ水流すべてが伝導体なのだ。
イクタから流れる電気がビショ濡れのG3を焼いていく。

「新垣さん!これがえりの本気です!」
「い、生田、アンタ正気なの!?」

激しく流れる電気はイクタとG3の体を行ったり来たりしている。
この電気の流れは、水鉄砲を持つ握力を失うまで続いていた。
おかげでどちらのスーツも真っ黒に焼き焦げてしまっている。
ここまで酷い損傷なら装着者の安否も心配になってくる。
梨沙子は隣にいた青年に必死の形相で尋ねだす。

「ねぇ、あれ大丈夫なの!新垣さんと生田ちゃん、生きてる!?」
「落ち着いて梨沙子ちゃん、タチバナのシステムはあの程度の電気には負けないよ。
 ハロプロの子たちを傷つけないことを最優先に設計したんだ、絶対大丈夫。
 ただ、あの二人の戦いはもう長くは続かないだろうね。」

イクタもG3も膝から崩れ落ち、地面に倒れこんでしまう。
スーツが弾け飛ばないということはまだ大破とは見なされていないようだ。
青年の言うとおり、ここから戦いはクライマックスへと突入する。

(手は動く、脚は……残念、動かん。
それになんだか身体が凄く重かね……)

イクタのスーツはほぼ全ての機能を失っていた。
まだ一部は動作するが、まともに戦えたものではなかった。
イクタキャリバーなどの各種武器の呼び出し機能停止。
装着者の運動神経をライダーに反映させる機能停止。
跳躍のサポート停止。
メインモニターの八割が損傷。
パンチ力、キック力などの基本スペック97%減。
そして、自重を支える人工筋肉が全損傷だ。
これから衣梨奈は重いスーツを自分で支えながら戦わなくてはならない。
こうなってはもう、スーツを脱いだほうが強いのではないかと思うレベルだ。

(くっ……重い……立てたもんじゃなかよ)

戦闘用の機械がたくさん詰まっているスーツは重くて当然だった。
見た目はスリムだが、その分密度が凄いのだ。
中学生の少女が支えられるものでは決して無く、イクタは地面を這うことしか出来なかった。
そんなイクタに対して、G3は二本の足で立ち上がっていた。
同程度の損傷だと思い込んでたイクタはひどく驚く。

「新垣さん!?どうして立てるんですか!」
「鍛え方が違うのよ、鍛え方が」

里沙はこう言っているが、実際はスーツの破損度が違うだけだった。
どちらも同じ電流を浴びていたが、
イクタはスーツ内部から、G3はスーツ外部から受けたという点で差がついたのだ。
そのためG3は立つことが出来たと言うわけだ。
とは言ってもG3の損傷だってかなりのものである。
立っているだけでフラつくし、腕の力もソード「ユキノ」を握るのがやっとだ。
こんな状況では殺陣を見せることなど出来ないだろう。

「……正直悔しいよ、生田にもっと私の剣術を見せてあげたかった。
なんでこんなに身体が重いかなあ……」
「えりも悔しいです!えりはこんなもんじゃなかですよ!!
バトンも、ゴルフも新垣さんに見て欲しかったのに……もう何も出来ません。」

イクタには攻撃手段は一つしか残されていなかった。
ただのパンチ、本当にそれしか無いのである。
技術でも個性でもなんでもない原始的な攻撃でしか勝つことが出来ないのだ。

G3は一歩一歩イクタに近づいて行く。
先ほどの足捌きと比べると笑ってしまうような遅さだが、
歩くことが出来ないイクタにとってはそれだけで脅威になっていた。
このままでは主導権を握られてしまうので、イクタは地を這って前進していく。
鉄の塊を身につけてほふく前進をするようなものだが、なんとか移動することが出来た。
しかし、これがいったい何になると言うのだろう。
G3のところに着いたところで何も状況は変わらない。
足を殴るくらいしか出来ないイクタに対して、G3は剣を持っているのだ。
リーチも破壊力も段違いすぎる。

「生田……もう観念しな、アンタにはまだ早すぎたのよ」

G3は地面を這うイクタを攻撃するために、刃を下にむけて倒れこむ。
ヘナチョコな剣術しか使えなくても、重力を利用すれば速い斬撃を放つことが出来るのだ。
ほとんどソードを落とすような形で、イクタの肩を傷付ける。
イクタの装甲はかなり脆くなっており、ただソードがぶつかっただけで派手な火花を散らしてしまった。
そしてスーツが弱体化しているのはG3も同じだ。
勢い余って顔から地面にぶつかってしまい、全身が破裂音とともにスパークしてしまう。
その様はまるで地雷でも踏んだかのようだった。
イクタの肩を壊しただけで全身にダメージを受けるのはまったく割に合わない。
この程度で傷つく己の弱さにG3は驚きを隠せなかった。

(なにこれ、私こんなに弱ってるの!?
なるべく反動が来ないように戦わないといけないのね……)

少しの衝撃で破裂してしまうのならば、
イクタの弱々しい攻撃を受けてもダメージが大きいのではないかとG3は考えた。
それならばここは一旦離れるのが得策だ。
まだ動く脚で距離をとろうとG3は起き上がる。
しかしイクタがそれを許さなかった。
千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかないのだ。
上半身に力を入れ、G3の右足に飛びかかる。
飛びかかったとは言っても30cmも跳べていなかったが、
足を掴むとという目的は達成出来た。

「逃がしませんよ新垣さぁん……」
(相変わらずね生田、その執念にはホント頭が下がるわ)

イクタはこれが好機と足を叩こうとするが、
それより先にG3に左足で顔を蹴られてしまった。
その衝撃で、イクタの仮面とG3の左足のどちらも火花をあげて炸裂する。

「ぎゃあ!」
(生田、許して!!)

里沙にとって後輩の顔を蹴るなんて不本意でしか無かったが
ここで負けるわけにはいかなかった。
いや、正確にはイクタを勝たせるわけにはいかないのだ。

イクタから離れることに成功したG3だったが、その胸の内はモヤモヤしていた。
自分の行為は「逃げ」だったのではないかと思ったのだ。
後のことを考えての戦略的撤退であるので恥じることは何もないし、
ここから巻き返せば良いだけの話なのだが、
まっすぐぶつかってくる後輩から退いたことに負い目を感じてしまったのだ。

(生田、ボロボロだったじゃん……なんで私は逃げたの?
 逃げなくても勝てたんじゃないの?先輩なのに、なっさけない。)

考えなくても良いことを考えてしまうことで、G3に隙が生じてしまった。
そのせいで、突如後ろに出現した謎の存在に気づけなかったのだ。
凄い力で抱きつかれることで、G3はようやく存在を認識する。

「だれ!?」

振り向いた先にいたのはスマイレージの中西香菜であった。
言うまでもなく、この中西香菜は本人ではない。
ディエッグの呼んだ映像だ。
ゴリラ並の力でG3を押さえつけているのがその証拠である。

「フクちゃん!うずくまってたはずじゃ……」
「もう平気です、えりぽんに起こされましたから」
「!?」

何度も地面に叩きつけられて弱っていたディエッグだったが
自分の付近に銃弾が撃ちこまれたことが気付けとなり、復活することが出来た。
スーツはあちこち損傷しているし、エネルギーも不足しているし、
さらにグルグルと回されたことで吐きそうなくらい気持ちが悪いが
イクタのピンチを無視するわけにはいかなかったのだ。

(さっきの弾丸、えりぽんはみずきを起こすために撃ってくれたんだよね。
 ごめんねえりぽん、二人で新垣さんを倒すはずだったのに、私だけ休憩しちゃって……
 私にはかななんを呼ぶことくらいしか出来ないけど、きっと役にたってくれるはずだよ!)

残り少ないエネルギーを搾り出し、省エネで召喚出来る中西香菜を呼んだのだ。
香菜の映像は闘争心が弱く、他人を攻撃することなど出来やしない。
それでも相手に抱きつくことは出来るのだ。
おかげでG3の動きを止めることに成功した。
後はイクタがG3の機能を停止させるまで殴れば良い。

「えりぽん今だよ!」

声を出してけしかけるディエッグだったが、イクタの様子がおかしい。
せっかくのチャンスだと言うのにG3の方を見ていないし
なにやらキョロキョロして落ち着かないようだった。
次に出るイクタの発言を聞いて、ディエッグもG3も驚愕することになる。

「見えない……なんにも見えない!!」

イクタの発言にG3は青ざめる。
自分が顔面を蹴ったから、それで衣梨奈の目を傷つけてしまったのではないかと思ったのだ。
そんな里沙を安心させるかのように青年の声が聞こえてくる。

「生田ちゃん落ち着いて!痛みとかは無いんだよね?」
「うん、痛くなかとよ」
「じゃあ安心だ、何も見えないのはイクタのカメラが故障したからだよ。
 ライダーシステムは神に誓って君達を傷つけないから、心配しないで」

青年の声を聞いて里沙と聖は安心する。
衣梨奈に危険が及ぶようなら悲しみで発狂したかもしれなかったからだ。
だが当のイクタは安心などしてられなかった。
まったく目が見えなくてはG3の居場所を突き止められない。
居場所が分からければ殴ることなど出来ない。状況は最悪だ。
G3の声のする位置を耳で探ろうとするが、それも難しい。
外部の音をスーツ内に入れる機能までもが壊れかけているのかもしれない。

(どうしよう本当にわからん……あとちょっとなのに!)

イクタの困惑をディエッグは感じ取る。
本当ならディエッグ自らG3にトドメをさしたいところだが
あいにくにもエネルギーが枯渇寸前で動くことが出来ないのだ。
聖には衣梨奈のように重い鎧を気ながらほふく全身をする体力も無いため
そこに突っ立っていることしか出来なかった。
そんなディエッグがイクタを助けたいと考えた結果、ある方法を思いつく。

「えりぽん!みずきがえりぽんの目になるよ!!」
「みずき……」
「えりぽんから見て、1番!黙ってキスでもしろ!香音ちゃん!」
「はぁ!?……あぁ、そうか!」

(フクちゃんいったいどうしちゃったの?)

背中にまとわりつく香菜の映像と格闘しながら、G3は疑問に思う。
イクタの目になる宣言をしたかと思えば、キスだの香音だの言い出す。
傍から見ればディエッグがおかしくなったようにしか見えなかった。
だが、これは聖と衣梨菜の間で通じる暗号なのだ。
この暗号は里沙がモーニング娘。を卒業した今だからこそ通用する。

「わかったっちゃん!そっちやね!」

イクタは今居た位置から右斜め45度の方向に向かってほふく前進を開始する。
そちらはまさにG3がいる方向であった。
ディエッグの意味不明な言葉でイクタが正確に動きだしたのでG3は混乱する。
さらに、ディエッグはイクタが進むたびにメンバーの名前をあげていっている。
それもまた意味の取りにくい暗号であった。

「田中さん、あゆみん、里保ちゃん、そうそう合ってる合ってる。」

どんどん接近してくるイクタに、G3は恐怖を感じてしまう。
すぐには来ないだろうとタカをくくっていたのだが
こうも円滑に来られたら早急に背中の香菜をどうにかしないといけなくなる。
膝打ちをしたり、足を踏んだりしてみるがなかなか消えてくれない。
そうこうしているうちにイクタはさらに接近してきている。

「道重さん、みずき、はるなん、そこだよえりぽん!」
「捕まえたっちゃ!!」

イクタに足を掴まれたところでG3はやっと暗号の意味を理解した。
ディエッグが喋っていた名前はモーニング娘。現メンバーのものだ。
ということは、名前の順は何かの曲のフォーメーションの順なのだ。
そういえば「黙ってキスでもしろ」という歌詞をつい最近耳にしたことがある。

(ワクテカ Take a chance、か……)

G3も思った通り、ディエッグの暗号はモーニング娘。の新曲から来たものであった。
新垣里沙も知らない曲を取り上げることで何のことか分からなくさせることが狙いだったのである。
「1番」はワクテカ Take a chanceの1番の歌詞を表す。
「黙ってキスでもしろ」はその歌詞が流れる時のフォーメーションを表す。
「香音ちゃん」は衣梨奈から見た鈴木香音の位置と距離を表す。
つまり「1番!黙ってキスでもしろ!香音ちゃん!」とは
「ワクテカ Take a chance」の「黙ってキスでもしろ」という歌詞の時の「鈴木香音」の位置と距離を示しすこととなる。
だんだんとメンバーの名前が変わっていくのはイクタとG3の間の距離が縮まっていっているからだ。
香音が一番遠く、飯窪春菜が一番近い。
秋コンのためにレッスンをし続けたディエッグとイクタは、相手との距離感覚を身体で覚えていたのである。
譜久村聖は学校の勉強は苦手だが、ハロプロに関しては天才的であることを分かっていただけただろう。
イクタはディエッグに感謝をしながらG3に襲い掛かる。

「新垣さん、えりは絶対センターになりたいんです!!」
「!」

1発、イクタは重い腕をあげてG3の足へとぶつけていく。
これにより脚部が故障してしまい、G3は立てなくなってしまった。
2発、香菜ごと倒れこんでくるG3の胸の位置に頭を持っていく。
イクタの頭とG3のボディが激しく衝突し、パァンといった爆発音が聞こえる。
3発、イクタは力の入らない拳を握り締めてG3の顔に当てようとする。
同じようにG3もソードを装着した腕をあげていたが
これほど近い距離ならば長いリーチはむしろ邪魔になっていた。
イクタのパンチが見事、G3の仮面にヒットする。

「えりの勝ちです!!!」

今までの火花とは比べ物にならない程の爆発が起こった。
二人とも動かなくなったかと思えば、
そのすぐ後にG3-Mのスーツが弾け飛んでしまった。
これはG3-Mが敗北したことを意味する。

「やったぁ!えりぽん勝ったね!」

勝利の喜びに酔いしれるディエッグだったが、
どうやらまたイクタの様子がおかしいことに気づいてしまう。
いくら声をかけても返事をしないのだ。
目だけでなく耳の機能まで停止してしまったように。

「えりぽん?どうしたの?大丈夫なの!?」

ディエッグの心配が最高潮に達した時、イクタはアクションを起こした。
なんとG3-M同様に変身が強制解除されてしまったのだ。
敗北以外で変身が解除されることはありえないので、ディエッグは混乱する。

「なんで?どうして?おかしいよ!えりぽん勝ったのに!!」

何が起きたのか確かめようとディエッグはケータイを確認する。
デスメールを見れば何か分かると思ったのだ。


「仮面ライダーG3-M」
が
「仮面ライダーイクタ」
に
敗北したことをお伝えします。


「仮面ライダーイクタ」
が
「仮面ライダーG3-M」
に
敗北したことをお伝えします。





 仮面ライダーイクタ / 生田衣梨奈 敗退
 仮面ライダーオーズッキ / 鈴木香音 敗退
 仮面ライダーなでしこ / 真野恵里菜 敗退
 仮面ライダーゲンキックンホッパー / 萩原舞 敗退
 仮面ライダーオーデン / 竹内朱莉 敗退
 仮面ライダーパレット / 鈴木愛理
 仮面ライダーディエッグ / 譜久村聖
 仮面ライダーBig W  / 熊井友理奈&徳永千奈美 敗退
 仮面ライダーハウガ / 飯窪春菜 敗退
 仮面ライダー裂鬼 / 清水佐紀 敗退
 仮面ライダー910 / 中島早貴 敗退
 仮面ライダーめん王 / 勝田里奈 敗退
 仮面ライダーリィサーコ / 菅谷梨沙子 敗退
 仮面ライダーG3-M / 新垣里沙 敗退 
















最終更新:2012年09月16日 21:20