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動く裏方と訪問計画

動く裏方と訪問計画

「まいったなぁ、まさか、人間に嫌われるなんて…。」
某所、黒ずくめの男は路地裏で呟いていた。
先日の夜、噂に聞いていた男と出会ったはいいが、一方的に攻撃を仕掛けられ、危うく逃げてきたのだ。
「僕は敵対するつもりないんだけどなぁ…。」

その時、ポケットからバイブ音が流れた。
震える携帯を取り出し、着信を確認すると、彼は電話に出た。
「…やぁ、暫くぶりだね、『正義の味方(ボク)』。」


「連絡がつかなかったのは忙しかったから。勘弁してほしいな、『正義の味方』。」
いかせのごれ高校の教室のベランダで、「その人」は電話をかけていた。
相手は自らの兄。「シン・シー」を名乗る正義の味方。

「そうそう。昨日の人外、何事もなかったかのように学校に来てた。…うん、怪我ひとつなかったね。」
「その人」は教室に眼を向けながら言った。
話題の人外は今どこかに出ているらしく、姿は見えないのだが。

「でもね、こっちも収穫あったね。」
にやりと笑いながら「その人」は言う。
「この学校にはまだまだ人外がいっぱいだよ。妖怪もいる。生物兵器の成り損ないもいる。いい餌場だと思わないかい、『君(ボク)』?」
暫く声を聞いていたが、「その人」は小さく頷いた。

「了解。じゃあ引き続き、情報収集をしておくよ。また近いうちに会おう、『君』。」
そう言い、通話を切った「その人」は、教室へと戻っていった。


無機質な音が続く電話を切り、彼は顔を上げた。
「やれやれ、多いのは妖怪ばかりじゃないようだね。これは暫く暇しなくていいかもしれないね。」
携帯を握り、彼は呟いた。
「そっちのことは任せたよ、『君』。」
彼の真っ暗な視界は、空いっぱいに広がっていく紫色のオーラを見た。


『おいおい、それ本当かよ!?「第五八話」のノラがいとも簡単にやられるなんて!』
春美は百物語組全員への報告を兼ね、一斉に昨夜の出来事を飛ばすと、真っ先に幹久朗から返答が帰って来た。
それに続いて様々なリアクションが帰ってくる。伊達にキリを除く98もの妖怪を纏めるのも楽ではないが、こればっかりは慣れていくしかない。

「幸い、ノラちゃんの再生力が秀でていたおかげで体の怪我は治ったけど、相当効いたみたいなの…。」
『もしかして、この間のヒキコちゃんも同一犯の可能性があるんじゃないかしら?』
「そうなの、ミサキさん。でもまだそうだとは断定できなくて…。」

『…いや、多分同一犯じゃ。』

「…ゴクオー君…。」
『確認させてくれんかの?ノラがやられた武器は、ナイフなんじゃな?』
「うん。手投げナイフが数本、突き刺さってたのを見たよ。」
『なら間違いない。ヒキコも同じ奴にやられた。』
「!」

『ちょっとまて、ゴクオー。何でお前がそうだと言いきれるんだ?』
『…以前、ヒキコを襲った奴と同じ奴に襲われての。そいつの思想を考えれば、可能性は高いと思う。それだけじゃけどの。』
「もしかして、ゴクオー君の鉄槌を奪ったのも…。」
『恐らくそいつじゃ。鉄槌は見つかったが、本格的に動き出したんじゃ寝てもおれんの。』

『…ノラ、教えてやれ。そいつの名前を。』
しばしの間の後、ノラの声が届いた。
『…シン・シー。人外を排除する『正義の味方』って、本人は言ってた…。』

「とにかく、このままじゃ私たちもだけど、他の人外さんたちが危ないかもしれない。」
『けど、どうするつもりなのよ?』
春美はかねてからの考えを提案した。

「一度、いかせのごれ在住の妖怪を訪問しよう。一人ずつがあたれば、十分いけるとおもう。」

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最終更新:2011年06月10日 22:20