『あの人から贈られた花菖蒲』
昼休み。
昼食を食べた後、本を読んでいると、トキコちゃんが近寄ってきました。
「カナミちゃん」
「何ですか?」
「ちょっとこっち来て」
「え、わわっ」
返事をする間もなく、私はトキコちゃんに引き摺られていきました。
一体何なんでしょうか…。
「これ」
「え…?」
確か、この花は―――。
「花菖蒲…?」
「うーちゃんにね、代わりに渡してほしいって頼まれたの」
「
ウツロ君が?」
私の為に、わざわざ花を?
「あ、
カナミちゃん。この花の花言葉、知ってる?」
「あ、はい。確か、『優しい心』と『優美な心』、でしたっけ」
「実はね、うーちゃんはその花言葉がカナミちゃんにぴったりだと思って、選んだんだよ」
「え、私に…?」
私はもう一度、花菖蒲の花言葉を思い出します。
『優しい心』と『優美な心』。
ウツロ君が私をそんな風に思っていたなんて……。
「嬉しいです…」
「良かったねー」
「はい、ウツロ君に宜しくお伝えください」
「うん!」
その後、花菖蒲を放課後まで玉置先生に預け、
帰り際に返して貰ってウスワイアに持ち帰りました。
「よし」
水の入った花瓶に入れた花菖蒲を見て、私は満足しました。
ウツロ君からのプレゼント。
嬉しいな……。
私からも何かお返ししましょう。
何がいいでしょうか……。
その時ふと、私は花菖蒲を貰った後に聞いた、トキコちゃんの言葉を思い出しました。
―――カナミちゃんはうーちゃんの事どう思ってるの?
私はその時『友達』だと思ってる、と答えました。
でも答えた瞬間、胸が少し痛みました。
そして心の片隅にいた、それに後悔する自分と、安堵する自分。
「何でかな」
でも、それは誰にもわからないでしょう。
私にすら分かりませんから。
もし本当に『友達』とは違う意味で、ウツロ君を見ているのなら、多分、トキコちゃん達の言葉を否定しなかったと思います。
「…ウツロ君」
灰色の髪とくすんだ金の瞳。
いつも無表情を浮かべている顔。
でもそれは時として、寂しげながらも、優しい笑顔になる。
そして言葉も、寂しさと優しさを帯びていて。
気付いたら、傍にいたくなる。
本当に、どうしてでしょうか。
花菖蒲が 自分の本当の『心』に 気付くのは
もう少し 先の話
「それはともかく、お礼は何がいいんでしょうか…うーん」
最終更新:2011年06月10日 22:21