土曜日。
シュウトは
アキヒロに頼まれていた書類を持っていくと、話を切り出した。
「隊長。ポリトワルサーカスを知ってますか?」
アキヒロはじろりと書類からシュウトへ視線を移した。
「いかせのごれで有名なサーカス団だろう?なんでもその団員たちは皆能力を持っているという。
それがどうした。」
「その
ポリトワルサーカス団員から勧誘を受けました。」
シュウトはズバッと本題を切り出した。
「・・・その団員とやらはお前がアースセイバーの隊員という事を知っているのか?」
「いえ、それはどうでしょうか。ウスワイヤに保護されるのを目的としてはいないようでしたから。」
機先を制す。それは、サーカスを保護させないというシュウトの意思を含んであった。
「・・・『潜入』という形にする気か。」
「価値はあるかと。」
「私情を含んでは?」
「・・・無いといえば嘘になります。しかしいざという時には僕が守ります。」
「「・・・。」」
二人とも黙りこむ。強い意志を持った視線が交差する。
やがてアキヒロやれやれと仕草をしながら口を開いた。
「・・・いいだろうシュウト、お前も色々頑張っているみたいだしな。
サーカス団についてはお前の好きにすればいい。ただし、報告と連絡、相談はしてくれ。」
「ありがとうございます。」
そんなやりとりの後、書類について少し話してシュウトは隊長の部屋から出て来た。
「よし。・・・さて、と。」
時計を見ると18時を少し過ぎたところだった。まだサーカスには十分間に合う。
「二枚あるもんな…誰と行こうか。」
チケットに書かれた
ピエロを見ながら、夕暮れに遭った女の子を思い返しつつ角を曲がるとシノとぶつかった。
「わひゃっ!」
「おっと!」
チケットが舞う。
「いてて・・・シュウト君じゃないっすか、ちゃんと前見て歩いてくださいよ・・・。」
「すいません。・・・って、曲がり角なんですしこれは両方が悪いんじゃ・・・。」
「まぁいいっすけど。ん?なんすかこれ・・・あーっ!」
「!?」
「最近有名なポリトワルサーカス団のチケット!しかも指定席じゃないっすか!わー!いいなぁ!」
ピン、と来るシュウト。
「シノさん、よかったら今夜行きません?」
「行くっす!」
二つ返事のシノににっこりと笑うシュウト。
「それでは、7時にエントランスで。」
「いっそいで仕事終わらせて来るッすよー!」
懲りずにものすごい勢いで角を曲がると、隊長の部屋に突進していくシノ。
シュウトはまた誰かとぶつからないといいが、と少し思いながらその場を後にした。
7時。
シュウトとシノはエントランスで合流すると、車に乗ってサーカスを見に行った。
テントの中に入ると、成程特等席というだけあってとても見やすい所に座る事が出来た。
「シュウト君ここ良い席っすね!どうやって手に入れたんすか?」
そう聞かれて、先日の夕暮れ時の会話と今日の隊長の部屋での会話を教える。
「・・・なぁるほどねー。確かに、まだこのサーカス団にはマジシャンはいないみたいだし、
シュウト君のマジックの腕は折り紙付きだし、良い感じっすね。でも・・・」
少し眉をひそめるシノ。
「もし参加してショウをするのであれば、能力の仕様は控えたり仮面をつけたりとかしたほうがいいっすね。
いずれバレるとしてもいくらか時間は稼げるはずっすよ。」
「そうですね。おっと・・・ショウが始まるようです。」
ポリトワルサーカス団、開演中…。
そして終了後。
「面白かったっすね!いやぁ息の合ったサーカス!うん、面白かった!
「本当にそうでしたね。・・・まさかいきなりマジックをさせられるとは思いませんでしたけど。」
ショーの途中、セツナに「観客の方にも参加してもらいましょう!」と言われ舞台に上げられたのには驚いたが。
「・・・ではシノさん、僕はちょっと団員さんとお話をしてくるので。」
「了解ッス。でもあの女の子、なぁんか・・・」
「?」
「いや、何でもないっすよ。ちょっと周りに出てる出店で何か食って待ってるっす。」
手をひらひらさせながら歩いて行くシノ。シュウトはあの夕暮れで会ったセツナに近寄って行った。
「見させてもらったよ。」
「如何でしたか?」
「面白かったし、素晴らしかった。本当に僕なんかが参加させて貰ってもいいのかい?」
「おっと、それは誘った時点で決まってますよ!」
「・・・それじゃ、よろしく。」
「よろしくお願いしますね!では、また連絡しますので!」
携帯のアドレスを交換し合う。
「それでは!団員との顔合わせ日時や詳しい事はメールで送りますねー!」
こうして、ポリトワルサーカスの団員名簿に
森山修斗の名が加わったのだった。
団員全員にと対面する事になるのは、また別のお話。
最終更新:2011年06月14日 19:23