ショウゴのバイト先は工場だ。工場といっても、車の部品や半導体を作っているような普通の工場ではない。幅広いモノを取り扱っている。車輛も一から組むし、奇抜な発明品を製作したりもする。工場長である
タクミが気に入った人物からの注文なら、どんなモノでも形にしてしまうのがこの工場なのだ。
勿論、『どんなモノでも』という看板には武器や兵器の類も含まれる。アースセイバーやエイジ博士の研究所からの注文で製作する事もある。そのノウハウがあったからこそ、ショウゴは改造モデルガンや特殊弾丸を作る事が出来た。
そしてそんな工場だからこそ、裏社会の情報が多く流れてくる。事実、今日も
出雲寺組のアキトが、ショウゴとタクミと3人でバイクを組みながら『裏』の話をしていた。
「でさ、大体その手口が悪質なんすよ。なんせいかせのごれはまだまだ謎が多い、誘拐や売春をやろうとするヤツがたまにいる訳。」
「なるほどねー。怪異に見せかけられる程度に少しずつやってんだな、外道め…。ズズーッ」
フレームにエンジンを積んでいるタクミを手伝いながら、キャブを調整しているアキトの話に応えるショウゴ。アキトは続けた。
「つい最近までカラオケ店を中心に活動しててさ、その連中。んでたまたまそこにアスミが友達付き合いで行った時に・・・」
「現場を見つけて、組長さんの逆鱗に触れちゃったわけだ。」
恐るべき速さでエンジンを固定し終わったタクミが言った。
「ああ。逃げ出そうとした女の子とバッタリ。」
「外道とはいえ、そいつらに少しだけ同情するぜ。なんせ相手が組長さんじゃ…。」
「アスミも相当強いからな。けど、奴らは外道だった。あんまり大きくは無いが、いかせのごれにも裏社会がある。俺も極道だけれども、やっぱああいう外道働きは許せんよ。」
「そうだな。・・・ぶえっくしょい!」
咄嗟に顔をそむけてくしゃみをしたが、その方向にはペットボトルのお茶を持ってきた
バレッタが。
「何盛大にくしゃみしてくれてんだよォォォォ!」
「いやすまんちょっと風邪気味でうわちょやめ!」
ショウゴには裏の顔がある。それは誇れるようなものではないし、自分のやりたい事でも好きな事でもない。
工場でおこなわれるこんな日常の会話にも、裏社会の実情が沢山流れてくる。ショウゴは一つ一つを拾い掻き集め、知識として蓄えていた。
既に出雲寺組の組員構成や活動範囲なども大体把握しているし、裏社会の活動場となる賭博場や娯楽地、風俗などの情報も事細かく手に入れていた。
手に入れた情報は、集約・整理して一つのノートにまとめてある。
元はといえばショウゴの親父がアルバイトの様に簡単にショウゴに頼んでいた事だが、状況が変わってしまった。
バイトを終えて家に帰ると、ショウゴは隠してあったノートを広げ今日手に入れた情報を整理する。そして、目的が変わってしまったノートの、中間あたりのページを開いた。
そこには真新しい文字で物騒な見出しが書かれている。
『いかせのごれ裏社会及び出雲寺組制圧について』
スタンド光だけの部屋に伸びる影は、どこまでも暗く沈んでいた。
最終更新:2011年06月22日 19:36