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製作開始

月明かりだけが差し込む灰色の洋館。
彼はその一室で、古くなったモニターを眺めていた。
そのモニターに映るのは、一人の少年。
椅子に縛りつけられ、頭を垂れて眠っていた。

「…もうそろそろクロロホルムが切れるわよ。」
そばにいた女が言った。彼は頷く。
「今回は、どういう作品にする気なの?」
「久しぶりに、剥製を作りたくなった。」
彼の口の端が上がる。その眼には既に、完成された『作品』がうつっているのだろう。

「…ってことは、今回は惨殺してもいいのね。」
「そういうこと。特に今回は、ゆっくりと苦しめてほしいんだよね。」
彼は背もたれに寄りかかった。
「例えるなら…そう。昔の中世のゲームのように。」

「わかったわ。例によって今回も『トリックアート』で部屋の入口は隠してる。」
「ありがと。『影分化』は人型3体くらいでいいよ。」
「了解。」
女は壁によりかかり、目を閉じた。

「クロロホルムが切れるまで、3、2、1…。」


「…んっ…?」
目が覚めると、そこは見たこともない場所だった。
月明かりだけの薄暗い部屋。広さはかなりある。
立ち上がろうとしたが、椅子に体をしばりつけられ、動けない。
「…!そういえば、僕、突然怪盗に襲われて…!」

全て思い出した彼は焦燥に駆られた。
早くここから逃げ出さなければ。
しかし、あたりを見回しても扉らしきものは見当たらない。
外と繋がる窓も、崖につけられており、到底脱出できそうになかった。
「そんな、どうしよう…。」
彼が俯いたその時だった。

後ろに気配を感じた。
人ではない、無機質な気配。
首だけそちらを向くと、3つの人影がそこにいた。

いや、「人」ではない。
半透明の黒い色をしているそれは、まるで「影から作られた人形」。
その手にレイピアを各々が握り、こちらに近づいてきた。
「な…何あれ…。」


「この作品にはね、表情や声も重要になってくるんだ。」
傍観者は語る。
「昔の中世ではね、面白い賭けが流行っていたんだって。」
声を聞くものは、目を閉じる女だけ。
「奴隷を縛りつけてね、指の先から一本ずつ、ハンマーで骨を砕いていくんだ。」
「影」の近づく少年に、その語りは聞こえない。
「最初は『助けてくれ』と許しを乞う奴隷。だけど、やがてその言葉は『殺してくれ』に変わる。」
一人の「影」が、レイピアを振り上げた。
「…ねぇ、アリア。賭けをしよう。今からこの少年の言葉が『助けて』から『殺して』に変わるのが、いつなのか。」
傍観者は、微笑んだ。
「僕は、レイピアの傷150本以内にかけよう。」

そのレイピアは、少年の腕に深い傷を入れた。

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最終更新:2011年07月01日 22:16