「…くっふふ、成程ねぇ、大体分かって来たよ…。」
声を殺して笑う彼。目隠し越しに見る視線の先にいるのは、紫のオーラを体内に持つ少女。
以前妖怪を成敗しようとしたときにかけつけた少女だ。
オーラの謎を追うためにこのところ妖怪を重点的に襲っていたが、それで分かったことがあった。
妖怪の一部には、瀕死の状態に陥ると絡みついた紫の「糸」のようなオーラが現れる。
全ての妖怪に該当するわけではないが、その「糸」の色がまさしく、あの少女のオーラと同じなのだ。
「能力でいくらかの妖怪を従えているってことだね。となると、彼女を襲えば一気に人外である妖怪を叩きつぶせるわけだ。」
とはいえ今は隣に連れであろう妖怪がいる。
以前出会ったときにはただものではない気配を感じていた。
何らかの理由で彼らが離れる時をねらって襲うことにしよう。
彼はそう呟き、もう一度笑った。
そのときだ。
「…やぁ、此処にいたんだね、『君(ボク)』。」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
振り返ると、ああ、その姿は間違いない。
彼は声の主に微笑みかけた。
「久しぶり、『君』。」
「今日は「アレ」、つけてないのかい?」
「『君』に逢うのに素顔を隠す必要はないだろう?それにここはストラウル。誰もこんなところには来ないさ。」
「それもそうだね。それじゃあ、僕もこれ、外すかな。」
彼はそう言うと、ゆっくりとその「目隠し」を取り払った。
「…こうして外の世界を見るのは、何時振りだろう。」
「10年以上前じゃないかな。「あの事件」からだから。」
「そうか。もうそんなに経つんだね。」
彼はそう言うと、「妹」を肉眼でとらえた。
「でも、『君』の眼は変わらないね。僕と同じ、綺麗な青い色。」
「当たり前だろう?この目の色だけが、僕たちを兄妹と裏付ける証拠さ。だからいつもは「アレ」付けてるだろう?」
「極端な話、『君』は付けなくてもいいだろう?僕が目隠ししてるんだし。」
「でも、『君』ばかりに抱え込んでもらわれても困るわけだしね。」
「相変わらず優しいな、『君』は。」
「『君』とは別人だと思わせるために、髪も染めた。他人との接し方も変えて、人外に怪しまれないようにした。だからこうして情報を手に入れられるんだ。」
「『君』には迷惑かけてばかりで、申し訳ないと思うよ。」
「いいや。元々『君』が提案したことだろう?僕は高校生活、楽しいと思ってるし、迷惑じゃないから大丈夫さ。」
「妹」は、彼に笑いかけた。
「…さて、話を切り替えようか。」
「そうだね。どうするつもりだい、これからの成敗は?」
「良い方法を見つけたんだ。もしかしたら妖怪を一気につぶせるかもしれない。」
「おお!流石『君』!「美術以外」は天才的だね!」
「…その「美術以外」に引っかかったんだけど…;」
「だって、『君』は赤と黄色を混ぜたら橙になる事さえ知らなかったろう?色のパターンを覚えてればその能力も使えるけど、全く新しかったら推測に時間がかかるじゃないか。」
「…流石『君』、痛いところついてくるね…;」
「人間が元となった生物兵器が「青緑色」なのを知ったのもついこの間の話だろう?今度また一から教えようか?」
「気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとう。」
「じゃあ、夜も遅いから僕はこの辺で。明日も学校があるからね。」
「分かったよ。」
彼は「妹」の頭をなでた。
「『君』にも本当は能力者としての素質があるんだ。でも、きっかけが無い限りこの力は目覚めない。」
「だから僕はより多く、能力者の戦いを観察する。そうだろう?」
「そうさ。『君』が能力に目覚めた時。どんな能力かを楽しみにしているよ。」
「その時は喜んで、『君』に協力させてもらうよ。」
「妹」は立ち去り、残された彼はもう一度その眼隠しをつけた。
「『正義の味方(ボク)』の正体が、こんなにも醜い姿だと晒せるのは『君』だけだ。」
彼の目の前に広がる風景は再び、オーラだけの世界となった。
「僕は『君』に感謝してるよ。本当に。そして。」
彼は、白銀に光るナイフを取り出し、呟いた。
「『僕』を奪った人外を、僕は絶対に許さない――。」
最終更新:2011年07月01日 22:17