アットウィキロゴ

開かれた13号室

かつこつかつこつ
おとがひびく

ここの部屋を通る誰かの足音は、多少の誤差はあっても135歩で消えていく。大体3分と24秒

一日に5回。決まった時間にここを通る
男の人と女の人と、交互で

ただいまの時刻深夜2時35分47秒。足音が遠退いたのは8分前。

いける

空気が、風の匂いが、今だ今だと叫ぶ
動物の毛で縫い合わせて作られた固いベットから起き上がり、胸に隠していたクロスと、『お守り』を取り出す

わくわくする

別にこの生活が不快ではないけれど
けして快でもない
わたしの喜びは『知識』を得ることだもの
言葉の上では理解していた『だつごく』を試みるに至った理由は実に単純明快

この『カルーアトラズ』という場所の隅から隅まであますことなく知ってしまったから
ここにいても、あらたな『知識』は得られない


「…10年と18時間24分37秒、いままでお世話になりました!」

ぺこりと長いことお世話になった自室に頭を下げて、「お守り」をレンガ造りの壁に差し込む

まるではじめからそこに存在していたかのように、ミシリと小さな音を立てた後出現したのは、見たこともない扉

「ばいばい!」


開かずの13号室の囚人、【M】は、ふんわりと優しい笑みを浮かべて、月夜の闇に駆け出していった



開かれた13号室
(この日、脱獄者を許さなかったカルーアトラズから初の脱獄者が生まれた)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年07月08日 20:39