『鈍すぎる蛇』
「ほら、ありがたく食べなさいよー」
「ムゴムガ…」
「…
コヨリ、
コウスケの口が裂けるぞ」
「ええのぉ~」
ある日の放課後。
家庭科の授業後の女子達は、意中の相手や友人にお菓子をあげるのに賑わっていた。
勿論、コヨリもその一人。
コウスケの口が裂けんばかりに、手作りチョコを問答無用に押し込んでいる。
「ワシもお菓子欲しいのぉ」
「リーダーには無理だって」
「何じゃ、ケイかてマナから貰ってないじゃろ」
「言うな!!!」
「そうそう、つかケイ君そろそろコクらねーと、他の奴に取られるぜ~?」
(そういうお前が一番やりそうだが…)
「コウスケの言う通りよ。アンタ、それでも男なの?」
「うう…」
「やっほー!」
「ふごっ!?」
マサカズの背中に、一人の女子生徒が飛び付く。
白い髪、紫の瞳。
ケイイチ達のクラスメイト、ミユカである。
「おま…いきなり飛び付くなや」
「キッシシシシ」
イタズラっぽく笑うミユカ。
すると、彼女は右手に持った袋をぶら下げる。
「何じゃ、クッキー?」
「いる?」
「え、くれんのか!?」
「うん」
「サンキュー! さっそく食ってええ?」
「いいよいいよ~」
満面の笑みでクッキーを口にするマサカズ。
だがその笑みは一変して。
「辛ーーーーーッ!!!!!」
「キシシッ、引っ掛かった~!」
「アンタ…クッキーに何入れたのよ」
「えっとね~、タバスコと唐辛子とワサビを合わせて20グラム!」
「にっ、にじゅう…っ!?」
「ミユカーーーーッ!!!」
マサカズが怒りの矛先をミユカに向ける。
ミユカは笑いながら逃げ出した。
「逃げんなワレ!」
「やーだよ」
教室から出るミユカ。
とそこで。
「ほいさっ」
「おわっ」
ミユカが別の袋をマサカズに向かって投げた。
マサカズはそれを何とか受け止める。
「お詫びのクッキー。何にも入ってないから大丈夫だよ~、じゃあね~」
そう言い残して、ミユカは2組の教室へ行った。
マサカズは貰った袋を見つめる。
「………」
マサカズは袋を開け、試しにクッキーを食べてみた。
「…どう、リーダー?」
「…美味い」
「え?」
「めっちゃ美味いぞコレ! ケイも食べてみい!」
「え、じゃあ一つ…」
パクッ
「あ、ホントだ」
「俺もくれ」
「コウスケはコヨリからチョコ貰ったじゃろ。コヨリにもやらんからな!」
と言って、マサカズは鞄を背負って教室から出て行った。
「別に欲しいって言ってないんだけど…」
「相変わらず仲が良いよね、あの二人」
「コヨリ、ミユカはどうなんだ?」
「どうって?」
「自分の気持ちに気づいてるかどうか」
「ぜーんぜん。この前だって、マサカズの事好きかって聞いてみたら、『何で?』だし。そんで、マサカズと一緒にいる時、いつもより嬉しそうだからって言ったら、『傍にいたら、悲しい気分が無くなるし、幸せな気分になれるから』だってさ」
それを聞いたコウスケはため息をついた。
「そういうのを恋愛感情って言うんだけどなあ…」
「ま、ミユカらしいけどね」
「そうだけどさあ、なーんかこっちがソワソワしちゃうのよね…」
一斉にため息をつく三人だった。
※加筆修正有り(2013/06/15)
最終更新:2013年06月15日 10:11