「…っはぁ、はぁ…。」
崖のすぐ下の空洞に突如として腕が現れ、陸地をつかんだ。
続いて肘が上がり、更に奥の地をつかむ。
引きずるように体を水面からあげたのは、先程海に落とされたパラボッカだった。
彼は背負っていたアリアを先に陸地に上げ、自らも重い体を引きずるように陸に乗った。
「完全に油断したね。まさか、あのタイミングで邪魔ものが入るなんて。」
息切れしながら言葉を紡ぐパラボッカ。しかし、アリアは未だに気絶していた。
しかし、彼は傷ついたこと、傷つけられたことは全く考えてなかった。
いや、むしろ。
「折角の芸術が、台無しになってしまったじゃないか…。」
彼は仰向けに寝転がると、岩の露出した天井を見つめた。
「傑作になると思ったのになぁ。しかも、賭けもなかったことになってしまった。」
その声には、憤りも悲しみも一切含まれていなかった。
その眼に映るのは本当に芸術だけと言わんばかりに。
「あーあ、どうしよっかなぁ。でも、この傑作だけは逃せないんだよねぇ…。」
暫くぼんやりと天井を見つめていた彼だったが、やがて溜め息をつきながら起き上った。
「とりあえず、今日はアジトに帰ろう。ストレスはらさないと。」
彼はそういい。水のしたたるマントの上からアリアを背負い、もう一度海の中へと消えた。
「へ?風真さん?知ってるわよ。昔お世話になったからね。」
そう反応した亜音に、由衣は喰いついた。
「本当か!」
「ええ。それがどうかした?」
「実は昨日、その風真さんにあって…。」
「…へぇ、あの人、子供いたんだね。」
「凪っていうんだ。こないだも一緒にいた。でも、なんだか様子がおかしくてな。」
「…もしかして、前になんかいってたあれかな…?」
「父親は事情を知っている風だったし、凪は私の大切な友達の一人だ。私になにか協力ができれば…。」
「…今度、ここに食事にくるって言ってたわね?」
「え?あ、ああ。」
「なら、そのとき話をつけておくよ。」
「へっ?」
「思えば、あんた、アースセイバーに入ってから大分経つわけだし、そろそろ実践も良いかなぁと思ってね。」
「亜音さん…。」
「ただし、危険なことは極力しないこと!いいね!」
「…分かりました!」
由衣は元気よく返事をした。
最終更新:2011年07月08日 20:45