ショウゴは今、年下の女の子に銃を向けている。
胸クソが悪くて堪らない。
インターホンを押してアキトを呼び出すと、門を開いて出て来た。
「こんな時間にどうしたんです?」
「いや、ちょっと話があってな。後のコイツら、知り合いなんだが
厄介事の巻きこまれててよ。
出雲寺組の力を借りたい。組長さんと繋ぎ取れるか?」
真剣に言うショウゴに対してアキト顔を曇らせながら答えた。
「分かった、中に入ってくれ。」
第一関門はクリアした。
大広間に通された。厄介事を抱え込んだという嘘をアキトは真に受け、
ショウゴと面識のあるヨシヒトとアスミだけを連れてやってきた。
正座して向かい合う。
「どうも、ショウゴさん。」
「どうも、組長さん。部活に勧誘した時以来か?」
「・・・まぁ、その話はいいとして。何か厄介事を抱えていらっしゃるとか。」
「ああ、この二人も関係しててな。こいつを見てくれ。」
鞄を開いてゆっくりと中身を取り出すショウゴ。
取り出した脇差を、アスミの方に差しだした。
アスミは受け取ると刀身を少し抜き、刃を見る。
「模造刀では無いようですね。相当の業物とお見受けします。・・・これは!?」
ゆっくり鞘を抜き、反対側の刀の腹を見た時、アスミの表情に緊張が走った。
「鬼英会の代紋!?」
ショウゴは状況の説明も無しに、間髪入れずたたみかけた。
「単刀直入に言おう。鬼英会傘下に入ってもらいたい。」
アキトは未だ状況が掴めず、口をパクパクとさせていた。
「え・・・?は・・・?ど、どういうことだ・・・?」
「俺は鬼英会の人間なんだよ、アキト。」
「いかせのごれの『外』の極道…鬼英会とは。狙いはいかせのごれの裏社会進出ですか。」
ヨシヒトの声は低かった。
「ああ。」
「出雲寺組が世間に持つ大きな影響力を理解してますか?」
「無論だ。」
「拒否すれば?」
その瞬間、ショウゴ達3人は立ち上がりざま銃を抜いた。
「そんときゃ戦争だ。」
対して、反応出来たのはヨシヒト唯一人だった。
アスミもアキトも、目の前の事実に動揺していたからである。
「因みにこれは交渉でも取引でも提案でも協定でも無い。分かるよな?」
その瞬間、アキトが暴走した。
「ショウゴオオォォォォォォ!」
「よせ、アキト!」
ドンッ!
ショウゴに掴みかかろうとしたアキトがコトハに、
引き金に力を込めたヨシヒトがリュウザに、
同時に撃たれ、吹き飛ばされた。
途端に表が騒がしくなる。銃撃の音が連続して聞こえ、廊下が騒がしくなる。
「表が銃撃されてんぞ!」
「くっそ、どこのどいつじゃ!ざけやがって!」
「門に近寄んな、撃たれんぞ!」
「組長達はどこだァ!」
「応戦しろ、中に絶対入れんなよ!」
ショウゴがアスミの前に立つ。
「攻撃してるのはウチの組の兵隊だ。
・・・一緒に来てもらうぞ。それですべて解決する。」
俯いたまま正座している女の子に、ショウゴは今銃を向けている。胸クソが悪くて堪らない。
「傷つけたな…やりやがったなこの野郎!」
アスミの手にはいつの間にか銀色の薙刀が握られ、それが横薙ぎに一閃された。
紙一重で反応しスウェーバックしてかわすショウゴ。
リュウザとコトハもそれぞれ飛びずさって銃を構え直した。
「リュウザ、コトハ、周囲警戒!邪魔を入れるな!」
「「了解!」」
そしてアスミとショウゴが対峙する。
先に仕掛けたのはショウゴだ。時間が長引けば異常に気付いた組員がやってくる。
そうなれば不利なのはショウゴ達である。
銃を腰に戻し、トントンと軽くジャンプすると一気にアスミの間合いに飛び込んだ。
すかさず薙刀を振るい、袈裟切りをしようとするアスミ。
ショウゴは冷静に軌道を見極めると、敢えて斬られに前へ出た。
前に出たことにより逆にダメージを少なくする目論見と、あともう一つ。
ショウゴの腰にはモデルガンが差してある。
ガッキィィィィン!という音と共に、薙刀を受けきった。
間髪いれずに次の技を繰り出そうとするアスミだったが、ショウゴがさらに踏み込むほうが早かった。
アスミの着物を掴むと、鋭く素早い背負い投げを喰らわせる。
(ぐっ・・・強い!でも、今の攻撃・・・)
考えている間にも状況は更新される。
既にアスミは後ろから絞め技を掛けられていた。
(彼は畳に叩き付けはしなかった・・・癖なのか・・・
それとも・・・別の・・・意・・、味が・・・?)
熟練者が絞め技を本気でやったら、ほんの数秒で『オチ』る。
アスミも眼つぶしや頭突きを行おうとしていたが、抵抗むなしく意識を失ってしまった。
アキトとヨシヒトに致命的な怪我と意識が無いことを確認すると、ショウゴはアスミに血糊を付け担いだ。
そう、今回3人が銃に詰めていたのは非殺傷弾だったのである。
リュウザとコトハを率い、アスミを担いだ状態で急いで裏口まで走る。
救急車が裏口に止まり、サイレンを鳴らし続ける。ショウゴはさっさとアスミを載せると、
一緒に乗り込もうとした出雲寺組の組員を殴り飛ばして振り落とした。
「裏口から脱出で、出雲寺組組長の拉致に成功。お前らも早く切り上げろ。
追ってくる奴も基本威嚇射撃しか認めん。」
ダミーの救急車の中で電話するショウゴ。この救急車は鬼英会の車輛である。
通話の相手は陽動班を仕切っているサトルに向けたものだった。
電話を切ると、次は最高顧問である叔父に連絡を入れる。
「どうも。出雲寺組の組長を拉致した。居場所の割れて無い事務所ビルがある、そこに監禁する。」
『そーかそーか、よくやったぞ。』
「今後の方針と出雲寺組組長の身柄について話し合いたいんすけど、御足労願えますかね?」
『そやのう・・・傘下に収める土地を見ておくんも悪くない、明日そちらに向かおう。』
会話が終わり、パチンと携帯を閉じるとリュウザとコトハとショウゴは小声で話す。
「ショウゴさん、もしかして・・・。」
「ああ。俺はここまで手を汚した、ここまで堕ちた。なのに奴が高みの見物なのは許せねぇ。」
「巻き込むつもりなのね。」
「勿論だ。」
「でもそれは、鬼英会に反旗を翻すということなのかしら?」
「バカ言えコトハ。何もそんな事はしないさ。そこで出雲寺組を迎え撃って決着をつける、それだけだ。」
ストレッチャー台の上には、アスミが拘束されていた。
途中で車を換え、アジトに向かう。ストレッチャー台からアスミを下ろすと、
工場から失敬した試作品の手錠をかけた。
アジトであるビルの中にアスミを抱えて入ると、陽動を行っていた人員や道路を封鎖していた要員が出迎えた。
「ショウゴさん、お疲れ様です。」
「お怪我はありませんか。」
「あ、『そいつ』はあっしg」
ショウゴは、まだ意識を取り戻さないアスミを抱えていたが、3人目を言葉を遮るように蹴飛ばした。
「誰が『そいつ』だよバカ野郎。気安く触れんな。確か応接室は5階だったな、そこに行くぞ。」
応接室のソファにアスミを寝かせると、ショウゴは組員をぎろりと見回した。
「いいか、お前ら。指一本でも触れてみろ、何か危害を加えてみろ。
俺の思いつく限りの制裁を加えてやる。分かったら各階で休んでろ。
・・・明日、最高顧問のオジキが来る。そのへんの用意もしとけ。
あと、万が一出雲寺組が組長奪還に攻め込んできた時のことも考えて武器の手入れも怠るな。いいな!」
応接室に、ショウゴとリュウザ、コトハ、そして組員達をまとめていたサトルが残った。
「坊、明日最高顧問がいらっしゃるんでっか!?」
「ああ。」
「それまでここで見張るつもりで?」
「ああ。変な気を起こす奴がいるかもしれん。それに・・・
こう言っちゃなんだが、ミナと被るんだよ、彼女は。」
一瞬妹のミナがショウゴの脳裏をよぎる。
「察しやす。」
怒涛の侵攻劇は一旦終了。
ショウゴはドスとモデルガン2丁を取り出すと、気を失ったままのアスミの隣で分解整備を始める。
アスミに銃口を向けた時のことを思い出し、若干また胸クソが悪くなったが、我慢した。
最終更新:2011年07月19日 22:13