ユウムは、無事だろうか……。
レイはただそれだけを思っていた。
ユウムはいま、親友を殺しに行っている。だけど、やさしいユウムがそんなこと出来るはずがない。
不意に、ドアがノックされた。
「……誰?」
「私だよぉ、私。」
聞こえてきたのは、姉のリンの声だった。鍵を開け、中に入るように促す。
リンは中に入ると、ぽすんとソファに座った。
「ひゃあ、疲れたぁ~。」
「お疲れ様、………ところで「ユウムちゃんのことでしょ?」…。」
「彼女、殺せなかったらしいわ。」
「―――――!」
予想はしていた。だけどそれは、
ホウオウグループの人間にとっては、死だ。
「今頃、
サイナが向かってるはず。ユウムちゃんが動かぬ身体となってしまうのはもう時間の問題よ。」
血まみれのユウムを考えてしまい、ぞっとした。
それだけは、阻止しないと。
レイはくるりと体の向きを変え、ドアに向かおうとした。…が、足が動かない。理由はわかっている。
「姉さん、これをといて。」
「行かせない。」
「いやだ、俺は行く。ユウムを助けるんだ。」
じ…っとリンを見つめる。リンも譲る気はないようだ。
レイはさらに言った。
「ユウムは俺の大事な人なんだ!見過ごすことなんか、できるわけないだろ!!」
「サイナが向かったのは、ずっと前よ!生きているほうがおかしいわ!!」
「そんなことで、ユウムを助けるのをやめろって言うのか!?俺は、そんなの嫌だ!!」
「私は、あなたしかいないの!あなたが死んだら、どうしろっていうのよ……!」
レイははっとした。確かに、この世には親はもういない。ずっと二人で生きてきた。
俺がいなくなったら、姉さんはたった一人になってしまう。
でも、ユウムを見捨てるのも、俺にはできない……。
大地が、揺れた。
あまりにも突然のことで、リンの集中力が途切れてしまう。足にまとわりついていた蝋もなくなる。
次の瞬間には、レイは走り出していた。この揺れも、レイの能力で作り出したもの。
きっと近くに、大地には大きな亀裂が走っているだろう。揺れの止んだ部屋の中は散乱し、ひどい状態だった。
リンは、はぁ、とため息をついた。
「この先に、どれだけ敵がいるかもわからないのに行っちゃうなんて。よっぽどユウムちゃんのことがすきなのねぇ。…でも大切な弟があそこまで言うんだから、私も手伝ってあげようかなぁ。……未来の妹のためにも」
そして、もうその部屋に人影はなく、代わりにあったのは、三人の写真。
最終更新:2011年07月30日 04:31