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<汰狩省吾と拉致監禁。>

「んっ・・・ここは・・・?」
アスミはソファの上で目が覚めると、体が拘束されていた。
一瞬で出雲寺組邸宅での一件を思い出す。
「おう、気が付いたか組長さん。」
ふと顔をあげるとそこにはショウゴがいた。
何か写真のような物を懐にしまったところだった。
「悪いな、こんなところに拉致しちまって。
 危害を加えるつもりはない。加えさせもしない。
 ただ、暫く監禁させて貰う。」
「どうしてこんなことを・・・
 いや、理由はあの時言ってましたね。正気ですか?」
「さぁな。・・・とりあえず、腹減ったろ?
 飯を用意するからよ、ちょっと待っててくれ。」
「敵に施しは受けません。お腹もそんなに・・・」
続きを言いかけた所で腹の虫が鳴ってしまった。
顔を赤くしながら俯くアスミ。
「・・・とにかく、私は要りませ・・・え?」
ガチャガチャと言う音を聞いて振りかえると、
ショウゴが鍋やらガスコンロやら、調理器具を運んでいた。
「まぁまぁ、そう言うなって。塩くらい贈らせてくれよ。
 それに・・・」
耳元に口を近づけ、とても小さい声でショウゴは続けた。
「明日、正確には今日だが、ウチの組の上がやって来る。
 そん時に腹の音でも聞かれたら、飯と一緒に何喰わされっか
 分かんないからな。」
アスミの座っているソファの前には机があったが、
その机の上にガスコンロとフライパンを置くと、
切ってあったらしい肉や野菜を次々と放り込んで炒めていった。
「組長さんは多分和食派で煮物とか好きなんだろうけど、
 味付けが好みに合うかあんまし自信無いからオーソドックスに
 野菜炒めにさせてもらうぜ。」
塩こしょう、そして醤油で味付けされて大きな皿の上に盛られた。
次に卵を溶いたかと思ったら、シンプルな具無しのチャーハンを作った。
「サトル!コトハ!リュウザ!飯だぞ!」
ドアから3人がやってくる。
「坊、ここで調理したんでっか・・・。しかも野菜炒めと
 チャーハン・・・。」
「子どもみたいなこと言うんじゃないの。貴方何歳よ、
 野菜が嫌ならコンビニにでも行きなさい。」
「やめなよコトハ。ショウゴさん、肉足らないんだけど
 焼いていい?」
「あ、ワイも肉いただきま」
「えーいうるさいなお前ら!勝手に調理しやがれってんだ!」
ワイワイと向かい合うソファに5人が座った。
「・・・。」
あっけにとられるアスミ。だが、我に帰ると一つの問題に思い立った。
「ショウゴさん、お心遣いは大変うれしいんですけれど、これ…」
ジャラジャラと手錠を鳴らす。後手で手錠を掛けられていたため、
口元へご飯を運ぶことが出来ないのだ。
「あら、私が口移ししてあげようかしら?」
コトハの言葉を無視してショウゴはアスミに近寄る。
鍵を取り出すと、片方の手錠を外す。
「・・・ショウゴさん、いいんですか外してしまって。」
「いいんだよ。逃げれないから。」
「・・・。」
妙に自信たっぷりに言うショウゴ。
箸を持つと、アスミは少しずつ食べ始めた。
(何を考えているのか分からない・・・けど、殺すつもりは無いようね。
 ならば今は力を蓄えるべき… きっと今にアキト達が助けに来てくれる。)
少し荒い味付けながらも、味としては良い野菜炒めをきちんと
食べるアスミを見て、ショウゴは安心した。
(反撃したり暴れるかと思ったが。まぁいい、後は明日来るオジキの対処だ…。
 あの爺さん、ちゃんと仕事してるだろうな。)



「何!?組長の居場所が分かった!?」
ヨシヒトの声が大広間に響いた。出雲寺組を総動員して
組長・アスミの行方を捜していたが、とある情報屋から
連絡が入ったのである。
『はい、爺さんによると、とあるビルが丸々鬼英会の事務所に
 なっているらしいです。明日今回の首謀者と幹部連中で
 話し合いをするそうです。』
「了解。ビルの場所は?」
『繁華街のはずれにあるITビジネスの看板を掛けたところらしいです。』
「分かりました。ではまたあとで連絡します。」
携帯を閉じるとメモ帳に何やら書きこむ。
「すまねぇ・・・俺が発信機をちゃんとアスミに付けておけば・・・!」
「起きてしまったことは仕方が無いです。 それより
 どうやって救出するか考えなくては。」
「ああ・・・。」




それぞれの夜が更けてゆく。
それぞれの思いを胸に秘めたまま。

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最終更新:2011年08月08日 16:26