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昼時を過ぎたレストラン

厨房でつかの間の休息を取ろうとした由衣は水を口に含んだ。
が、その直後に現れた客の姿を見、口の中の水を一気に噴き出してしまった。
作業をしていた千春が驚く。

「ちょ、おま、何やってるんだ、由衣!見事に流し場で吹いてくれたのはナイスだけど!」
「ゲホッ!ガヘッ!…っは、え、嘘だろ…?」
由衣は顔を上げ、直ぐにカウンターに向かった。
顔を出すと、その客もこちらに気付いて顔を上げた。

「か、闊歩っ…。」
「…由衣?」
「んー?どうした?誰か知り合いでもきたか?」
呑気に店長は言う。由衣が無言で頷くと、その客…数寄屋 闊歩の元へと向かった。

「闊歩、お前…。」
呆然とする由衣に向け、闊歩は片手を上げた。
「や、久しぶり。元気してた?」
「何でお前がここにいるんだよ?向こうは…大阪はどうしたんだ?」
「僕が向こうにいる理由なんてないから、此処に来た。それだけ。あ、店員さん、オムライス一つお願いね。」
たまたま近くにいた店員に声をかけ、闊歩は水をのんだ。

「そういう由衣も何でこんな所に。しかもバイトとかする柄じゃなかったろ?」
「や、まぁそうなんだけどな…。」
店長に目配せをし、由衣は向かいに座る。
「「あの時」ここに流れ着いて、そのまま店長に拾ってもらったんだ。だから、せめてもの恩返しにこうして働いてるんだよ。」
「そう言うことか。ま、何事もなかったようで何よりだよ。」

「お前はあれからどうしてたんだよ。」
「…僕?」
闊歩は顔を上げた。由衣の眼を真っすぐ見る。
「僕は何もしてない。することもなかったから。だから、君がここに居るって聞いて、此処に来たまで。」
「…昔からお前はそうだよな。いつでも私についてきた。その路が間違っていたとしても。」
「今更みたいに言ったところで、僕はかわりやしないよ。」

闊歩はあたりを見回した。
「それにしても、すごい所に行きついたみたいだね。何だい、この店は?」
そう言われ、由衣ははっとした。
そうだ。此処は「能力者が集うレストラン」。闊歩は能力を持ってない筈だ。

「いや、それはだな…。」
「…もしかして、皆『おかしな人』なのか?」
えっ、と由衣は闊歩を見た。
「…どうして、分かった?」
「カン。あと、どっか由衣に似た雰囲気の人とか居るし。」

闊歩のいう『おかしな人』とは『能力者』の事である。
一般人である闊歩も、諸事情で一応能力者の存在を知っている。
ただ根底から能力を信じているわけではない上、電波扱いされたくないため『おかしな人』と彼はよんでいるのだ。

「…ま、君が元気ならよかったよ。」
闊歩は笑うと、運ばれたオムライスをつつきだした。
由衣はぼんやりと、久しぶりに出会ったこの男を眺めていた。


「御馳走様。じゃあ、僕はそろそろ。」
彼は立ち上がり、レジで勘定をすませてドアに手をかけた。
「…あ、そうだ。明日から僕、いかせのごれ高校に通うから、そこんとこよろしく。」
「えっ。…ああ、よろしくな。」

闊歩を見送り、由衣は裏に戻って行った。
「…あ、御帰り。」
「ん、ただいま。」
「誰なんだ、今の人?由衣の知り合い?」
「知り合いっつーか…。」
由衣は頭を掻きながら言った。

「幼馴染で、不良時代の一番の相棒で、私が「死んだ」事知ってる一般人だよ…。」

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最終更新:2011年08月12日 15:36