…数時間後。
黒い二つの影が肩を寄せ合い、道を歩いていた。
「…まったく、してやられたって感じだね。」
かすれた声で片方が言った。もう片方が頷く。
「あの一瞬でしてやられるなんて、まだまだ未熟だなぁ、僕は。」
「お互い様さ。僕も見えていたのに反応できなかった。」
「あれは成敗するのに時間がかかりそうだね。少しずつ方法を考えないと。」
「でも、いつまでも停滞できないだろう?僕、ちょうどいい情報を入手してきたんだ。」
「へぇ!どんなことだい?」
「あの生物兵器の成り損ないについてなんだけどね…。」
片方は、もう片方に耳打ちをする。
「人外が二人も!しかも取り逃がした人外がいる、か…!」
「面白いだろう?一気に3人も成敗できるんだ。」
「乗ったよ、『君(ボク)』。近いうちにそこに向かうとしようか!」
「賛成だよ。勿論、計画はちゃんと立てて、ね。」
くすくすと、彼らは声を殺して笑った。
音のない部屋に、彼女はドアをノックして入って来た。
白い部屋には唯一人、ベッドに横たわる赤い姿。
彼女はマスク越しにため息をひとつ吐き、大きな鞄を開いた。
「あの怪我から一命を取りとめたねぇ。」
額に手を当て、彼女はベッドの男を見下ろす。
「呪術師としての才能は全くなかったけど、あの短期間でここまでやってしまうのね。流石、医療の天才。」
彼女は手を離すと、鞄を開けた。
「少し助太刀してあげるわ、貴方が目覚めるように。」
鞄の中を、彼女は探る。
「だから、急ぎなさい。今度は貴方の探し人が危ないかもしれないから。」
取り出した札からは、色のついた煙が昇りだしていた。
どうして、俺はこんな暗い所に居るんだ?
「存在」に戻って、鬼門に返還されたのか?
ああ、なんてことだ。
主にも、皆にも、「あの子」にもサヨウナラを言えずに、俺は…!
『…なに弱気になってんのよ。あんたらしくないわね。』
! その声、お前…!
『私の事はいいから。それより、このまま眠ってるつもりじゃないでしょうね?』
眠って…!じゃあ、俺はまだ返還されてないのか!
『今はどうでもいいことよ。それより、あんたにはやることがあるでしょ?』
俺の、やること…?
『探し人。早く見つけないと、とんでもないことになりかねないわ。』
!? まさか、あの男が…?
『近いかもしれない、わね。』
『こんなことしてる場合じゃないわよ。守りたいなら、早く目覚めなさい。』
最終更新:2011年08月16日 13:59