<……相変わらず風変わりだ>
そんな彼と話す自分もだけど。
しかしこの食べかけのパンと飲みきってないいちご牛乳を置いたのは、どういう意図なのか。
食べろって事?
<…………>
さっきはああいう事にしておいたけど、実際は頂く気分でも何でも無かっただけ。
それに今日は弁当を持ってきてない。
いずれにせよ、このまま置きっぱなしにしてたらゴミになってしまうだろうな。
<……いただきます>
食べる事にした。
そもそもそれ以外に思い当たる事が無い。
食べかけと飲みかけではあるのは否めないけど、中立な傍観者にはあまり関係ない。
<しかしベタな組み合わせだなあ>
パンといちご牛乳。
でも神江裏 灰音は嫌いじゃない。
好きでもないけど。
<…甘い>
ぽつりと呟いた。
神江裏 灰音でも、味覚ぐらいは分かる。
味は…普通に不味くない。
<ごちそうさま>
残ったのは、パンの袋と空になった紙パック。
後で捨てよう。
神江裏 灰音は空を仰いだ。
そして
チェシャの言葉を思い出す。
『君が傍観者でなくなった時…君は物語の中に戻り、神江裏 灰音という役者になる。そして―――』
<今のような関係は無くなる…か>
だがありえない。
何故なら、神江裏 灰音が傍観者でなくなるなど絶対にないからだ。
あのカスだって、今にいなくなる。
<神江裏 灰音は、中立で平等で孤立で普通の傍観者だから>
正義と悪、光と闇、幸福と不幸、慈悲と非道、救済と絶望、癒しと痛み、そして白と黒。
全ての相反する概念と定義を知らない・求めない・関わらない―――これが神江裏 灰音だ。
もう二度と、それらに揺さぶられて、振り回されて、苦しまされたあのカスみたいにはならない。
神江裏 灰音は、これからもずっと、中立で平等に、傍観者にあり続ける。
<この空に浮かぶ雲みたいに、ね>
何にも縛られぬ雲の様に、神江裏 灰音は傍観者として、世界を常に傍観する。
この白と黒にまみれた、いかせのごれという世界を。
<傍観者の独白>
<だがまあ>
<風変わりなあのドリーマーと>
<こうして過ごすというのは>
<悪くないものだね>
最終更新:2011年08月21日 13:46