ところでここに、二人の人間を紹介しよう。
一人は囚人。一人は看守。
最近の事件とは無関係な二人の人間。
「…ねぇ、おなかすかない?」
ストラウル跡地のとあるビル。
フェンスに座った女は曇り空を眺めながら呟いた。
水色の髪と絡んだ赤いリボンが風に靡く。
彼女の背後。備え付けられた鉄の梯子が音を立てた。
そこには何故か縄が縛り付けられている。
その先には、左足首。
女と同じ赤いリボンを頭に巻いた男が、逆さ吊りにされていた。
「…本当に何も食べないわね。餓死するわよ?」
男に気付いているのかいないのか。女は呑気に言う。
かくいう女も誰に向けて話しているのか分からなかった。
不意に、梯子がギシギシと音を立てた。
吊られた男が頭を抱え出したのだ。
その音に女は振り返る。
眼の前の非日常な光景には、全く反応を示さなかった。
のみならず、彼女はその男に普通に話しかけていた。
「また頭痛?まだ慣れないみたいね。大丈夫?」
頭から手を離した男は何も言わない。
しかし女はへぇ、と一言発した。
「例の連続殺人事件が、次で終わる?」
「雨の中倒れる、首を切られた少女の死体、か。」
彼女は復唱するように言った。
「…私達じゃ間に合わないわよ。もうすぐ雨が降るわ。その子ももうすぐ死ぬわ。」
その口元には、何故か微笑。
「ま、それが彼女に与えられた最後の試練、ということにしましょう。」
女は立ち上がった。
「そろそろ戻りましょう。
アキヒロさんが心配するわ。明日も学校だし。」
振り向き、男を通り過ぎてドアノブに手をかけた。
気がつけば、梯子から縄は消えていた。
ところでここに、二人の人間を紹介しよう。
一人は囚人。一人は看守。
最近の事件とは無関係な二人の人間。
彼らはきっと、こう名乗るだろう。
献身者達
「Ⅻ」 あるいは 「THE HANG MEN」 と。
最終更新:2011年08月26日 14:06