某日。
とある河川敷にて、一人の少女が何かを探していた。
山吹色の瞳には喜色が含んでいる。
天河探偵所事務員のドリーマー、
ヤマブキだ。
「どこかな~…」
クローバーの小さい茂みを漁りながら、ニコニコ笑っている。
とそこへ。
「何を探してるんだい? 小さな山吹色のお姫様」
「え? …あっ、猫さんだー!」
「久しぶりだねえ、ヤマブキ」
明るい笑顔を浮かべ、猫耳フードのついたパーカーを着た少年―――
チェシャに駆け寄るヤマブキ。
「あのね、チカ姉ちゃんにあげる、四つ葉のクローバー探してたの!」
「そうかい。萌葱色の剣士は元気かな?」
「うん!」
笑って頷くヤマブキの頭を撫でるチェシャ。
「しかし君、顔はそっくりだけど体は萌葱色の剣士より小さいねえ」
「えー、駄目なの?」
「いや、小さいのも萌葱色の剣士の『子供らしさ』の証だろうから、良いと思うよ」
「?」
チェシャの言葉が難しかったのか、頭を傾げるヤマブキ。
その様にニヤニヤ笑いつつも、チェシャは頭を撫でた。
「ま、分からなくてもいいさ。ところでクローバー探しは?」
「あ、そうだった! 猫さんも手伝って!」
「そうだねえ…それじゃあヤマブキ」
「ん?」
「手のひらを見せてくれないかな?」
「何でー?」
「いいことがあるからさ」
「ふーん…じゃあ、はい!」
と、右の手のひらをチェシャに見せるヤマブキ。
するとチェシャはその手に何かを握りしめさせた。
「? なあに?」
「見てごらん」
「…あ!」
ヤマブキの右手には、四つ葉のクローバーが。
それを見たヤマブキは、満面の笑みを浮かべた。
「四つ葉だあー! ありがとう猫さん!!」
「ニヒヒ、どういたしまして」
「…ヤマブキ」
「なあに?」
「萌葱色の剣士の事は好きかい?」
「うん! ヤマブキ、チカ姉ちゃんの事大好きだよ!」
「そうかい。なら約束してくれるかな?」
「約束?」
「これからも、萌葱色の剣士と共にいる事を」
「一緒って事?」
「そう。君はドリーマーの中で唯一、元の人物と遭遇、しかも一緒に生きている。本来ならあり得ない、けど…」
「?」
チェシャはにんまりと笑って言った。
「君には”ドリーマーのヤマブキ”としてではなく、”萌葱色の剣士の双子の妹”の方が相応しいからねえ。約束してくれるかい?」
「うん! 一緒にいればいいんだよね?
「ああ。それでいい」
「分かった! ずっとずーっとチカ姉ちゃんの傍にいて、チカ姉ちゃんを助けていく!」
山吹色の目を細めて、ヤマブキは明るく宣言した。
「じゃあそろそろお帰り。萌葱色の剣士も心配しているだろうから」
「うん! 今度会ったらお話してね!」
「いいよ。会ったらね」
「じゃあばいばい! 猫さん!」
手を振り、四つ葉のクローバーを大事に持って、ヤマブキは帰路を走っていった。
それを見送ったチェシャは、にんまりと笑ったまま呟く。
「もしかしたらドリーマーとして生まれたのも、萌葱色の剣士の傍にいてやる為かもね」
山吹色の夢人と猫
「そういえば、山吹には『待ちかねる』って花言葉があるんだよねえ…ニヒヒ」
最終更新:2011年08月26日 14:07