ある休日、やることもなかった佑はいつものように居間のソファに座り、テレビから流れるニュースをBGMに、新しく買った本を読んでいた。
ニュースの内容は、数日前まで世間を騒がせていた「いかせのごれ無差別連続殺人事件」に関するものがほとんど。
事件がぱったりと起きなくなってからは、犯人を捕まえられない警察に対する批判が多くなっている気がする。
そんな折、ふと聞こえてきた言葉に、佑は本に向けていた顔を上げてテレビを見た。
『被害者が15人…というのには何か意味があるのでしょうか?』
ニュース内でよく見る討論会。
その中で、犯人は15人目で己の要求が満たされたのだろうだとか、興味をなくしたのではないかとか、いろいろ言われていた。
「意味…か」
一言呟くと、手元の本に目を落とす。
先日古本屋で購入した「MESSAGE」という短編集。
題名の通り、「伝えたいこと」を題材にした短編ばかりが載っている。
その中に、こんな一文が書かれていた。
“一見無関係と思えることにこそ、本当に伝えたいことが隠れているものなんだ”
第3話「少女は二度死ぬ」での主人公の相棒の言葉だ。
その時は結局彼の推理は的外れになるのだが…丁度そのシーンを読んでいた佑はその言葉が妙に引っかかった。
(この連続殺人事件も、実は無差別なんかじゃなくて、ちゃんと意味があるんじゃないか?)
「……どうせやることもないしな。やってみようか」
今日は特に何もないし、暇つぶし程度にはなるだろう。
そう考えて本に栞を挟むと、準備を始めた。
3時間後。
「…ぬぅ………」
自室の机の前で、佑は頭を抱えて唸っていた。
今までの連続殺人事件が起きた場所。
その15ヶ所をB5サイズに縮小コピーした地図に、新聞の切り抜きを元に書き込んでいく。
が、それで終わった。
考えても考えても、意味なんて浮かんでこない。
切り抜き記事を何度見返してみても、被害者はもちろん、場所も殺される時間もバラバラで共通点は見当たらない。
腹立ち紛れにその15ヶ所を線で繋いでみたり、中心を割り出して円を書いてみたりもしたが、意味不明のぐちゃぐちゃな線が地図を埋め尽くしただけだった。
おまけに書いては消し書いては消しを繰り返したため、机には消しゴムのかすが散らばり、消しゴム自体も小さくなってしまっている。
「……っあーーー!!駄目駄目駄目!!無理!!」
鉛筆を放り投げると、ついに音を上げた。
「分かんない分かんない!全っ然意味なんか見えてこない!!これもう愉快犯でいいんじゃないか!?
……というか、私もともと暇つぶしのためにやってたんだよね。何もここまでのめりこまなくてもいいんだよね。駄目だね私!いつものめりこんじゃうからなー!」
もう終わり終わり!と大声で言い切ると、机に広げた切抜きを片付け、消しかすを集めて捨てる。
地図も一緒に捨てようとしたが、ふと思いとどまり手を止め、
「……誰も見てないし、いいよね」
地図のコピーを
紙飛行機にすると、部屋の窓を開けて勢いよく飛ばした。
風は強風、そして追い風。
紙飛行機はあっという間に見えなくなった。
届かなかったメッセージ
「あ、今度新しい消しゴム、買いに行かないとな…」
最終更新:2011年08月28日 21:08