深い藍色に染まった空は、月に照らされる薄い雲で白んでいる。
不思議な夜だ。もっとも、このいかせのごれにおいては不思議も不思議ではなくなる。
扨、そこにいる物好きよ。
こんな時間にここにいるお前だ。そんな物好きなら、少し年寄の独白に付きあってはくれないだろうか。
わしは、一つ罪を犯した。
殺人とか障害とか、そう言った罪ではない。
いや、寧ろその方が可愛い方なのかもしれない。
わしはこの寺の住職でありながら、今や珍しい「陰陽道」の師範だ。
昔は時代が時代なだけに栄え、分家もあったそうだが、今はこの小さな本堂一つきりである。
それでもわしは血を絶やすつもりはない。
これまで通り次の世代につなげることが、今のわしの仕事である。
息子の月光は寺を飛び出し(性でないのは分かっていたが)、娘も孫を一人出産して間もなく亡くなった。
血が途絶えることを危惧したわしは、跡取りをどうするか深く考えた。
しかし、娘の孫が話だした頃から、その悩みは払しょくされた。
言葉を理解するようになり、寺院に置いてあった本を読みだしてからだ。
今までに聞いたことがない怪奇現象や妖怪、幽霊が見られるようになったのだ。
専門職のわしらは大いに慌てた。
どうしてなのだろうと頭を抱えた。
ある時、孫の元を一人の妖怪が訪れた。
当人の話から浮かび上がった事に引っかかり、わしは書庫を漁った。
そして見つけたのだ、「彼」を。
わしは知った。孫は、陰陽師としてのとんでもない逸材なのだと改めて理解した。
秋山家の血をひく唯一の陰陽師である孫は、その前から寺から出ることを禁じられていた。
逸材だと確定し、その規律は厳しくなった。
アースセイバーと提携を組んだものの、彼女が外の人間と接することは殆どなかった。
そして気がついた。
彼女の周りには、人間が居なくなっていた。
彼女は知らない。人間の友達がいないことがいかに悲しいことか。
それどころか、彼女は笑顔で言う。
「妖怪と友達になることが、私の役割でしょ?」と。
わしは大いに後悔した。
しかし、取り戻せるはずもなかった。
どの道これ以上先はない。
わしは後悔したまま、静かに眠りに付くことになるだろう。
ああ、一番の愚か者。
気付いた時には時遅く。
師範・秋山 冬玄の独白
…今日はもう帰りなさい。夜も遅い。
最終更新:2011年09月07日 18:39