「弱いって素晴らしいね!」「だってみーんな弱かったら、差別も軽蔑も嫉妬も無いんだよ?」「強い人がこの世界から消えたら、ずっと平和でいられる!」「そう思わないかな?」
乱れた茶髪に金色の目を持つ少女―――最文 鈴子、通称『
モブ子』の言葉を無視するクロウ。
するとモブ子はおどけて言った。
「あれ?」「おかしいね?」「目の前のクロウ君の」「返事が聞こえないよ」「もう一度☆」「クロウく―――」
「聞こえている」
遮る様に返事をするクロウ。
モブ子は明るい口調で不満を言う。
「なーんだ」「聞こえてるなら」「返事してよ」
「お前の理想論は聞き飽きた」
「飽きた?」「こんなに素晴らしい」「論理なのに?」
まるで驚いたかの様な表情を浮かべるモブ子。
その表情さえも見飽きたと言わんばかりに、クロウは溜め息をついた。
「全ての人間が弱者になったからって、差別や軽蔑や嫉妬が完全に無くなる訳が無いだろ?」
「何で?」「どうして?」
「…確かにそうなれば強者による弱者への制圧などは無くなる。だがそれ以外でも差別はある」
「?」
「…弱者にも個性から成る『得意分野』というものがあるだろ」
「それに」、とクロウは続ける。
「純粋に弱者だけの世界なんて作れる訳が無い」
「………」
モブ子が押し黙った。
今の言葉がそんなにショックだったか?―――そう思ってクロウはモブ子を呼ぼうと同時に彼女の方へ振り向くする、が。
「………」
モブ子の表情が視界に入った瞬間、顔が強ばった。
モブ子の顔には、いつもの笑顔より気味が悪いぐらいにニコニコした笑顔が張り付いている。
そして。
「バカな戯れ言吐いてんじゃねーよ」「暇人ガラス☆」
口から笑顔とは全く裏腹な言葉が吐き出された。
「そりゃテメーが強者側だからだろーが」「弱者のモブ子ちゃんが」「やれば出来んだよ」「一回黙って跪いたまま」「死に果てろよ☆」
「………」
ただの暴言ならまだマシだ。
だがモブ子の威圧がかかった笑顔と、彼女の性質が合わさった暴言は半端ではない。
「オメーさ」「ボール投げんの」「下手だったよな?(笑)」「そんな事出来ないんならさ」「人間の真似事やめて」「カラスらしくゴミ漁りしろ☆」
「…それ関係ないだろ」
「あはっ☆」「強者だからって」「威張んなよ強がんなよ」「くーそガーラス(笑)☆」
「………」
駄目だ、暴走し出している(しかも若干ダメージ受けた気がする)。
このまま付き合っては体力が無駄になる。
そう判断したクロウはその場から去ることにした。
「あれ?」「逃げんの?」
突如、モブ子の表情がすました様な余裕の笑みに変わった。
「いーなー」「強者は逃げようと思えば」「いつでも逃げてもいいもんなー」
「…逆じゃ、無いのか?」
「だと思うでしょ?」
「…何故だ?」
「強者は強いから」「すぐ逃げれるし」「逃げ場もある」「では弱者は?」「答えは簡単」
「絶対逃げれないし」「逃げ場なんか無い」「でしょ?」「あははっ☆」
「…そうかもな」
どちらにせよ、彼女に『強者側』と見られてしまった以上、自分から反論しても曲げる気は無いだろう。
クロウはモブ子を一瞥し、その場から去った。
弱者の弱者による弱者の為の理想論
(何で)(強者とか弱者に)(そんなに拘るのかって?)
(それの答えも簡単)
(モブ子ちゃんが弱者だからだよ)
(あはっ☆)
最終更新:2011年09月07日 18:41