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喰われた欲望、暗躍する冷血

鬼英会ビル。
先日このビルで行われていた、出雲寺組と鬼英会の抗争。
鬼英会敗北の結果に終わったのち、突如謎のライダー集団が現れた。
これを期に周囲から人気は消え失せ、表では全て「大勢の人が死んだ」と言われているだけである。
しかしその凄まじい抗争の陰では、ある一人の人間が暗躍していた。

汰狩省吾らと出雲寺組が去ったエントランスでは、何着かの黒いライダースーツが脱ぎ捨てられており、黒い影の様な生き物が「ゴキッ…」「グシュッ…」と、不気味な音を立てて何かを食している。
そこへ一人の女性が入ってきた。
薄いピンクのワンレングス、セピア色の細く切れ長の目、そして―――「H」と「O」を合わせたエンブレムをあしらったバックル付きベルト。

「さて…貴方達、ちゃんと残さず食べた?」

女性の問いに、生き物は独特の鳴き声で返事する。
人間には理解できないであろうその答えを聞いて、女性はにっこりと、しかし僅かに歪ませて笑った。

「偉いわね。やっぱり貴方達は可愛くて賢いわ…BDは後で回収しておくから、私の”中”に戻りなさい」

すると生き物は女性の元へ向かったかと思うと、女性の皮膚に裂け口を作って内部に入っていく。
しかも裂け口は消え失せていき、女性の体に異常は見当たらず、普通の体格と外見を保っていた。
全ての生き物をその身の内に収容した女性は、ある部屋へと向かう。


「…あら、やっぱりここにいたのね」

向かった先は社長室。
中に入った女性は、机の下で気絶している鬼英会の最高顧問、九鬼兵二を見つける。

「………」

ガスッ

「ぐっ!?」
「何寝てるのかしら?」
「! お前は…ッ!」
「久しぶりね、最高顧問さん。ところでこの失態はどういう事?」
「失態?」
「あら知らないの? 鬼英会は敗北したのよ」
「な…んだ…と…」

目を見開き驚愕する兵二。
女性は彼を見下す様に溜め息をついた。

「言ったわよね? 必ず出雲寺組を潰せって」
「た、頼む! もう一度、もう一度チャンスをくれ!」
「黙れ、蛇風情が」

一喝する女性。

「今回の手段は一度で成功しないと意味がないのよ。負けたのなら、何度出雲寺組に牙を向けても無駄」
「だ、だが…」
「…そんなに私が欲しいのかしら?」
「い、言ったのはお前だろう!? 鬼英会の総長になれば愛人になってくれると!」
「愛人? 貴方みたいな醜悪なんて嫌に決まってるじゃない。あんなの口約束にしか過ぎないわ」
「何だと!?」
「これ以上、何を言い訳しても無駄よ。貴方はもう不要品なんだから」
「不要…品…」

口をぱくぱくさせる兵二。
それを見た女性は、含み笑いして言った。

「でももう一つだけ、そんな貴方でも役に立てれる事があるわ」
「ほ、本当か?」
「ええ」

思ってもみなかった女性の言葉に、兵二は喜びの表情を浮かばせる。
だがそれは一瞬にして凍りついた。


「この子の食事(エサ)になってちょうだい」


女性の背中から、先程の黒い影の様な生き物が姿を現した。
兵二を視界に留めた生き物の口から涎が滴り、汚れた水溜まりを作る。

「ひ…ひ…」
「良かったわね。こんな人間だけど、欲の塊だから魂のエネルギーも大きいわ」
「や…やめろぉおお!!」

逆上した兵二は懐から銃を取り出し、女性に向かって銃撃しようとした。
だが―――。

スパン…ゴトッ

「…!?」
「残念ね。私の体内には武器も収納されているのよ」

綺麗に分断された銃を見て驚愕する兵二。
その原因であるショートソードの刃が、女性の右手の平に裂け口を作って突き出していた。

「最期の足掻きはもういいのかしら?」
「れ、冷血メスブタめ…ッ!」
「冷血? ええそうよ。それ以外の感情は非合理的すぎて嫌いだわ」

兵二の元に歩み寄る女性。
彼はただ震えるしかなかった。

「私は『クルデーレ』…即ち『冷血』。不要品を憐れむ優しさなんて、これっぽっちもないわ。ではサヨウナラ」
「ぎゃあああぁぁあぁああぁぁああ!!!!」

辺りに悲鳴と肉が裂かれる音、血飛沫の音に骨を砕く音が響いた。
女性―――クルデーレはその様を見て、歪んだせせら笑いをする。

「跡形もなく飲み込むのよ? 貴方の強さになるから」

そう言うと、クルデーレは一つ溜め息をついた。

「でも失敗したとなると、裏世界から表世界を容易に支配できない…こうなっては、私の”計画”が実行段階に移せないわね」

背後で生き物が肉片や骨や血を全て飲み込んだ音を聞くと、クルデーレは振り返る。

「食べ終わったの? …そう、では戻りなさい」

生き物はクルデーレの指示に従って彼女の体内に戻った。

「まあいいわ、まだ時間はあるもの。次の手段を考えなくては」

己の計画を達成する為、『冷血』は今宵も影に蠢く―――。


喰われた欲望、暗躍する冷血


「…おわっ!」

ドンッ

「いたた…す、すまな―――」
「っ…!」
「あ、おい!?」
「どうしましたの? 姉様」
「いや、さっきぶつかった奴に謝ろうとしたら、急に走り出して…。でもあの顔…どっかで見たような気がするんだよな…」

「……僕の『闇』が…疼く…痛い…怖い…嫌だ…」





加筆修正有(11/09/07)

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最終更新:2011年09月07日 19:06