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『瞑想の桜姫』

本当に本当の話だよ
昔々、陰陽師として伝統を保ってきた秋山の家系がおりました
統領である桜姫様は、透き通るような白い肌に艶やかな黒髪でみんなに羨まれるほど

そんな桜姫様、幼い頃に大事な人を神様に取られちゃった
悲しみに暮れて、神様と神様にその人を差し出した人達を恨み呪ってしまうの

けれど大きくなってお婿さんを貰って子供も出来た
復讐だけ考えて生きて来たのに、統領にもなっちゃったものだから失うものが多すぎて
悩んで悩んで、とうとうお婿さんに打ち明けたの
そしたらお婿さん

「ああ桜姫、どうしてあなた独りでそんな重荷を抱えていたのだ。」

そういって抱き寄せて、ほろほろと涙を流してしまうから
その日以来桜姫様は復讐を捨て、抱えたものを無くさないと誓ったの

それから数年あとの事、とある夜長のボヤ騒ぎ
秋山のお寺はめらめら燃えて、みんな炎に囲まれた
桜姫様は、持てるすべての法力で瞑想をしてね
そうしたら、炎の中に一つの道ができて、みんな助かったの
瞑想を続ける、桜姫様だけを残して

あわれ桜姫様、幸せであり続ける事を恐れて、自分だけ犠牲にして大事なものを守ったの
だから、炎に巻かれて焼かれる中でも微笑んでいたんだよ




現代、秋山家本山の外れに立つ控え目な風貌の御堂
その中に、瞑想を続ける一人の女性がいる
時折のぞかせる白い肌は、酷く焼けただれた火傷痕に塗れ
人間味や生気といったものを感じさせない

「サクラさん」

女性を呼ぶ幼い声、春美のものだ
サクラと呼ばれたその人は、目を開くとゆったりとほほ笑んだ

「春美さま、どうなされました?」
「別に用事ってほどでもないんですけど…」
「なぁに?」

言いづらそうにする春美に変わらぬ調子で声をかける
それは、母の声によく似ていて、何故だか心が落ち着くのを感じた

「サクラさんの物語を読んだら、少し不安になっちゃって…」
「怖くなってしまわれたのです?」
「そう、みんながいなくなったらどうしようって」
「春美さまも、多くを抱えていらっしゃいますものね」

サクラは俯く春美の手をそっと握り、まっすぐに彼女の目を見据える

「春美さま」
「はい」
「どんな事があっても、大事なものは手を放さないようにしてくださいね」
「…はい」
「難しい事かもしれないけれど、失えば悲しみに囚われてしまうから」

2人は困ったように微笑む、各々とよく似た表情を見た
妖怪は祈るように、言霊に乗せた願いを少女に渡す

「わたくしのようには、なられないでくださいませ」

願わくば、かつての己とは違う道を歩めるように。と

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最終更新:2011年09月24日 13:50