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<瀧登紀一の発症>

瀧登紀一の発症>


父さんと母さんが帰って来た。
いつもの車の音が聞こえる。
玄関が開いて、小学校に入ったばかりの弟が出迎える声が聞こえる。
姉ちゃんは部屋でお勉強。いっぱい勉強して偉い人になるんだって。
で、僕は部屋のお掃除。

だって今日は僕の誕生日だもん。

もう10歳になったんだよ。小学5年生。算数も国語もテストの結果はいつだっていいんだ。
こんないい子にしてたんだもん、誕生日のおもちゃはお願いした野球セットにちがいないや。

母さんが料理を作って、背の低い父さんが僕を肩車しながら飾り付け。
重くなったなぁ、って父さんが言ったから、お姉ちゃんほどじゃないよ、って言ったら
お姉ちゃんにグーで殴られた。


お誕生日会の準備ができて、皆でいただきます、キイチ誕生日おめでとう、て言った。



けど、窓がいきなり割れたから、皆ご飯が食べれなかったんだ。



いきなり黒い服を着た男の人が入ってきて、父さんを刺しちゃった。
何かわけのわからない事をずーっと叫びながら。

何回も何回も何回も何回も。

僕はもう怖くて怖くて、大きな大きな机の下に縮こまって隠れてたんだ。
でも、母さんや姉さんたちは見つかっちゃった。
母さんはお皿を叩きつけられた後、何度も何度もガラスの戸棚にぶつけられちゃった。

何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も。

お姉ちゃんは台所に連れて行かれて、ガスコンロで顔や体を焼かれた後に、
隣の水道にあった水桶に顔を漬けられちゃった。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

僕はそれをただ見てるだけだったんだ。
何もできないで。

でも、男の人は僕が机の下に隠れているのを見つけると引きずり出してぶん殴られちゃった。

気が付いたら目隠しをされてて、手も足も縛られてたんだ。

真っ暗で、怖くて、閉じた瞼に映ってくるのは、さっきまで楽しくパーティーしてた皆の顔。
料理を取り分けて楽しそうにしていたお母さん。
僕の頭を撫でながら話してたお父さん。
僕のプレゼントを僕より先に開けようとしていたお姉ちゃん。

でも、その姿が一瞬で殺されてった時の姿に変わる。

刺されて刺されて刺されて刺されてお腹が無くなっちゃったお父さん。
ガラス戸に何度も突っ込まれていろんな所を切り裂かれちゃったお母さん。
顔の判別が出来なくなるまで焼かれて、黒ずんだ身体と濡れた髪を広げられたお姉ちゃん。

どんどん、息がしづらくなってきちゃった。

僕も、ああいうふうに殺されちゃうのかと思ったらとても怖くなった。


そして、心臓がバクバクバクバクドクンドクンドクッ・・・って言った所で
視界が本当の『闇』になったんだ。




そこからどうなったのか覚えてない。

でも、僕は多分隠れていたんだと思う。

いつの間にか男の人が死んでいて、警察の人が来て、僕は孤児院に預けられて、




「いつまで寝てんだコラ!」
教師にスッパーンと頭を叩かれた。
どうやら授業中に寝てしまっていたらしい。

あのころの夢を見るなんて…とは思ったが、特には気にしないことにした。
気にすれば、あの能力が発動してしまうかもしれない。
何が起こるか分からない以上、アレは発動するべきじゃない。

俺は、自分の存在を意図的に相手の死角へ移す事が出来る。
「石ころ帽子」のようなものだ。逆を言えば、
一生他人に認識されることも無く死んでしまうかもしれないのだ。

俺の能力、死角の悪夢。

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最終更新:2011年09月27日 10:40