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「欲望の巨木」

お答えください、神様。

僕は何をやったというのですか。

幸せを求める権利さえ

僕達には無いのですか。

僕は天国にいけるのかな。

大好きだったこの樹の下から

飛び立つことはできるのかな。

僕の街は、ここよりずっとずっと遠い所にあった。
僕は白い街中で働く、普通の男の子だった。
その時代、僕たちの生活は楽なんかじゃなかった。

ふと上を見上げても、そこに青い空なんてない。
白い綺麗なお城があって、僕たちの街を影で覆っていた。
僕たちは「平民」っていうんだって。
あのお城に住んでる人たちに毎日お金をあげる。
そのせいで折角頑張って稼いだお金も殆ど手元に残らない。

パン一つ買うのさえ苦しくなってきた。
お父さんもお母さんも兄弟達も、限界だった。
そんな時、一人の男性がここにきて、僕達に言ったんだ。

「革命を起こさないか?」

その日のお父さんは、なんだかいつもより怖かった。
お父さんは僕に、いつもの所で遊んでなさいと言った。
いつもは遊んでないで手伝いなさいっていうのにね。
だから僕はお父さんの言うとおりに、街から少し離れたところに向かった。

そこには小さな平原があって、真中に大きな樹があるんだ。
この位の季節になると、赤くて美味しい木の実をつけてくれる。
僕はいつもそこで遊んだから、今日もそこで遊んでいた。

街の様子がおかしいことに気がついたのは、暫く立ってからだった。
煙があがりだして、空が赤くなっていた。
なにがあったの。そう思って身を乗り出すと、小さい何かが飛び交ってるのが見えた。
それがこっちにも向かってくる。

僕は思わず飛び出していた。
こちらにこないで。大切な場所を傷つけないで。
その時、街でなにがあっているのかも知らないで。


本当に本当の話だよ。

あるところにある人気の少ない森。
時折ゾンビがでるって噂が立って、誰も近づかないんだって。
でも、本当に怖いのはゾンビじゃない。

その森を進むとね、広い平原にでるの。
その中央にある大きな樹。
その赤い木の実を取ろうとしてはいけないよ。

その木の実を取られると、大きな樹は怒りだす。
地面から根が飛び出して、木の実を取った人を捕まえてしまうの。
そして人の力を、エネルギーを、命を奪い去ってしまう。
森に出るゾンビは根から全てを奪われてしまった人間なんだって。

人から全てを奪った樹は、そのエネルギーでまた一つ赤い木の実をつける。
欲望のままに生きる人間の「欲」を欲して、手に入れる。
その樹は、人間の「欲」を食らってしまう、妖怪なんだって――。

どうして、こんなに人間は欲深いんだろう。
欲のままに生きていけるんだろう。
僕は、僕が「人間の時」は、そんなこと許されなかったのに。

苦しい。悔しい。
だから、僕は人間の「欲」を食らう。
知ってほしい。君たちの為に死んだ、数多の命を。

そうやって苦悩に何年沈んでいたんだろう。
開発されていく景色を眺めながら、僕はその日も人間を待っていた。
そうして、そこに一人やってきた。

僕が見た人間の中では一風変わった人だった。
緑色の髪、褐色の肌、眼は不思議な色味を帯びていた。
あの深い森を、とんでもない軽装で抜けてきたらしい。
それでも「欲」を持つ人間に変わりはないだろう。
さぁ、その欲望を、僕の前でさらけ出して…。

「そうはいかねぇよ。」

静かに、でもはっきりとその人は言った。
誰に向かって言ったのだろう。あたりを見回しても、彼以外に誰もいない。
彼はその金緑色の眼をこちらにしっかり向けて、「僕」に言ったんだ。

「お前なんだろ、最近巷で噂になってる「欲望の巨木」は…?」


「…うう、やっぱり読めないよ…。」
僕はそういいながら、『南』がかしてくれた絵本を返した。
「そうか、やっぱりツバメおばさんの絵本も読めないか。」
「でも、三鷹先生って、ちょっと難しい内容書く人じゃなかったっけ。」

そういうわけじゃないんだ、と僕は言った。
「僕、文字を一度も読んだことが無いんだ。だから最初から勉強しなきゃ。」
「そっか、だったら教えてあげないとね。」
『西』は僕に笑いかける。僕も笑い返した。

未だに信じられなかった。
僕がこうして、また人間と接することができるなんて。
神様は意地悪だけど、とっても優しいんだよね?
僕はもう一度、そう信じることができる。

だって、こんなに素敵な出会いをくれたのだから。


「欲望の巨木」


彼は静かに、赤い「木の実」を揺らした。

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最終更新:2011年09月27日 10:42