その日の朝、佑は朝の散歩に出ていた。
別に日課というわけでもそこまで健康志向というわけでもない。
ただ、いつもより早く目が覚めて、天気がいい日は、眠気覚ましに散歩をすることが時々あるというだけだった。
ルートも決まっていない。
30分ほどかけて、ふらふらと歩くだけ。
遠くまで足を伸ばすこともあれば、家の近くを回るだけで終わることもある。
要するに気まぐれだった。
その日は、近くの公園にまで足を運んだ。
朝早いためか、見回しても人っ子一人いない…
「…あれ?」
…はずだった。
ベンチの上に、スーツの男が寝そべっている。
不審に思って近づいてみると、うっすらと開いた濃茶の瞳と目が合った。
どうやら寝ているだけのようだ。ぱっと見怪我のようなものも見当たらない。
少し安堵していると、男は冷えたのか小さくくしゃみをして、体を起こした。
「……あの」
「っきし!…ん?」
「…寒く、ないんですか?」
「いやー…少し」
「ですよねー」
日中は暖かいとはいえ、明け方は少し肌寒い。
そんな時間に何もかけずにベンチで寝ていれば、そりゃ寒いだろう。
「えっと…何してるんです?」
「え、何って…野宿?」
「…そりゃ見れば分かるんですけど。家とか、雨風凌げる場所とか…」
「いやー、ないんだよね。困ったことに」
「………」
あんまり困ってなさそうな様子の男に、佑は小さく肩を竦める。
まったく面識のない相手のことだ。放っておいても構わないようなものだが、
雨が降ったらどうするんだ、風邪を引いたらどうするんだと考えてしまった佑の頭にそんな考えは及ばなかった。
そして、代わりにひとつの提案を思いつくのに、さほど時間はかからなかった。
「…でしたら、提案なんですけど」
「…私の家、来ませんか?」
ある朝の出来事
(「何か放っておけない」)
(それが、彼女の男への第一印象だった)
最終更新:2011年09月27日 10:52