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蒼崎兄妹の無意味な考察

「………」
「啓兄ちゃん? どうしたの?」

ウスワイヤの一室。訓練を終えて戻って来た真衣を迎えたのは、何やら考え込んでいる啓介だった。

「いや、な……俺達の行動は、本当に俺達の意志によって決定されているのか、と思ってな」
「え?」

意味が分からず問い返すと、啓介はこう言った。

「人は誰しも、最終的には自分で決断して自分の行動を決定する。そうだな?」
「う、うん」
「だが……」


「もし、その決断も、そこに至るまでの過程も、他の誰かによって定められている……とすれば?」


その言葉に、真衣は一瞬硬直した。どこかで聞いたことがある。「ガラス容器の中の脳のパラドックス」という論理問題だ。だが、啓介が言っているのはそれとは違うようだ。

「しかし……それが正しいとしても、俺達にはそれを認識出来ない。いや出来たとしても、その『他の誰か』がそのように俺達を動かしている。そうなのかも知れない」

本気で、背筋が冷たくなった。ならば、ならば。

「……啓兄ちゃんの力も、私が眠ったことも、今までの事件も……みんな、その人が定めたってこと?」
「……そうとばかりは言い切れない。ここが難しいところだ」

言うと、啓介は渋い顔になり。

「仮に俺達が、この世界が一人の意志によって動かされているとするならば、行動や言動に矛盾が発生する。解決のための仮定としては、それが何人もの『他の誰か』によるものだ、とすれば辻褄があう」
「…………」
「ここで起きる事件も、それに関わる者も、その生死や結末さえも、下手をすると生い立ちや境遇、その言動や思考、感情ですら、その者達によって定められているとすれば……? ……だが、俺達には何も出来ん。ただ、その筋書きに沿うだけだ」

ややもするとネガティブに取れる発言だが、啓介の声音には悲壮感や焦燥感はない。むしろ、自明の理を述べるかのようなてきぱきとした調子があった。

「仮にここが物語の世界だとしても、現実だとしても、この先何が起こるかわからんのは同じだ。それに、『その者達』は、一人一人が手を伸ばせる範囲は限られているはずだ。在る程度のルールに沿って筋書きを造り、その上で俺達という役者を動かす。出会わせ、あるいは別れさせ。それに、筋書きがあるということは、始まりがあれば終わりもある。ということは、『終わり』から次の『始まり』までに俺達が何を思い、どう動くか……結果がどうなるにしろ、『その者達』にはそこまでの干渉は出来ん」

つまり、

「……結局、今まで通りってこと?」
「そうなるな。それに、上手くすれば俺達の方から『その者達』を操れるかも知れんぞ」
「どうして?」
「時々言うだろう?」


「キャラクターが一人歩きする、ってな」


蒼崎兄妹の無意味な考察

(なぜ無意味なのかって?)
(そりゃ、当然だ)
(本筋に関わって来るわけでもねぇ、メタな話だからな)

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最終更新:2011年09月27日 10:57