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火種は餌となり

細い煙は風になびいて拡散した。
時刻は深夜を回り、街は静まり返る。
佑から貸してもらった服(父のものらしい)に袖を通している彼は、夜中そっとベランダに出、街を見回しながらヤニ接種をしていた。
意味はないと言えば嘘になる。
「ターゲット」は夜中動く可能性が高いと推測し、ストラウルを中心に怪しい人影を探していたのだ。

「…はぁ、今日もまたハズレかねぇ…。」
職場には一応毎日顔は出している。しかし、それ以外理由が無ければ殆ど外に出ない。
佑は学生だから昼間は家にいない。
そこで午前中は掃除洗濯を中心に家事をすることにしているのだ。
最初は慣れないことだらけだったが、今では大分慣れてきた。

午後は職場に一度赴き、その後は様々だ。
あちこち歩いてみたり、家に直接戻ってニュースを見たりとしている。
そして夕方、佑が戻って来てから夕食。
片づけを手伝って風呂など一通りやったあと、一度布団に入る。
そして3時間後、布団を抜けだし「本業」に入る。
それが彼の生活スタイルと化していた。

「本拠地もまだきまらねぇし、佑には迷惑かけてばっかりだよな…;」
面目ねぇなぁ、と呟きながら彼は煙を吐き出した。
仕事は一向に進みそうにない。いつまで続くか分からない仕事に、彼は果てしなさを覚えた。

「いっそ向こうから来てくれりゃいいんだけど、そうもいかないからな…あ。」
ふと、何かを思いついたらしい。
彼は上を見上げると、人間とは思えない脚力で屋根に飛び乗った。
そのままぐるりとあたりを見回す。

「一人ならうまいこと行けば引っかかるかもしれねぇなぁ…。」
にやりと彼は笑いながら、遠くを見た。
光の無いはずのストラウルに、ぼんやりと灯りがともっていた。
その灯りは何なのか、彼には予想がついた。

「久しぶりに会いに行ってやるかね、近いうちに。」
吐き出された煙は無色となり、空へと消えた。


火種は餌となり


「…そういえば、あれから何やってるんでしょうね、『イノセント・プリンス』は。」
「…さぁ?僕には興味無いね。」

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最終更新:2011年09月27日 10:58